南海バスの高速バス「サザンクロス」の歴史と 現有車両一覧 <2022年冬版>

夜行バス,昼行高速バス

目次


バブル崩壊・・・大幅に路線を整理

この様に、路線を急拡大した南海高速バス「サザンクロス」ですが、先述の通り、全路線が好調ということは決してなく、実際には不採算などの理由で運行から撤退もしくは運行を終了する路線が相次ぎます。

1992年には、松山線「どっきん松山号」と「サザンクロス博多号」の運行を終了した他、1993年には福井線の運行を終了。
その後、岡山線、鹿児島線からの運行撤退、2000年に入ってからの長野線の運行終了(後に復活)、千葉線からの運行撤退、東京方面路線の統合、佐世保線の運行終了など、路線の統廃合を進めていきます。

結果、バブル期に開設した路線で現存している路線は、統合した東京方面「サザンクロス和歌山号」と、2004年に復活した長野線、そして徳島線の3路線のみとなっています。

ところが、2000年代に入ってから、再び路線拡充の動きを見せます。
が、2000年代に入ってからの路線拡充は、「これまでとは違った考え方」で路線を拡充していくのです。

「痒いところに手が届く」がキーワード!? 首都圏近郊及び第2・第3都市への路線拡充

その「これまでとは違った考え方」とは、次の二つが挙げられます。

ひとつは、「立川」や「藤沢」「鎌倉」「銚子」といった、首都圏近郊の都市と関西圏を乗り換えなしで結ぶ路線を新設するという考えた方です。

そして、もうひとつは、「柏崎」「長岡」「鶴岡」「酒田」などといった、県庁所在地ではない第2・第3の都市と関西圏を結ぶ路線を整備するといった考え方です。

つまり、他の交通機関では必ず乗り換えが必要な区間にあえて路線を新設することで、利便性の向上図ると同時に、多少運賃を高く設定することで、他社よりもハイグレードなサービスを提供するというもので、2000年以降、この方針に基づいて路線を新設していきます。

そして、路線拡充に併せる形で、南海バスはなんば地区以外の発着拠点を開拓していきます。

具体的には、京都駅八条口(ホテル京阪前)や高速京田辺、神戸三ノ宮といった、南海沿線でない都市への乗り入れ路線を増やした他、大阪市内にも大阪駅前(桜橋口アルビ前→桜橋口JR線高架下)という、集客が見込めそうな停留所の新設を行っていきました。

特に、京都駅八条口(ホテル京阪前)に至っては、同所を高速路線のメイン発着所としている京阪バスとの連携を強化。
同社の公式サイトに南海バスの運行路線を掲載したり、京阪高速バス予約センターで南海高速バスの予約を受け付けるといった取組を行っています。

四国方面3路線目 「たかなんフットバス」(大阪~高松線)

15路線目は、四国方面3路線目となる「たかなんフットバス」(大阪~高松線)です。
2002(平成14)年8月5日に、かつて関西汽船と加藤汽船が運航していた高松港~神戸港・大阪港航路の廃止及び縮小に伴い高速バス事業に参入した高松エクスプレスと共同で運行を開始しました。

本路線のみ、原則として「サザンクロス」の名称及び車両は用いられておらず、関西空港リムジンバス「Sorae」カラーの限定運用でしたが、2010(平成22)年9月2日より一部便が「サザンクロス」カラーの車両に置き換えられます。

車両は、原則として4列シートトイレ付き車両を充当。
ただし、「サザンクロス」カラーの車両については、かつて長野線で活躍していた4列シートトイレ付き車両が充てられていた他、晩年は3列独立シート29人乗り夜行高速仕様車も充てられていました。

運行開始後、停留所の新設や区間延伸を行いますが、採算が合わなかったからなのか、2017年3月31日の運行をもって共同運行から撤退。
現在は、高松エクスプレスが単独で運行しています。(南海バスは引き続き大阪側の運行支援を担当。)


南海バス「たかなんフットバス」 ・156
南海バス「たかなんフットバス」

東京西部に進出 「神戸・大阪・京都~立川線」

16路線目は、南海バス初の東京西部方面路線となる「神戸・大阪・京都~立川線」です。
運行開始当初は南海バスが単独で「堺・なんば・京都~立川線」として運行していましたが、2010(平成22)年5月に山陽バスとシティバス立川との共同運行路線であった「神戸~立川線」と統合し、山陽バスとの共同運行路線「神戸・大阪・京都~立川線」として運行を開始します。

路線統合に伴って撤退したシティバス立川に代わる形で運行に参入したという経緯もあり、路線愛称については、山陽バスが現在も「レッツ号」としているのに対し、南海バスはこの路線に限っては愛称を用いていません。

現在は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で長期間運休していますが、早期の運行再開を望みたいところです。


1路線二役? 「大阪・京都~秋葉原・成田空港・銚子線」

17路線目は、関西と東京都心・千葉県東部の間を結ぶ「大阪・京都~秋葉原・成田空港・銚子線」です。
2005(平成17)年3月18日に千葉交通と共同で運行を開始しました。

