京都・大阪・神戸三宮を起点に、全国各地へ高速バスを運行している近鉄バス株式会社(本社:東大阪市)。
近鉄バスの高速路線については、何度かこのブログで紹介している他、ブログで紹介していない路線についても、これまで結構な数の路線を乗車して来ました。
ですが、実はこれまで乗車出来ていなかった路線が1路線ありまして、その路線に先日乗車してまいりました。
その路線とは・・・京阪神と大分県中津市、別府市、大分市を結ぶ夜行高速バス「SORIN号」(大分特急線)であります。
前々から乗車したいと思っていた路線であり、今回、念願の乗車となりました。
京阪神と大分を結ぶ夜行交通機関といえば、なんといってもフェリー「さんふらわあ」が有名です。
大阪〜別府間および神戸〜大分間を毎日1往復運航しており、低廉な運賃と充実した設備が人気の老舗航路でもあります。
「そんな強力なライバルが存在する区間にどうして夜行バスが?」という疑問はさておき、コロナ禍で苦しんでいる京阪神〜九州間夜行高速路線の現状を含め、今回は「SORIN号」近鉄バス便に乗車した時の模様をご紹介します。
関西〜大分間の夜行バスはバブル期から存在していた!?
「SORIN号」の乗車記をご紹介する前に、関西と大分を結ぶ夜行高速バスの歴史を簡単に振り返ってみましょう。
関西と大分を結ぶ夜行高速バスが最初に開設されたのは、バブル期後半の1990(平成2)年7月17日のこと。
いわゆる「ダブルトラック」路線として、「ゆのくに号」「エメラルド号」という2路線が開設されました。
路線の概要は、以下の通りとなります。
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【夜行高速バス「ゆのくに号」】
運行会社:阪急バス、大分交通、亀の井バス
運行区間:大阪梅田(阪急三番街)〜新大阪〜千里ニュータウン〜千里中央〜宝塚IC〜西宮名塩〜西宮北IC 〜(高速道路)〜中津サンライズホテル〜宇佐法鏡寺〜別府北浜〜大分(トキハ/フォーラス前)〜大分新川
車両:3列独立シート28人乗りスーパーハイデッカー(トイレ・マルチステレオ付き)
※運行区間は最末期のものを記載。
※本路線の休止から21年後の2015(平成27)年9月12日からは、大分側3社と西鉄バス北九州が運行する高速バス「北九州〜別府・大分線」の愛称として、本路線と同名である「ゆのくに号」の名称が用いられている。
【夜行高速バス「エメラルド号」】
運行会社:近畿日本鉄道(→近鉄バス)、大分バス
運行区間:大阪あべの橋バスステーション〜大阪上本町バスターミナル〜近鉄なんば駅西口(OCAT)〜(高速道路)〜別府ドライブイン〜大分トキハ前〜(米良有料道路・国道10号)〜 臼杵(辻ロータリー)〜津久見(桜ヶ瀬) 〜佐伯駅前
※運行区間は最末期のものを記載。
※別府ドライブインは、別府観光港付近にあった大分バス運営の施設。
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しかしながら、バブル崩壊の影響で利用客数が減少したことなどの理由で、1994(平成6)年2月末日をもって「ゆのくに号」が運行を終了。
残る「エメラルド号」も、経路変更や臼杵・佐伯地区への延伸でテコ入れを図りますが、思う様に利用客数が伸びなかったことなどから、1997(平成9)年6月1日をもって運行を終了、この時点で、関西〜大分間の夜行高速バスは、いったん消滅することになります。
ところが、2011(平成23)年になって、2度目の関西〜大分間夜行高速バス開設の話が出て来ます。
そして、同年12月21日、かつて「エメラルド号」を運行していた近鉄バスと大分バス、そして「ゆのくに号」(初代)を運行していた大分交通と亀の井バスの計4社が共同で、夜行高速バス「SORIN号」の運行を開始します。
路線愛称である愛称である「SORIN」は、大分県を代表する歴史上の人物で、戦国時代に現在の大分県を中心に勢力を誇ったキリシタン大名「大友宗麟(そうりん)」に由来しているといいます。
「SORIN号」の最大の特徴は、なんといっても京阪神3府県からの乗車が可能であるということ。
関西側の停留所が大阪市内のみであった「エメラルド号」「ゆのくに号」(「ゆのくに号」は兵庫県内の一部にも停車)のに対し、「SORIN号」では京都及び神戸からの利用も可能になっています。
先述の通り、運行開始当初は4社共同(近鉄は隔日・大分側は3社によるローテーション)で運行していましたが、乗務員不足などの理由で大分交通と亀の井バスが2019(平成31)年3月末をもって運行から撤退したため、現在はかつての「エメラルド号」と同じ陣営(近鉄バス・大分バス)が運行しています。
京都発着路線なのに大阪府内の営業所が運行を担当???
