「ニューブリーズ号」(東京・新宿~西条・広島) 廃止へ・・・

夜行バス

コロナ禍の収束に向けて「さあ、これから高速バスの利用も回復へ・・・」となりそうなこの時期に、夜行高速バス路線整理のニュースが後を絶ちません。

SNSなどでご存知の方も多いかと思いますが、小田急ハイウェイバス(本社:東京都)と中国JRバス(本社:広島市)が運行している夜行高速バス「ニューブリーズ号」(東京・新宿~西条・広島)が、2023(令和5)年4月1日付で廃止されることが先日発表されました。

小田急ハイウェイバス「ニューブリーズ号」 No47
小田急ハイウェイバス「ニューブリーズ号」

中国JRバス「ニューブリーズ号」 2053
中国JRバス「ニューブリーズ号」

夜行高速バス「ニューブリーズ号」とは

ここで、夜行高速バス「ニューブリーズ号」の歴史について簡単におさらいしておきましょう。
東京・新宿~西条・広島線「ニューブリーズ号」は、1989(平成元)年3月17日にJRバス関東、中国JRバス、小田急バス(→小田急シティバス→小田急ハイウェイバス)、広島電鉄の4社が東京駅~三次・広島間で運行を開始しました。

JRバス関東「ニューブリーズ号」 3930
JRバス関東「ニューブリーズ号」

運行開始当初は、小田急バス・広島電鉄とJRバス関東・中国JRバスがそれぞれ別の路線免許を取得、毎日双方から1台ずつで同時刻に2台が運行、運賃は4社分合わせてプール精算制という特殊な形を採っていました。
これは、路線免許出願時に競願となったためであり、運輸省(現:国土交通省)の指導により調整を行った結果といわれています。
因みに当時の運輸省は、同一区間に複数の路線が運行することを良しとしていませんでした。

運行開始当初の運行距離は約917km。
一時期「日本最長距離夜行高速バス」として紹介されることもありました。

暫くの間は中国自動車経由で運行していましたが、山陽自動車道全通に伴い、のちに山陽自動車道経由便が新設され、2009(平成21)年には全便山陽自動車道経由に変更されます。

運行開始当初から利用客が多かったことでも知られており、一部の事業者(JRバス関東・広島電鉄)では輸送効率向上の目的から2階建てバス(三菱エアロキング)を投入するなど、人気路線のひとつでもありました。

旧高速ツアーバス台頭、コロナ禍、乗務員不足の三重苦

ところが、2000年代後半からの旧高速ツアーバスの台頭で、次第に利用客は減少していきます。
2008年には、JRバス関東と広島電鉄が運行から撤退し、小田急シティバス(→小田急ハイウェイバス)と中国JRバスの2社共同運行体制へ移行します。

運行経路変更による所要時間短縮や、新宿駅西口(→バスタ新宿)、西条駅、広大地区といった停留所の新設、呉系統の休止といったテコ入れも実施しますが、収支が改善しない状況が続きます。
加えて、2020年からのコロナ禍、そしてコロナ禍前から続く乗務員不足・・・路線を取り巻く環境はかつてない厳しい状況に置かれることになります。

運行再開に向けて2社間で協議を重ねたそうですが、乗務員不足解消の目途が立たないことや、収支の改善が見込めないことなどから、この度の廃止という結論に至ったそうです。

先日中国JRバスが発表したプレスリリースでも、その無念さが伝わる内容となっています。


広島~東京線(ニューブリーズ号) の廃止について

いつも中国ジェイアールバスをご利用いただきまして誠にありがとうございます。
さて、この度、広島~東京線(ニューブリーズ号)を2023年4月1日に廃止いたします。

本路線は1989年3月に小田急ハイウェイバス㈱ (旧 小田急バス㈱) 、広島電鉄㈱及びジェイアールバス関東㈱と中国ジェイアールバス㈱の4社共同で運行を開始した夜行高速バスで、広島電鉄、ジェイアールバス関東の撤退後は小田急ハイウェイバスと中国ジェイアールバスの2社で共同運行を行っておりました。
しかしながら、新高速バス(旧ツアーバス)の参入などで路線需要が大きく減少し、そこに新型コロナウイルス感染症拡大の影響も加わり、更に深刻な乗務員不足も重なって、現在は運行を休止している状況です。
運行再開に向け2社間協議を重ねて参りましたが、乗務員不足解消の目途がたたず、また今後も収支の改善は見込めないと判断し、廃止の結論に至った次第です。
お客様には大変ご迷惑をお掛けいたしますが、窮状をご賢察のうえご理解賜りますよう、何卒宜しくお願い 申し上げます。