この路線の特徴(役割)は、ズバリ2つ。
ひとつは、関西~東京都心直行便という役割です。
早朝5時前に東京都心に到着出来、逆に夜遅くまで東京都心に滞在できるという運行ダイヤも、コロナ禍前までは一定の支持を受けていました。
そして、もうひとつは、関西~成田空港間リムジンバスという役割です。
成田空港第1ターミナル、同第2ターミナルにも発着することから、コロナ禍前までは、関西から成田空港を経由して海外へ飛び立つ乗客や、逆に成田空港到着後に関西へ戻る乗客に重宝されていました。

運行開始当初、東京都内の発着場所は浜松町バスターミナルでしたが、現在は秋葉原駅に変更されています。

こちらの路線も、新型コロナウイルス感染拡大の影響で長期間運休しています。
早期の運行再開を望みたいところですが、コロナ騒動が落ち着き、成田空港にかつての賑わいが戻るまでは、運行再開が難しいのかもしれません。


南海バス「サザンクロス」銚子線 ・244
運行開始当初の南海バス「サザンクロス」銚子線(三菱エアロクイーンⅠ)

湘南へ直行 「大阪・京都~鎌倉線」

18路線目は、関西と神奈川県湘南地区を結ぶ「大阪・京都~鎌倉線」です。
2006(平成18)年3月12に江ノ電バス藤沢(→江ノ電バス)と共同で運行を開始しましたが、2020年3月末日をもって同社が撤退したことに伴い、翌4月1日からは同じ南海グループの和歌山バスと共同で運行しています。

関西と神奈川県湘南地区を乗り換えなしで結ぶ路線として重宝されており、関西から湘南観光へ行くのに便利な路線です。

運行開始当初は京都~藤沢間を直行していましたが、2009(平成21)年12月1日のダイヤ改正で小田原駅東口停留所を新設。
これにより、「金太郎号」(近鉄バス・富士急湘南バス)と競合状態になりましたが、小田原地区の利便性が向上し、より利用しやすくなりました。

現在は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で運休・運行再開を繰り返している状況です。
今後の運行予定については、南海バス公式サイト(高速バスのページ)などでご確認をお願いいたします。


南海バス「サザンクロス」湘南線 ・112
運行開始当初の南海バス「サザンクロス」湘南線(日野セレガHD)

新潟県第2の都市へ直行 「堺・大阪・京都~柏崎・長岡・三条線」

19路線目は、関西と新潟県第2の都市「長岡」を結ぶ「堺・大阪・京都~柏崎・長岡・三条線」です。
2008(平成20)年4月24日に越後交通と共同で「堺・大阪・京都~柏崎・長岡線」として運行を開始しました。

関西と新潟県第2の都市「長岡」を乗り換えなしで移動出来るということもあって、週末・繁忙期は混み合う路線にまで成長しています。
また、途中の上越市や柏崎市などにも停車することから、これらの地域から関西方面への足としても親しまれています。

運行開始当初は長岡止まりでしたが、2009(平成21年3月26日のダイヤ改正で三条市へ延伸。
三条市のみならず、新潟市内(秋葉区)からの利用もしやすくなりました。

現在は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で運休・運行再開を繰り返している状況です。
今後の運行予定については、南海バス公式サイト(高速バスのページ)などでご確認をお願いいたします。


南海バス「サザンクロス」湘南線 ・110
運行開始当初の南海バス「サザンクロス」長岡線(日野セレガHD)

初の東北方面路線 「大阪・京都~鶴岡・酒田線」

20路線目は、関西と山形県第2・第3の都市「鶴岡」「酒田」を結ぶ「大阪・京都~鶴岡・酒田線」です。
2017(平成29)年4月28日に庄内交通(「夕陽号」大阪線)と共同で運行を開始しました。

関西と山形県第2・第3の都市「鶴岡」「酒田」を乗り換えなしで移動出来る利便性の良さが特徴で、南海バスとしては初の東北方面路線、庄内交通としては初の関西方面路線となります。

また、この路線の開設は、JR寝台特急「日本海」が廃止されて以来の「関西直通交通機関の復活」であったことから、特に山形県側では大きく報じられました。

実はこの路線、2007年~2008年頃に一度南海バスから庄内交通へ路線開設の打診があったものの、諸事情により実現せず、当時の経緯を知っていた庄内交通側から南海バスへ路線開設を打診し、めでたく運行が実現したという経緯があります。

この路線ですが、大阪発と酒田発で起終点が異なり、大阪発は湊町バスターミナル(なんばOCAT)発さかた海鮮市場行きとして、酒田発は酒田庄交バスターミナル発ユニバーサルスタジオジャパン行きとして運行されます。

現在は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で長期間運休していますが、早期の運行再開を望みたいところです。


南海バス「サザンクロス」酒田線 ・477
運行開始当初の南海バス「サザンクロス」酒田線(日野セレガHD)

(次ページに続きます。)