やって来たのは、JR大分駅から車で5分程の場所に位置する、大分交通新川バスセンター。
福岡・北九州・長崎方面高速バスや大分空港連絡バスの発着所としても有名です。
夜行高速バス「SORIN号」も、こちらが起終点となります。
隣には、大手回転寿司チェーンの店舗やディスカウントストア(ドンキホーテ)が立ち並び、乗車前の飲食や買い物にも便利な場所です。
「SORIN号」は、発車5分前にのりばに入線、乗車改札が始まります。
今回乗車した車両はこちら。
近鉄バス稲田営業所所属2954号車(日野セレガHD 2RG-RU1ESDA)です。
2019年式の比較的新しい車両で、6速AMT「Pro Shift 6」を搭載しています。
京都を発着する路線は、基本的に京都営業所が運行を担当するのですが、「SORIN号」については、諸事情により東大阪市にある稲田営業所が運行を担当するそうで、毎日東大阪の営業所と京都の間を回送するとのことでした。
早速、乗務員の改札を受け、車内に入ります。
気になる車内の様子は・・・
車内は、3列独立シート27人乗りの夜行高速仕様。
トイレ入口横がフリースペースになっており、進行方向左側座席からトイレへの行き来がしやすくなっています。
座席と通路を仕切るカーテンは、窓側座席のみに設置されています。
シートは、天龍工業製の夜行用標準シートを採用。
フットレスト、レッグレストも完備しています。
本来であれば、各座席に毛布(ブランケット)とクッションを備え付けていますが、新型コロナ感染拡大防止のため、乗車時はサービスを停止していました。
肘掛け下には、携帯電話・スマートフォン充電用のUSBポートを設置しています。
従来はコンセントを設置していましたが、コスト面や電源容量の関係などから、ここ数年来に導入されている車両はUSBポートに変更されています。
座席のシートポケットには、安全のしおり、車内設備、Wi-fiの設定方法などを記したリーフレットが入っています。
簡潔で分かりやすい内容が印象に残りました。
トイレは、車内中央部の階段を降りた突き当りに設置。
扉には、禁煙の徹底を記したステッカーが貼られていました。
過去に何かトラブルでもあったのでしょうか・・・。
以上、近鉄バス「SORIN号」の車内を簡単に紹介しましたが、夜行バスに必要な設備はひと通り揃っている印象を受けました。
新型コロナ対策について
今回乗車した便の新型コロナウイルス対策は、以下の様になっておりました。
【主な新型コロナ感染症対策】(乗車当時のものです)
・座席使用制限:なし
※窓側座席のみ通路カーテン付き
・車内消毒液設置:あり
・運転席回りのビニール製カーテン設置:なし
※消灯時に前方遮蔽カーテンをセット。
・運行終了時の車内消毒:実施
・エアコンの外気導入:実施
<動画追加>【お知らせ】バス事業者様へ 大型観光バス「日野セレガ」の室内空調について
・休憩時の車内換気:実施
・その他:
車内抗菌処理実施済み
プラズマクラスターイオン発生装置を設置
乗務員のマスク着用 など
途中休憩は1回のみ 目覚めると神戸中心部の街並みが・・・
20時30分 大分新川発車
20時30分、定刻に大分新川を発車したバスは、5分程で中央通り(トキハ前)に到着。
こちらで乗車扱いのために停車します。
ここまでの乗客数は、私を含めて僅か3名。
さらに、乗務員の話によると、本日の予約客はこれで全てだとか。
コロ中禍の影響があるとはいえ、寂しい車内です。
20時40分、定刻に中央通りを発車したところで、乗務員から自己紹介と各種案内が交代乗務員からマイクを通じて行われ、その後、車内を巡回して不明点がないかどうかを確認します。
案内のフォーマットが「某社に似ているかなぁ・・・」とも思いましたが、過不足ない丁寧な応対は好感がもてますね。
20時55分、別府北浜にて乗車扱いのために停車するも、乗車客はなし。
その後、宇佐法鏡寺、中津サンライズホテルにて停車するも、乗車客がなく、今乗車している3名の乗客で、一路関西へと向かいます。
中津サンライズホテルにて1度目の乗務員交代を行ったバスは、国道10号を北へ。
大分から小倉東インターまで、ずっと一般国道(国道10号)をひた走ります。
豊前インターから東九州自動車道に入れば・・・とも思うのですが、所要時間の関係からかなのか、はたまた費用面関係からなのか、運行開始当初からの運行経路を踏襲している様です。
22時51分、車内の照明が減光。
