北海道中央バス「スターライト釧路号」これまでのあゆみといまの姿

夜行バス,昼行高速バス,高速バス乗車記

1987(昭和62)年8月6日に運行を開始し、長らくの間札幌と釧路の間を結んでいる都市間バス「スターライト釧路号」
今年2024年8月6日に、運行開始から満37年を迎えます。

北海道中央バス「スターライト釧路号」 4922
北海道中央バス「スターライト釧路号」

くしろバス「スターライト釧路号」 4000
くしろバス「スターライト釧路号」

阿寒バス「スターライト釧路号」 ・529
阿寒バス「スターライト釧路号」

北海道内の都市間バス、いや、日本全国を走る高速バスの中でも老舗の部類に入る「スターライト釧路号」ですが、仕事の際の移動やプライベートで幾度となく利用はしているものの、実はこのブログで取り上げた回数はさほど多くありません。

実は先日、久しぶりに「スターライト釧路号」に乗車する機会があり、「それならば乗車記の掲載を兼ねて、いま一度これまでの歴史を簡単に振り返ってみようかぁ・・・」ということになり、今回の記事で改めてご紹介することにしました。

北海道内都市間バスの中でも長距離であり老舗でもある「スターライト釧路号」。
いったいどんな路線なのでしょうか。

道内初の3列シート夜行車 全国でも珍しかった「スターライト釧路号」初代専用車

「スターライト釧路号」が運行を開始したのは、今から37年前の1987年8月6日のことでした。
それまでの道内最長距離都市間バスは、北都交通が運行していた「オーロラ号」札幌~函館線(約300km)でしたが、「スターライト釧路号」は「オーロラ号」札幌~函館線を抜き、道内最長都市間バス(運行距離約380km)としてマスコミで報道されるなど注目を集めました。

運行は、道内最大手のバス会社であり、全国的にも大手バス事業者として知られている北海道中央バス(本社:小樽市)が単独で行っていました。
運行本数は夜行の1往復のみ。
今でこそ複数本数を運行しているこの路線でしたが、当時は完全なる夜行バスとして運行されていたのです。

当初の予定では、運行開始当日から後述の3列シート夜行用車両で運行される筈でしたが、専用車両の発注が運行開始に間に合わず、運行開始から2か月弱の間は「高速あさひかわ号」で活躍していた4列シート車を投入。
遅れること2か月弱の1987年10月上旬と同年11月末頃の2回に分けて、計6台の「スターライト釧路号」専用車(3列シート夜行用車両)が投入されます。
道内初の3列シート夜行車ということもあってか、マスコミにも取り上げられるなど注目を集めました。

その車両がこちら。
日野グランジェット(P-RU638BB)と三菱エアロクイーンK(P-MS725S改)です。

北海道中央バス「スターライト釧路号」 4924 日野グランジェット(P-RU638BB)
1987年10月に投入された日野グランジェット(P-RU638BB)

北海道中央バス「スターライト釧路号」 5036 三菱エアロクイーンK(P-MS725S改)
1987年11月末頃に投入された三菱エアロクイーンK(P-MS725S改)

当時、同社が積極的に導入し、全国的に珍しかった前面2分割窓のスーパーハイデッカー車をベースに、担当者が青森県と首都圏を結ぶ「ノクターン号」(※)に乗車して得たノウハウが詰め込まれた車両仕様になっていました。

また、冬の北海道での夜行バス運行に即した独自の施策、例えば、
  • 保温効果と静粛性を考慮し、カーテンとカーペットは特注の厚手のものを採用
  • 窓側の中央列座席の毛布の厚さを変える
  • 厳冬期は、外気温と車内温度の差を縮めるため、到着前に暖房をカットする
といったことも行われていました。

最初の冬に事故・運休などがなかっただけでなく、大きな到着遅れが生じる事態にもならなかったことから、運行開始後10ヶ月間の利用実績が約43000人、1日の平均利用者数が144人(片道あたり72人、バス約3台分)と、好調なスタートを切ります。

また、利用者の60%が女性であるという状況であったことから、1988(昭和63)年11月より女性専用車を設定。
女性専用車の設定は、当時の「オーロラ号」札幌~函館線に続いて道内2例目となりました。

