高速道路や有料道路などを走行して、寝ている間に目的地へ連れて行ってくれる便利な乗りもの「夜行高速バス」。
現在運行している路線を見ると、東京〜大阪間の様な”大都市と大都市を結ぶ路線”や、東京〜秋田間の様な”大都市と地方を結ぶ路線”が多くを占めますが、今回ご紹介する路線は”地方と地方を結ぶ路線”になります。
”地方と地方を結ぶ路線”は、このブログでも何回か紹介しておりまして、直近では関西圏を通り越して広島と北陸を結ぶ「百万石ドリーム広島号」(西日本JRバス・中国JRバス)をご紹介しましたが、
今回は、この「百万石ドリーム広島号」の元になったといえる路線をご紹介します。
こちらの路線です。
西日本JRバス(本社:大阪市)とJRバス東北(本社:仙台市)が運行する金沢・富山〜仙台間夜行高速バス「百万石ドリーム政宗号」です。
何だか強そうな(?)愛称の夜行高速バスですが、いったいどんな路線なのでしょうか。
既存事業者が運行する区間に新規参入したJRバス
夜行高速バス「百万石ドリーム政宗号」が運行を開始したのは、2017(平成29)年7月28日。
西日本JRバスとJRバス東北の共同運行路線がこれまでなかっただけに、関係者やバスファンに注目された路線でもありました。
とはいえ、金沢・富山〜仙台間においては、既に北陸鉄道(本社:金沢市)と富山地方鉄道(本社:富山市)が夜行高速バス「金沢・富山〜山形・仙台線」を運行しており、運行事業者変更などの変遷があったとはいえ、約30年を誇る老舗路線でもあります。(現在は運休中。)
それだけに、JRバスが金沢〜仙台間の夜行高速バスを開設すると発表した際、「地方対地方の路線に後発参入して、果たして採算が取れるのか?」と不安視されたのも、これまた事実であります。
しかし、そこは「広域ネットワークの強み」が活かせられるJRバス。
中間地点で交代する乗り継ぎワンマン運行よってコストを出来るだけ抑え、さらにハイグレードの「グランドリーム」仕様車を投入することで、既存路線との差別化を図ったのです。
その結果、利用客は徐々に付くようになり、開業当初は「木金土日・祝日・祝前日・繁忙日運行」であったのが「毎日運行」に変更されるまでに成長します。
そして、この路線のノウハウは、後に運行を開始した「北陸ドリーム四国号」(西日本JRバス・JR四国バス)や「百万石ドリーム広島号」に引き継がれることになるのです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020(令和2)年4月下旬から約2ヶ月間は運休しましたが、それ以外の期間は運休することもなく、現在に至ります。
運行再開→再運休を繰り返す路線も少なくない中、移動の利便性を維持し続ける姿勢は、いち利用者として感謝するしかありません。
独自仕様のJRバス東北「グランドリーム」車
やって来たのは、JR金沢駅東口(兼六園口)のバスターミナル。
北陸鉄道やJRバスが利用するバスターミナルとしても有名ですが、JRバス系の高速バスは4番のりばから発車します。
西日本JRバス公式キャラクター「にしばくん。」の貼り紙も。
「コロナに負けないぞ!」
今回私が乗車したのは、金沢駅東口22時40分発の仙台行き「百万石ドリーム政宗2号」。
発車の10分前にはバスが入線し、乗車改札が始まります。
乗車した車両はこちら。
JRバス東北仙台支店所属H677-18408号車(日野セレガHD 2TG-RU1ASDA)です。
運行開始当初は、西日本JRバスから「グランドリーム」用車両をレンタルして運用に充てていましたが、2018年に「百万石ドリーム政宗号」の専用車としてこの車両が導入されました。
外観自体は、JRバス関東が導入している「グランドリーム」仕様車とほぼ同じですが、前面のJRロゴが小さいのと、車体後部に社名ロゴ「JR BUS TOHOKU」が入っているという違いがあります。
乗務員の改札を受け、車内に入ります。
気になる車内の様子は・・・
車内は、「グランドリーム」専用のクレイドルシートが配置された、3列独立シート28人のり夜行高速仕様となっています。
