1986(昭和61)年の運行開始以来、“高速バスのパイオニア”として親しまれてきた東京~弘前間の夜行高速バス「ノクターン号」。
ところが、ここ10年来は旧高速ツアーバスの台頭や東北新幹線の新青森延伸などの影響を受け、苦戦が続いていました。
さらに、2020年以降のコロナ騒動による長期運休と京浜急行バスの運行撤退・・・大人気を誇っていた老舗路線は、かつてない試練に立たされているといっても良いかもしれません。
そんな「ノクターン号」が、2021年12月1日、リニューアルしました。
リニューアルのポイントは2つあります。
ひとつは、「ノクターン号」から「ニューノクターン号」への愛称変更。
そして、もうひとつは、東京都内の発着場所の変更です。
ひとつ目の愛称変更は、運行事業者である弘南バスの”コロナ禍明けに向けての期待と決意”が込められている印象を受けます。
そして、もうひとつの東京都内の発着場所変更は、京浜急行バスの運行撤退と世界貿易センタービルの建て替えが原因とはいえ、品川・浜松町からバスタ新宿(新宿高速バスターミナル)に変更したことで、結果として利便性向上に繋がったといえましょう。
私自身、リニューアルしてからの「ノクターン号」(=「ニューノクターン号」)に乗車したことはこれまで一度もなかったのですが、実は2022年10月のとある日に乗車する機会があり、弘前から東京新宿まで乗車して来ました。
今回はその時の模様をお届けします。
「ニューノクターン号」にリニューアルした老舗路線の”いま”を少しでも感じ取っていただけると幸いです。
懐かしい雰囲気が残る弘前バスターミナル
札幌からJR特急「北斗18号」と北海道新幹線「はやぶさ96号」、そしてJR奥羽本線の普通電車を乗り継いでやって来たのは、JR弘前駅。
JR弘前駅から徒歩5分程の位置に、弘前地区の主要バスターミナル「弘南バス弘前バスターミナル」があります。
1976(昭和51)年に自社ビルのバスとして開設されて以降、実に46年。
開設当初は「弘南ビルバスターミナル」と呼ばれていましたが、その後、現在も入居しているイトーヨーカドーにビルを売却し、「弘前バスターミナル」に改称しています。
私自身、このバスターミナルには何度も訪れていますが、数十年来の”変わらない””懐かしい”雰囲気がどことなく好きであったりします。
これを良いとみるか悪いとみるかは人それぞれですが、古き良き佇まいを残した特徴のあるバスターミナルであることには間違いないでしょう。
私が到着したのは、21時30分過ぎ。
この時間ともなると、バスターミナルを発着する弘南バスの市内・郊外路線バスの運行は殆ど終わっており、あとはこれから発車する東京方面行き夜行高速バスの発車を待つのみです。
2番のりば前には、ガラスで仕切られた乗車券カウンターと待合室、自動販売機が設置されており、寒い中でも快適な環境でバスを待つことが出来ます。
21時45分過ぎ、五所川原始発の「パンダ号」東京新宿線が到着。
10人程の乗客を乗せ、22時00分、弘前バスターミナルを発車します。
この時間帯の弘前バスターミナルは、東京方面行き夜行高速バスの発車が続きます。
21時20分発の「パンダ号」上野線1便目を皮切りに、先程ご紹介した「パンダ号」東京新宿線、私が乗車する「ニューノクターン号」、「津輕号」、そして現在は運休している「パンダ号」上野線2便目と、実に5便の夜行高速バスが発車。
かつての「ノクターン号」全盛期と比較すると、1便当たりの台数が減っている反面、選択肢が増えたことで、むしろ利便性は良くなっているといえるかもしれません。
弘南バス最新の3列夜行仕様車は快適性重視の造り!?
そうこうしているうちに、22時05分、私が乗車する「ニューノクターン号」が五所川原からやって来ました。
今回乗車したのは、こちらの車両。
弘南バス五所川原営業所所属33101-3号車(三菱エアロクイーン 2TG-MS06GP)です。
同社の3列シート夜行高速仕様車としては現在の時点で最新車両にあたり、現行型三菱エアロクイーン夜行高速仕様車導入第1号の車両でもあります。
到着後、乗車改札が始まります。
乗務員に乗車券を渡し、バス車内に入ります。
車内は3列独立シート28人乗りの夜行高速仕様。
座席と通路を仕切るカーテンは、窓側座席に設置しています。
トイレは、車内中央部の階段を下りたところにあります。
シートは、名鉄バスの夜行高速用車両「プレミアムワイド」で採用されているシートと同型のシートを採用。
座面が通常の夜行用シートよりも広い他、足置き(フットレスト)の奥行きが空洞になっているため、ゆったりと足を伸ばすことが出来ます。
但し、実際にシートを倒してみると、リクライニングの角度が浅いことで、シートを倒して寝る時の姿勢が少し中途半端になる点が個人的に気になりました。
コンセントは各座席に完備。
窓側座席のコンセントは、壁側下部に設置されていました。
以上、弘南バス「ニューノクターン号」33101-3号車の車内を簡単にご紹介しましたが、先にデビューした「津輕号」専用車(日野セレガSHD)の仕様を引き継ぐ形での”快適性重視の造り”になっているのが特徴といえるのではないでしょうか。
途中休憩は2回 首都高の渋滞で1時間以上の遅延到着に・・・
22時20分 弘前バスターミナル発車
定刻に弘前バスターミナルを発車したバスは、一般道を大鰐弘前インター向けて走行します。
その間、自動音声による案内放送が流れ、乗務員による補足説明が行われた後、車内は消灯となります。