長らくのご利用、誠にありがとうございました。


コロナ禍が落ち着き、本格的な運行再開を願っておりましたが、願いが叶うことはありませんでした。

こちらでも路線廃止を予感させる動きが・・・

いきなり?と思わせる「ニューブリーズ号」の路線廃止発表ですが、実は「もしかすると路線廃止されるのでは?」と思わせる動きがいくつかありました。

一つ目は、中国JRバスが単独で運行している東京・横浜~岡山・広島線「ドリーム岡山・広島号」のダイヤ改正です。
所要時間が約1時間延長され、下り便の広島到着が8時台に変更されるのが主な改正内容なのですが、運行時刻を見る限り、「ニューブリーズ」廃止を見越した改正内容であると映るのは私だけでしょうか・・・。

二つ目は、中国JRバスを取り巻く高速バス事業の変化です。
2023年になって、「くにびき号」(大阪梅田~松江・出雲)の運行離脱と大阪駅~松江・出雲線の新設、京都・大阪~広島線の同社単独運行化など、同社の高速バス事業、とりわけ長距離高速路線において大きな変化が生じています。
とはいえ、乗務員不足が解消されていないのは同社とて同じ。
「百万石ドリーム広島号」(広島・岡山~福井・金沢・富山)の休止や「瀬戸内エクスプレス」(広島~高松)の減便などで対応しようとはしているものの、この状況下でとても「ニューブリーズ号」の再開までとはいかないでしょう。

そして三つめは、小田急ハイウェイバス側の事情です
プレスリリースをご覧の方はご存知かもしれませんが、実は小田急ハイウェイバス側も乗務員不足かなりが深刻な様でして、主力の箱根線(新宿~御殿場・箱根)や羽田・横浜~御殿場・箱根線を減便しているのはもとより、夜行便に至っては「エトワールセト号」「ブルーメッツ号」が運休中の他、「フローラ号」「パピヨン号」が共同運行会社による単独運行(なおかつ「フローラ号」は特定日のみの運行)、「ルミナス・マスカット号」が小田急ハイウェイバスを除いた3社による運行と、小田急ハイウェイバスは現在夜行高速用の車両を1台も運行してない状況になっています。
コロナか落ち着き、「さあこれから・・・」という時にこの状況・・・。
下衆の勘繰りではありますが、「もしかすると近いうちに夜行路線から完全撤退するのでは・・・」と心配するのは私だけではない筈。
コロナ禍の影響で夜行路線から完全撤退した江ノ電バスや京浜急行バスの様な事例もあるだけに、同社夜行路線の今後が気になるところです。

最後に

またしても、最終運行を見ることなく、ひっとりと廃止される夜行高速バスが出てしまいました。
しかも、今回は東京~広島間という、首都と中国地方最大都市を結ぶ路線の廃止です。
新型コロナウイルス感染拡大の影響といってしまえばそれまでですが、この様にして次々と消えていく夜行高速バス・・・寂しいのひとことに尽きます。
特に「ニューブリーズ号」については、プライベートでも数回乗車している他、媒体取材でもお世話になった路線だけに、廃止は本当に残念という想いが強いです。

2023年、長距離夜行高速バスは(あまりよくない意味で)これまでにない大きな動きが出てきており、今後も続きそうです。
ここ数年間の大晦日にアップする記事にも書いていますが、2020年~2021年以降運休を続けている夜行路線の動向には特に注意したいです。

近々に『夜行高速バス 2023年冬~春の動き(ダイヤ改正、運行会社の変更、新規参入、運行終了など)』として纏めたいと思っています。

ひとまず、「ニューブリーズ号」、34年間本当にお疲れ様でした。

小田急ハイウェイバス「ニューブリーズ号」 No50


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