国産唯一の2階建てバス”三菱エアロキング”が生産終了して今年で14年。
これまで活躍してきた車両が相次いで引退を迎え、現在営業運行している車両も残り数少なくなってきました。
そんな中、引退した車両が別の事業者へ移り、既存高速路線の営業運行に就くという事例が先日あったことをご存じでしょうか。
その車両とは・・・2024年8月8日より運用に入ったJRバス中国(本社:広島市)の2台のエアロキング。
出雲・松江・米子~名古屋間夜行高速バス「出雲松江米子ドリーム名古屋号」の専用車として再デビューしたのです。
かつては、同社でも出雲・松江・米子~東京線「スサノオ号」や広島~名古屋線「セレナーデ号」、広島~大阪線「山陽ドリーム広島号」「山陽道昼特急大阪号」などの路線で三菱エアロキングを投入していましたが、車両代替により2017年までにすべてが引退。
それが、他社からの移籍車両であるとはいえ、同社において国産車の2階建てバスが7年ぶりに復活したことは、特にエアロキングファンにとっては嬉しい話題ではないでしょうか。
そこで今回は、事実上の再デビューを果たしたJRバス中国の三菱エアロキングに会いに行った時の模様をご紹介します。
出所は・・・東名高速で活躍したあの車両だった!
では、今般JRバス中国でデビューしたエアロキングの出所(=元事業者)はどこなのか。
実は、こちらの車両でした。
2024年2月をもって運用を終了したJR東海バス(本社:名古屋市)が東名高速線用(東名ハイウェイバス、「ドリームなごや号」)として導入した車両です。
「ビジネスシート」搭載車として3台導入した2010年式の三菱エアロキングのうち、2台が同じJRバスグループの中国JRバス(→JRバス中国)へ移り渡り、夜行高速バス「出雲松江米子ドリーム名古屋号」の専用車として再デビューを果たした・・・というわけなのです。
一般的に、この手の情報は公開しないのが普通なのですが、JR東海バスの公式X(旧Twitter)アカウントがその旨を公表していることから、この記事でもご紹介させていただきました。
バス崎です!嬉しいお知らせです🚌
中国JRバス様の運行する出雲・松江・米子~名古屋線ですが、なんと8月8日からエアロキングで運行!
なんと2月末まで当社で活躍していたバスなんです!
(お気付きの方もいらっしゃるようですが(*`艸´)ウシシシ)
同じJRグループで再び活躍してくれるなんて感無量! pic.twitter.com/6tPBjRF3uS— 【公式】ジェイアール東海バス(株)🚌 (@JRtokai_bus) July 11, 2024
上記ポストによると、かつてのJR東海バス744-10992号車が、JRバス中国では744-10904号車に、JR東海バス744-10993号車が、JRバス中国では744-10905号車になったそうです。
果たして、JRバス中国へ移り渡った三菱エアロキングはどのような姿になったのか・・・。
期待を胸に8月の下旬、私は滞在地の福岡から鉄道を乗り継いで出雲市へ移動したのでありました。
往年の姿はそのままに 一部変更箇所も???
博多から出雲市までの鉄道移動
先日の通り、福岡から出雲市までは鉄道での移動となりました。
博多から東海道・山陽新幹線直通「のぞみ38号」で新山口へ移動。
30分程の乗車ではありましたが、初のN700S系グリーン車での移動となりました。
居心地と座り心地の良さはさすが「スプリーム」。
今度は新大阪まで乗り通したいですね。
新山口で1時間程の乗り換え時間を挟み、新山口からはJR在来線特急列車の中でも屈指の長さを誇る特急「スーパーおき6号」で出雲市まで移動します。
2両編成という短い編成の特急でしたが、出雲市までの約3時間半、久しぶりの在来線特急列車の旅を堪能します。