津軽訛りが残る乗務員の補足説明を聴くにつれ、青森県のバス会社が運行するバスに乗っていることを改めて実感します。
22時36分、大鰐インターを通過。
ここから先は、ひたすら東北自動車道を南下し、東京・横浜をめざします。
00時15分~00時30分 紫波サービスエリアにて開放休憩
弘前バスターミナルを発車すること約2時間、バスは最初の休憩場所である岩手県の紫波サービスエリアに到着します。
こちらでは、15分間の開放休憩となりました。
車内を見回ると、多くの方がすでに就寝しており、バスを降りたのは私を含め数名のみでした。
夜間時間帯で売店が閉まっていることや、外が冷えていたということもあって、トイレと飲料水を購入後、すぐにバスに戻りました。
05時30分~05時45分 佐野サービスエリアにて開放休憩
紫波サービスエリアを発車したバスは、暗闇の東北自動車道を首都圏へ向けて順調に南下。
夜中1時くらいまでは起きていましたが、やがて眠くなり、シートを倒して就寝します。
翌朝、目を覚ますと、バスは栃木県の佐野サービスエリアに到着していました。
概ね4時間半ほど寝ていたことになるでしょうか、数移民時間は短いものの、寝不足という感覚はなく、むしろすっきりした気分で目覚めることが出来ました。
佐野サービスエリアでは、2回目の開放休憩として15分間停車しました。
1回目の休憩の紫波サービスエリアとは異なり、こちらでは多くの乗客がバスを降りてトイレや買い物などを済ませていました。
バスも、ラストスパートに向けてしばしのひと休みです。
08時26分 バスタ新宿到着
佐野サービスエリアを発車したバスは、引き続き東北自動車道を南下。
住宅地が連続する景色を見るにつれ、首都圏が近づいていることを実感します。
東北自動車道浦和本線料金所あたりまでは順調に進んでいましたが、雨模様と週末ということもあってか、首都高速道路に入ってから渋滞に巻き込まれます。
しかもこの渋滞、思っていたよりも酷く、中々車が進みません。
結局。中野長者原ランプを通過したのは、定刻よりも1時間以上遅い08時07分。
さらに、都内一般道路の朝ラッシュにも少し巻き込まれたこともあって、バスタ新宿(新宿高速バスターミナル)に到着したのは、定刻よりも1時間16分遅い08時26分のことでした。
遅延はしましたが、「ノクターン号」時代と比較して弘前側の発車時刻が少し遅くなっていることや開放休憩を2回に増やしたこと、さらには朝の首都高渋滞という不可抗力を考えると、こればかりは致し方がないのかなぁという気がします。
むしろ、コンプライアンスの遵守が求められている現代においては、これが普通なのかもしれません。(過去の「ノクターン」時代が異常だった?)
利便性が向上した「ノクターン号」のリニューアル
今回、久しぶりに弘南バスの弘前~東京間夜行高速バスに乗車しましたが、「ノクターン号」から「ニューノクターン号」へのリニューアルは、路線単体および弘南バスの夜行高速路線網の双方において利便性向上に繋がったのではと感じました。
路線単体という点で見てみると、先述の通り京浜急行バスの運行撤退と世界貿易センタービルの建て替えが原因とはいえ、日本有数の交通結節点「新宿」への乗り入れが実現したことで、新宿を拠点に箱根や富士山、草津温泉など有名観光地へのアクセスもしやすくなりました
また、弘南バスの夜行高速路線網という点で見てみると、これまで乗り入れていた「津輕号」「パンダ号(東京新宿線)」に「ニューノクターン号」が加わったことで、とりわけ弘前~新宿間で選択肢が増え、より利便性が向上する結果となりました。
「供給過剰なのでは?」と心配する声もあろうかと思いますが、選択肢がないよりあった方が良いのはいうまでもなく、旧高速ツアーバス対策から始まった青森・弘前~首都圏間路線強化策の一連の流れをふり返れば、今日の姿になるのはある程度予想出来たのかもしれません。
そして、同社はこの先、「ブランド名の統一」という次の手に打って出ます。
2022年12月1日、現在の「津輕号」が「ノクターン・ネオ号」に、現在の「スカイ号」が「パンダ号(スカイ線)」にそれぞれ名称変更し、3列シート便を「ノクターン」に、4列シート便を「パンダ」にブランド統一します。
同社の公式サイトでは、「お客様にわかりやすく、ご利用しやすく、愛される路線を目指し」と書いてありますが、ブランドを統一することで、弘南バスの存在感を前面に出して利用促進を図るものと思われます。
もっとも、「ノクターン号」から京浜急行バスが撤退したことで可能になったブランド名の統一ではありますが、この施策が今後の同社東京方面夜行高速バスの利用状況にどう反映されるのか、注目したいところです。
色々と書きましたが、「ノクターン号」からリニューアルした「ニューノクターン号」、個人的には現在の「津輕号」とセットでもう一度乗車してみたいと思いました。
車両もさることながら、“バスタ新宿から乗車出来る””バスタ新宿で下車出来る”利便性の良さは、是非一度体験して欲しいです。
【乗車データ】
- 乗車日:2022/10/13
- 乗車区間:
弘前バスターミナル→バスタ新宿(新宿高速バスターミナル) - 運行会社:弘南バス
- 車両:三菱/エアロクイーン(2TG-MS06GP)
- 年式:2019年式
- 所属:五所川原営業所
- 社番:33101-3
【おまけ】動画にしてみました
現在、Youtubeにて公開しています。
宜しければご覧いただけると幸いです。