一方で、「スターライト釧路号」の成功は、当時夜行急行列車「まりも」を運行していたJR北海道にも影響を与えることとなり、急行「まりも」は指定席車両を「ドリームカー」としてグレードアップを図った上、割引乗車券「まりもドリームきっぷ」(夜行列車往復割引きっぷ)などの設定を行うなど、徐々に「スターライト釧路号」を意識した施策を打ち出す様になります。

※:京浜急行電鉄(→京浜急行バス)と弘南バスがかつて運行していた東京~弘前間の夜行高速バス。現在は弘南バスが「ニューノクターン号」として運行している。

昼行便の運行開始と運行経路変更 ライバルJRとの競争激化

その後、国道274号のむかわ町穂別~日高町日高間(石勝樹海ロード)が開通したことで、1992(平成4)年7月11日より昼行便が新設されます。
同時に、釧路側2社(くしろバス・阿寒バス)が運行に参入し、3社共同運行路線となりました。

くしろバス「スターライト釧路号」・661(新塗装)
くしろバス「スターライト釧路号」

阿寒バス「スターライト釧路号」 ・700(阿寒湖カラー)
阿寒バス「スターライト釧路号」

暫くの間、都市間バスとJRのライバル同士は共存共栄の関係が続きますが、力関係が変わったのは1997(平成9)年3月22日のJR北海道「スーパーおおぞら」の運行開始でした。
新型車両であるキハ283系気動車を投入し、一部区間の線形改良などを実施した結果、大幅な所要時間短縮を実現させたことから、都市間バス「スターライト釧路号」は徐々に劣勢に立たされることになります。

この結果、最盛期には夜行便を含めて4往復体制で運行ししていた「スターライト釧路号」も、1999(平成11)年には昼行便・夜行便各1往復にまで減便されることになります。

JR北海道 283系気動車「スーパーおおぞら」
大幅な所要時間短縮を実現させたJR北海道「スーパーおおぞら」

高速道路延伸と再増便 ライバル路線の登場 そしてコロナ禍・・・

JR北海道「スーパーおおぞら」という強力なライバルの登場で劣勢に立たされる「スターライト釧路号」ですが、やがて復活の兆しが見え始める様になります。

その要因は、いうまでもなく“道東自動車道の延伸"です。

1995(平成7)年10月30日に十勝清水インター~池田インター間が先行開通した道東自動車道は、年を追うごとに延伸区間を拡大させ、2016(平成28)年3月12日の白糠インター~阿寒インター間開通で、札幌と道東釧路の間が高速道路1本で結ばれるようになりました。

これに合わせるかたちで、「スターライト釧路号」も高速道路走行区間を拡大させ、徐々に所要時間も短縮。
現在は札幌~釧路間を最速5時間30分で結んでいます。
その効果もあってか、利用客数も復調の兆しが見えたことから、2005(平成17)年頃から徐々に増便を重ね、2015(平成27)年3月30日のダイヤ改正では運行本数が5往復(昼行4往復・夜行1往復)にまで増えました。

一方で、ライバル路線の登場も。
東京大阪バスグループの北海道バス(本社:札幌市)が、2013(平成25)年4月24日「釧路特急ニュースター号」を開設したことで、札幌~釧路間は2路線の都市間バスが運行されることになったのです。
「釧路特急ニュースター号」も、若い方を中心に利用客を増やしており、最盛期には運行本数が5往復(昼行4往復・夜行1往復)にまで増えました。

北海道バス「釧路特急ニュースター号」 ・966
北海道バス「釧路特急ニュースター号」

ところが、2020年の新型コロナ大流行に端を発した一連のコロナ騒動で、札幌~釧路間の都市間バスは長期間の運休・減便へ。
のちに多くの便が運行を再開しますが、その影響は2024年になった現在でも続いており、「スターライト釧路号」が夜行便の運休を続けている他、ライバルの「釧路特急ニュースター号」も一部昼行便の減便が続いています。
一刻も早く通常運行に戻ることを期待したいところです。

(次ページに続きます。)