山口線内での走りと山陰本線に入ってからの走りの違いに驚きましたが、山陰本線の車窓も素晴らしく、車窓を眺めているうちに着いてしまったという感覚でした。
驚いたのは、山陰本線内で通勤・通学で特急列車を利用されている方が意外にも多かったこと。
沿線住民への補助制度なるものがあるのでしょうか・・・。
20時前、出雲市駅に到着。
出雲市駅近くのスーパー銭湯でひとっ風呂を堪能し、次の移動に備えて束の間の休息を楽しみます。
休息を終え、出雲市駅前のバスのりばに戻ると、福岡行きの夜行高速バス「出雲ドリーム博多1号」(JR九州バス)が発車を待っていました。
福岡~出雲間の夜行バスが、西鉄と一畑電鉄(→一畑バス)運行の「出雲路号」からJRバス運行の「出雲ドリーム博多号」になって、来年で10年となりますが、もう10年になるのですね。
時の流れはあっという間です。
「出雲松江米子ドリーム名古屋号」の外観と車内
今回乗車する名古屋行き「出雲松江米子ドリーム名古屋2号」は、「出雲ドリーム博多号」発車15分後の21時50分にJR出雲市駅を発車。
発車の10分前にはバスが入線して乗車改札が始まる筈ですが、この日は発車時刻5分前の21時45分にのりばに入線、乗車改札となりました。
改めて今回乗車した車両をご紹介します。
JRバス中国 島根支店所属の744-10905号車、三菱エアロキング(BKG-MU66JS)です。
かつての「スサノオ号」で活躍していた三菱エアロキングを彷彿させる、伝統の「つばめカラー」はそのままですが、注目したいのは車体後部の社名表記。
それまでの「CHUGOKU JR BUS」から「JR BUS CHUGOKU」に変更されているのです。
中国JRバスからJRバス中国に商号変更することが発表されたは、この車両が運用を開始した2024年8月8日。
それに対して、車両の導入自体は7月中ですので、(既に決まっていたとはいえ)車体の社名表記変更は、今となれば商号変更の予告であったのかもしれません。
乗務員の改札を受け、車内に入りますが、この日は満席で車内の写真を撮影する状況でなかったため、以前JR東海バス時代に撮影した画像をもってご紹介します。
車内は、3列ビジネスシートと3列スーパーシートの2クラス制。
2階席の定員が27名、1階席の定員が6名の計33名定員となっています。
シートの枕カバーが変更されている以外、内装はJR東海バス時代から手を加えておらず、そのままの状態で使用しています。
3列ビジネスシートは、2階席の前方6席のみ設定。
シートの座り心地の良さとリクライニング角度の深さ、そして広いシートピッチが特徴で、C席側には通路と座席の前後を仕切るプライベートカーテンを装備しています。
今回、私はこちらのビジネスシート2C席を予約しました。
ビジネスシートには、専用の足置き台を設置。
靴を収納出来る優れものです。
一方の、2階後方21席と1階6席の3列スタンダードシートには、シート形状が改良されたものを採用しており、こちらも座り心地はなかなかのもの。
出雲~名古屋間を寝て移動する分には十分のシートといえましょう。
トイレは、1階の車内中央部に設置されています。
かなり狭く、緊急用と考えた方が良さそうです。
一応、トイレ内には手洗い用の小型洗面台も付いています。
トイレ入口付近には、高速バス安全ガイドラインに基づく掲示物が貼られていました。
当たり前のことをしっかりと行うあたり、さすがJRバスといったところでしょうか。
ざっと見た感じでは、外観こそJRバス中国オリジナルではありますが、車内はJR東海バス時代を色濃く残している印象を受けました。
手入れもしっかりとされており、名古屋までの約8時間、快適なバス移動が楽しめそうです。
途中休憩は1階のみ 目覚めたら名古屋!?