車内の造りは、既存の「グランドリーム」仕様車と同じですが、大きな違いはシートモケット。
既存のクレイドルシートとは異なり、この車両では茶系のシートモケットを採用しています。
座席と通路を仕切るカーテンは、全席に設置されています。
シートはこの様になっています。
形状は既存の「グランドリーム」仕様車と同じですが、シートモケットが変わるだけで、印象がかなり変わりますね。
シートをフルリクライニングした状態がこちら。
リクライニングすると、連動して座面とレッグレストが持ち上がり、ゆりかご状態になります。
これがまた心地良いのです。
フットレストとレッグレストです。
足が前方に放り出せる構造になっています。
携帯電話・スマートフォンの充電に便利なコンセントは、各座席の肘掛け下に設置されています。
車内では、Wi-fiサービスも実施。
備え付けのリーフレットを見ながら設定することで、インターネットが使用出来ます。
トイレは、車内中央部の階段を降りたところに設置されています。
サービスエリアの開放休憩があるとはいえ、いざという時にありがたい設備です。(写真はイメージです。)
以上、車内の様子をご紹介しましたが、「グランドリーム」仕様車ならではのハイグレードな車内設備が印象に残りました。
尚、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、毛布(ブランケット)の貸出は停止していました。
1枚羽織るようなものを持参するか、必要な方は事前に携帯ブランケットを用意、持参することをお勧めします。
また、使いスリッパは車両前方(1B席)に置かれており、必要な方が取るという方式を採っていました。
新型コロナ対策について
今回乗車した便の新型コロナウイルス対策は、以下の様になっておりました。
【主な新型コロナ感染症対策】(乗車当時のものです)
・座席使用制限:なし
※全席通路カーテン付き。
・車内消毒液設置:あり
・運転席回りのビニール製カーテン設置:なし
※消灯時に前方遮蔽カーテンをセット。
・運行終了時の車内消毒:実施
・エアコンの外気導入:実施
<動画追加>【お知らせ】バス事業者様へ 大型観光バス「日野セレガ」の室内空調について
・休憩時の車内換気:実施
・その他:
車内抗菌処理実施済み
プラズマクラスターイオン発生装置を設置
乗務員のマスク着用 など
途中休憩は2回 寝ている間に「杜の都」仙台へ・・・
22時45分 金沢駅東口(兼六園口)発車 (5分遅れ)
22時45分、乗車改札に時間を要したのか、バスは定刻5分遅れで金沢駅東口(兼六園口)を後にします。
発車後、乗務員からマイクを通じて自己紹介と各種案内が行われ、続いて自動放送による案内が行われます。
先述の通り、この路線は中間地点で交代する乗り継ぎワンマン運行。
途中の黒埼パーキングエリア(新潟市)までは西日本JRバスの乗務員が、黒埼パーキングエリア先はJRバス東北の乗務員がハンドルを握ります。
(新潟県内にJRバスの拠点は無かったと記憶しているのですが、どこかに乗務員宿泊用でもあるのでしょうか・・・。気になるところですね。)
金沢東インターより北陸自動車道に入ったバスは、富山西インターでいったん流出し、富山市内へ。
23時40分過ぎに富山駅前1番のりばに到着し、最後の乗車扱いを行います。
金沢駅東口から乗車した私を含む6名と、富山駅前から乗車した4名の予約済み乗客が揃い、バスは23時53分に富山駅前を発車。
再度、乗務員からマイクを通じて自己紹介と各種案内が行われ、続いて自動放送による案内が行われます。
00時03分、車内は消灯。
まもなくして、バスは富山インターから北陸自動車道に入り、深夜の高速道路をひた走ります。
00時28分〜00時45分 有磯海サービスエリアにて開放休憩
途中の開放休憩は2回設定されています。
1回目の休憩場所は、富山県滑川市にある北陸自動車道有磯海(ありそうみ)サービスエリア。
こちらでは、00時45分までの17分間停車しました。