完全消灯しても遅くはない時間ですが、開放休憩場所まで時間を要することから、暫くは減光のまま運行します。
23時41分、小倉東インターから九州自動車道へ。
その14分後の23時55分、関門橋を通過し、九州から本州に入ります。
00時35分〜00時45分 美東サービスエリアにて開放休憩
このバスの途中休憩は1箇所のみ。
山口県の山陽自動車道美東サービスエリアにて10分程停車します。
定刻では00時30分前後に到着しますが、疲れが溜まっていたからか、小倉東インターを通過したところでシートを倒して眠っていたということもあり、外に出る気力が失せてしまい、そのまま車内で寝ておりました。
その後、バスは順調に高速道路を走行。
私も、快適なシートと心地良い揺れの効果で、翌朝5時半頃まで目を覚ますことはありませんでした。
尚、ひとつ補足を。
上り便(神戸・大阪・京都行き)の休憩場所は、先述の通り美東サービスエリアですが、下り便の休憩場所は、阪神高速道路の中島パーキングエリアまたは山陽自動車道の三木サービスエリアにて実施する様です。
下り便ご利用予定の方はご参考までに。
06時08分 三宮バスターミナル(ミント神戸)到着
05時39分、兵庫県に入り、バスは三木ジャンクションを通過。
ここで、山陽自動車道に別れを告げ、神戸淡路鳴門自動車道〜阪神高速北神戸線〜神戸長田ランプを経由し、神戸市中心部へ向かいます。
06時04分、京橋ランプを流出。
その4分後の06時08分、定刻8分遅れでバスは三宮バスターミナル(ミント神戸)に到着しました。
終点は京都駅八条口ですが、行程の関係から、「SORIN号」とはこちらでお別れ。
大阪・京都方面へ走り去っていく「SORIN号」の姿を見届け、私は次なる目的地へと向かうのでありました。
乗り換えなしで便利なのですが・・・
私にとって初乗車であった近鉄バス「SORIN号」。
実は移動中、この路線を上手く利用するには・・・ということをずっと考えていました。
街の中心地から乗り換えなしで移動出来るなどのメリットがある反面、フェリーの様に横になって移動することが出来ない、所要時間もフェリーと大差ないなどのデメリットもある・・・色々と考えたのですが、コレはっ!という答えが中々出て来ません。
ですが、ふと思ったのです。
「神戸〜別府・大分間の利用であれば、所要時間も早く、利便性が高まるのでは・・・」
と。
「SORIN号」の時刻表を改めて見てみると、下り便の神戸三宮発車時刻が23時00分(別府北浜08時12分着、大分中央通り08時27分着)となっており、一方で上り便の神戸三宮到着時刻が06時00分(大分中央通り20時40分発、別府北浜20時55分発)となっているのです。
これであれば、フェリーよりも遅い時間に発つことが出来る(=夜遅くまで現地に滞在することが出来る)ほか、上り便については、神戸三宮から鉄道(私鉄・JR在来線・新幹線)を利用することで、「SORIN号」を大阪・京都まで乗り通すよりも早く目的地に到着することが出来る、場合によってはフェリーを利用するよりも早く目的に到着することが可能になるのです。
あとは、道中の快適さ(移動中に横になれるかどうか、車内(船内)のサービスなど)や運賃の比較で、利用者が夜行バス、フェリーどちらを選ぶかということになるでしょう。
現状においては、「横になって移動出来る」「安く移動出来る」という点で、どう考えてもフェリーの方に分があるともいわざるを得ませんが、聞くところによると、コロナ禍の現在は別として、「SORIN号」も週末や繁忙期はそれなりに混んでいたといいます。
もしかすると、遅くに現地を発車する運行ダイヤや、乗り換え無しで移動出来る利便性の良さが、一部の利用客に評価されていたのかもしれません。
残念ながら、新型コロナウイルス感染拡大に伴う需要減退により、2021(令和3)年4月18日より無期限の再運休に入っています。
いつ運行を再開するかは不明ですが、この状況を一刻も早く脱して、再び多くの乗客で賑わう「SORIN号」の姿を見てみたいです。
今回は、大分〜神戸間の利用でしたが、運行を再開した暁には、大分〜京都間フル区間でもう一度乗車して、この路線の利用価値なるものを改めて探ってみたいと思います。
【乗車データ】
- 乗車日:2021/04/08
- 乗車区間:
大分新川→三宮バスターミナル(ミント神戸) - 運行会社:近鉄バス
- 車両:日野/セレガHD(2RG−RU1ESDA)
- 年式:2019年式
- 所属:稲田営業所
- 社番:2954