21時50分 JR出雲市駅発車
定刻にJR出雲市駅を発車した「出雲松江米子ドリーム名古屋2号」は、斐川インターまで一般道を走行。
同インター隣接の停留所にて乗車扱いのために停車後、斐川インターから山陰自動車道に入り、宍道、玉造の各停留所にて停車、松江西インターで山陰自動車道を降り、一般道を松江市中心部へ向けて走行します。
22時40分過ぎ、松江駅に到着。
こちらで多くの乗客が乗車し、トランクへの荷物の収納に時間を要したことから、定刻3分遅れの22時48分、「出雲松江米子ドリーム名古屋2号」は松江駅を発車しました。
松江駅を発車したバスは、8分程走行した松江中央インターから再び山陰自動車道へ。
暗闇の山陰自動車道を20分程走行し、23時15分に米子西インターを流出。
米子市中心部へ向かいます。
23時20分過ぎ、米子駅に到着。
こちらで最後の乗車扱いを行い、23時25分に「出雲松江米子ドリーム名古屋2号」は米子駅を発車します。
米子駅を発車したところで、乗務員による詳しい案内が行われた後、自動案内放送が流れます。
その間、バスは米子西インターからみたび山陰自動車道に入り、米子ジャンクションからは米子自動車道を南下していきます。
米子自動車道を落合ジャンクションまで走行した後、落合ジャンクションからは中国自動車道を走行。
岡山県の勝央サービスエリアで乗務員交代を行い、中国自動車道から名神高速道路、新名神高速道路、東名阪自動車道、名古屋高速を経由して、終着の名古屋駅新幹線口をめざします。
00時05分~00時20分 蒜山高原SAにて開放休憩。
米子駅を発車して40分後の00時05分、バスは米子自動車道蒜山高原サービスエリアに到着します。
こちらでは、消灯前かつ唯一の開放休憩として15分間停車しました。
蒜山高原サービスエリアは、岡山県真庭市蒜山西茅部の米子自動車道上にあるサービスエリア。
米子自動車道で唯一のサービスエリアでもあります。
移動中、唯一の外へ出られる時間ということもあってか、多くの乗客がバスを降りてトイレや買い物などを済ませていました。
バスも、深夜走行に備えてしばしのひと休みです。
00時20分、乗客が全員そろたっところで、バスは蒜山高原サービスエリアを発車。
その2分後の00時22分、車内の灯りが消され、深夜走行に入りました。
消灯されたところで、シートを倒して目を瞑ると夢の中へ。
数回目を覚ますものの、翌朝までしっかりと寝たのでありました。
06時00分 名古屋駅新幹線口到着
翌朝、目を覚ますと、「出雲松江米子ドリーム名古屋2号」は東名阪自動車道を走行中でした。
この先、東名阪自動車道から名古屋高速へ入り、名古屋高速岩塚ランプを流出する直前、自動放送による到着案内が行われます。
岩塚ランプを通過した「出雲松江米子ドリーム名古屋2号」は、一般道を15分程走行し、名古屋駅周辺の高速ビル群が見えると、
終着の名古屋駅新幹線口に到着です。
この日は、定刻より5分早い06時00分に到着しました。
しっかりと寝たこともあって、気分は概ね好調。
長時間の運行、お疲れ様でございました。
この後、私は身支度や買い物などで1時間程時間をつぶし、名古屋新幹線口から名鉄バスの高速バス「北陸道高速バス福井線」で福井県へ向かったのでありました。
最後に
以上、JRバス中国「出雲松江米子ドリーム名古屋2号」乗車の模様をお届けしました。
先述の通り、国産唯一の2階建てバス”三菱エアロキング”が生産終了して今年で14年。
現在営業運行している車両が残り数少なくなっている今日において、まさか他事業者からの移籍で復活するとは思いもしませんでしたが、地元のマスコミ報道などによると、この路線では観光やビジネスの需要が旺盛しているとのことで、輸送力の増大が大きな課題であったとのことです。
実際に今回初めて乗車してみて、週末という1週間で一番利用客が多い日にちとはいえ、2階建てバスで満席になる程の利用がある路線であることにも々驚いたと同時に、2階建てバスを投入するに至った理由が理解出来た気がしました。
今回、他事業者からの移籍車両とはいえ、1台当たりの輸送効率が改善されたことは、事業者にとってはプラスになるでしょう。
とはいえ、10年以上活躍した車両を再投入しているわけですから、かなりの手入れをしているとはいえ、それなりに老朽化は進んでいることでしょう。
今後如何にメンテナンスをしっかりと行い、1日でも長く運行が続けられるかが当面の課題なのかなぁと感じました。
奇跡?の復活をとげたJRハイウェイバスの2階建てバス”三菱エアロキング”。
新車ほど活躍期間は長くないでしょうが、一日でも長く活躍することを切に祈念いたします。
因みに、今回アサインしたビジネスシートですが・・・2階建てバス独特の揺れがあったとはいえ、シート自体の座り心地が良く、足元もゆったりとしていて、約8時間の移動があっという間に感じたことを付け加えておきます。
【乗車データ】
- 乗車日:2024/08/23
- 乗車区間:
JR出雲市駅→名古屋駅新幹線口 - 運行会社:JRバス中国(乗車当時は中国JRバス)
- 車両:三菱/エアロキング(BKG-MU66JS)
- 年式:2010年式
- 所属:島根支店(乗務員運用は島根支店と岡山支店共管)
- 社番:744-10905
【おまけ】動画にしてみました
宜しければご覧いただけると幸いです。



