旭川電気軌道「三菱MR430」(3軸レトロバス)復元記念セレモニー&特別ツアーに参加しました

一般路線バス,鉄道

2022年10月21日金曜日、コロナ禍で苦しい状況が続いている日本のバス業界にとって、久しぶりに明るい話題が届けられた日となりました。

かねてから進められていた旭川電気軌道(本社:旭川市)の3軸レトロ路線バス「三菱MR430」のレストア(復元作業)がこのほど完了し、2022年10月21日に復元記念セレモニーが開催、初のお披露目となりました。

旭川電気軌道 3軸レトロバス「三菱MR430」 共栄 ・128_01
約1年かけてレストアした旭川電気軌道の三菱MR430

旭川電気軌道 3軸レトロバス「三菱MR430」 共栄 ・128_02
旭川電気軌道 三菱MR430のリアビュー

同時に、このセレモニーの参加と「三菱MR430」の撮影・乗車をセットにした日本旅行旭川支店主催の特別ツアー『MR430型3軸レトロバス復元記念特別ツアー』も催行されました。
33,000円というツアー料金も注目されたこのツアーですが、滅多にみられるバスでないことは確かであり、「この機会を逃すことは出来ない!」と思った私は、即決でツアーの参加を決めました。

そこで、今回はこのツアーの模様を紹介出来る範囲内で詳しく紹介します。
ツアーに参加された方もそうでない方も、この記事でお披露目当日の模様を少しでも感じ取っていただけると幸いです。

三菱MR430とはどんな車両なのか?

ツアーの模様をご紹介する前に、お披露目された3軸レトロバス「三菱MR430」について簡単にご紹介します。

三菱MR430は、1960年代高度成長期の輸送需要に応えるために、三菱(当時はまだ三菱日本重工業時代)が1963(昭和38)年に登場させた大型バスです。

最大の特徴は、前輪が2軸であることでした。
一部では前2軸のトラックシャシーにバスボディを架装したと思われている様ですが、この時期の三菱には前2軸のトラックが存在しておらず、MR430が三菱初の前2軸車ということになります。
旭川電気軌道 3軸レトロバス「三菱MR430」 共栄 ・128_19

全長は約12メートル。
現行の路線バスよりも約1m長く、現行の高速・観光バス車両とほぼ同じ全長を誇ります。
乗車定員は110名と、当時最大の収容人数を誇っていました。

元々ラッシュ対策として開発されたこともあり、車内はオールロングシート仕様になっています。
今では殆ど見かけない仕様ですが、私が小学1年生の頃までは、この様なロングシートの路線バスが結構走っていた記憶があります。
旭川電気軌道 3軸レトロバス「三菱MR430」 共栄 ・128_19

大量輸送時代に向けて需要が増えると見込んでの発売だったのでしょうが、実際には殆ど売れずに1963(昭和38)年から1965(昭和40)年の間のわすが12台の販売といわれています。
ネット上でよく”14台”という記載をよく見かけますが、実際は12台が正解の様でして、内訳は旧国鉄が6台、名古屋鉄道が3台、そして旭川バス(→旭川電気軌道)が3台の計12台が正しい台数の様です。
そして、旧国鉄と名鉄に導入されたのが富士重工製ボディであるのに対し、旭川バスに導入された3台は旧呉羽製のボディを纏っていました。
つまり、旭川バスに導入された3台は国内で唯一の旧呉羽製MR430であったわけで、高度経済成長期の大量輸送時代に活躍した、日本のバス史を語る上で貴重な車両の1台であるといえましょう。

旭川電気軌道「MR430特設ページ」によると、今回レストアされた車両は、旭川バス時代に導入された3台のうちの1台、128号車です。
主に当時の系統14番旭橋経由末広線(旭川駅~旭橋~末広1の2)で運行され、朝夕通学ラッシュで大活躍したそうです。
(貸切バスで勇駒別まで運行したとの情報もあるそうですが、真偽はいかに・・・。)
126・127号車が廃車された後、128号車は先に廃車となった2台から部品供給を受け昭和53年まで活躍。
3台とも春光営業所に配属されていました。
1977年の時点で、この128号車は国内で運行していたMR430で最後の1台でした。

128号車は廃車後、牧場の倉庫に使用された後、2007(平成19)年に旭川のバス愛好家が、2011(平成23)年に別のバス愛好家が購入し、東川町の自動車修理工場で保管されます。
ところが、2021年6月、以前のオーナーが旭川電気軌道に車体の引き取りを打診。
これがきっかけで社内で検討した結果、復元することになったのです。
当初は、外観だけを復元する計画でしたが、「せっかくなら走らせたい」という声が社内で上がり、4年後(2026年)の創業100年事業と位置づけ、解体寸前の状態から蘇らせる挑戦が始まりました。

レストアに際しては困難の連続であったともいわれ、詳しくは旭川電気軌道「MR430特設ページ」で紹介されていますが、車体の9割を新品に作り替えた他、外板を貼るためのリベット(約3000本)も新たに打ち直しています。
一方で、エンジンは腐食があまり進んでいなかったことや一部補修部品が入手不可能であるため、可能な限りの洗浄や調整を実施するにとどめています。
このため、いつ壊れるか分からない状態で、過度な走行は出来ないとのこと。
実走行も今後は基本的に特別ツアー催行(予定)時のみになるそうで、デリケートな車両であるともいえましょう。

今回のレストアに際し、協力した企業は15社、整備に携わった延べ人数は約1,000人、レストアにかかった時間は約8,000時間(1日8時間労働で計算)と、多くの方々や企業の協力で実現しました。
そして、このレストア事業は、観光庁の補助事業「地域一体となった観光地の再生・観光サービスの高付加価値化事業 交通連携型」を活用していることにも注目。
今後、地域PRや地域活性化のツールとしての活躍も期待されます。

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