有磯海サービスエリアは、北陸自動車道の中では比較的中規模のサービスエリアですが、トイレや自販機はもちろんのこと、売店、軽食コーナーも完備しており、休憩時間中に買い物やちょっとした軽食を楽しむことも出来ます。
バスも、しばしのひと休み。
深夜運行に備えます。
有磯海サービスエリアを発車したバスは、北陸自動車道を北上。
新潟市の黒埼パーキングエリアにて、西日本JRバスの乗務員からJRバス東北の乗務員に交代した後、数回の停車を挟みながら、磐越自動車道、東北自動車道を「杜の都」仙台へ向けて走行します。
有磯海サービスエリアを発車後、就寝の準備を済ませ、シートを倒して就寝へ。
翌朝、バスが福島西インターを通過する頃まで、目を覚ますことはありませんでした。
06時55分〜07時15分 菅生パーキングエリア
2回目の休憩場所は、宮城県柴田郡村田町にある菅生(すごう)パーキングエリア。
少し走れば仙台南インターという、仙台市内に比較的近いパーキングエリアとしても知られています。
てっきり、もう少し南側の国見サービスエリアにて休憩すると思っていただけに、菅生パーキングエリアでの開放休憩は意外に感じました。
こちらでは、07時15分までの20分間停車。
半数の乗客がバスを降りて、トイレや洗顔、買い物などを済ませていました。
出入口付近には、発車時刻が掲示されています。
外へ出る前に、必ず確認しておきたいですね。
バスも、ラストスパートに向けてひと休みです。
07時40分 仙台駅東口到着
菅生パーキングエリアを発車したバスは、10分程で仙台宮城インターを流出。
市街地に繋がる仙台西道路を走行し、定刻よりも15分早い07時40分に、バスは終点の仙台駅東口に到着しました。
乗客を降ろし、忘れ物点検を済ませたバスは、降車場を発車。
回送されていくバスを見届けながら、私は帰路へ向かうのでありました。
頼もしく映った「百万石ドリーム政宗号」の姿 事業者にとってうまみのある路線?
以上、JRバス東北「百万石ドリーム政宗号」の乗車の模様をお届けしました。
この路線の利用は今回が初めてでしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で既存の並行路線が運休している中、乗客が少ないとはいえ、北陸と東北を直接結ぶ直行交通機関としてほぼ休み無く活躍している姿は、とても頼もしく映りました。
少なくとも、所用などで北陸と東北を行き来している方にとって、この路線の存在はありがたいと思うのではないでしょうか。
そして、もうひとつ感じたのは、所要時間といい運賃といい、事業者にとってうまみのある路線ではないかということです。
時刻表を見てみると、22時台〜23時台に出発して6時台〜7時台に到着するという、短過ぎず長過ぎない、夜行バスにとって最適な運行時間帯であることが分かります。
運賃も、夜行バスにしてはさほど安くありませんが(とはいっても最高で片道約1万円)、それでも新幹線乗り継ぎ(片道2万円以上)と比較すると半額以下で済みますので、他交通機関と比較すると競争力は十分にあるといえましょう。
加えて、JRバスの広域ネットワークを活用しての乗り継ぎワンマン運行で、運行コストも下げられ、その分を車両などの投資に回すことも出来る・・・となると、これは事業者にとってうまみのある(夜行)路線ではないでしょうか。
もっとも、この様な路線開設が出来るのも、JRバスならではといえます。
営業エリアが限定された既存事業者では、出来ないこともないとはいえ、かなり難しいのではないでしょうか。
色々と書きましたが、地方〜地方間夜行バスの現状及び成功例のひとつを見られたという点で、乗車出来て良かったです。
利便性が良い路線ですので、もし北陸〜東北間を乗り換え無しで移動されたいという方は、是非この路線を選択肢のひとつに入れてみてはいかがでしょうか。
【乗車データ】
- 乗車日:2021/04/24
- 乗車区間:
金沢駅東口(兼六園口)→仙台駅東口 - 運行会社:JRバス東北
- 車両:日野/セレガHD(2TG-RU1ASDA)
- 年式:2018年式
- 所属:仙台支店
- 社番:H677-18408




