西鉄高速バス株式会社 19年の歴史に幕

夜行バス,昼行高速バス

西鉄高速バス「さぬきエクスプレス福岡号」<br />
粒江PAにて

2018年度も、まもなく終わり。
新年度に合わせて、各地で路線バス・高速バスのダイヤ改正や新設・休廃止の動きが相次いでいます。
そんな中、2018年度末の2019(平成31)年3月31日もって19年間の歴史に幕を閉じるバス会社があります。
そのバス会社とは・・・福岡県福岡市に本社を置く高速バス専業会社西鉄高速バス株式会社です。

西鉄高速バス 本社
西鉄高速バス 本社

設立は2000(平成12)年4月6日。
19年間という月日は、バス会社の歴史としては短い部類に入りますが、この間、様々な施策を実施し、中には全国的に注目を集めたものもありました。
そこで、今回は西鉄高速バスの19年間の歴史を簡単に振り返ってみたいと思います。

来たる乗合事業の規制緩和に向けて・・・

先述の通り、西鉄高速バス株式会社は2000(平成12)年4月6日に設立されました。
この頃のバス事業は、来たる規制緩和で競争激化が予想されるといわれており、高速バス事業における迅速な経営判断と競争力強化が新会社設立の最大の目的でありました。

会社が設立されて最初に行われたのは、西日本鉄道(以下:西鉄)本体が運行していた一部路線の移管でした。
2000(平成12)年7月1日に福岡~佐世保線「させぼ号」・福岡~伊万里線「いまり号」(現在は運行から撤退)・福岡~ハウステンボス線「ハウステンボス号」(現在は「させぼ号」の一系統)の運行を移管した他、同年7月20日には北九州(小倉)~久留米線の運行を移管します。

西鉄高速バス「いまり号」 4555
福岡~伊万里線「いまり号」

この頃、西鉄では福岡市で成果を上げた「100円バス」の思想を高速バス運賃にも取り入れ、利用者が見込める福岡~小倉線や福岡~直方線など9路線でキリの良い「1,000円運賃」「1,500円運賃」を導入、翌年の2001(平成13)年には、福岡~熊本線「ひのくに号」で「2,000円運賃」を導入します。(現在はいずれも値上げ。)

翌年の2001(平成14)年1月21日には、福岡~鹿児島線「桜島号」・福岡~宮崎線「フェニックス号」など11路線の管理受託を始める他、福岡・北九州の両高速自動車営業所の管理を受託します。
高速路線の新規開拓が始まったのもこの頃からで、2001(平成13)年3月1日にはサンデン交通と共同で福岡~下関線「ふくふく天神号」の運行を開始した他、2002(平成14)年7月19日にはサンデン交通と共同で北九州(小倉)~小野田・宇部線を1年間の試験運行として運行を開始、2004(平成16)年3月20日には福岡~鳥栖線の運行も開始(鳥栖支社を新設し西鉄バス佐賀へ管理委託、現在は廃止)します。
一方で、不採算路線の撤退・廃止も行われ、2002(平成14)年3月31日には福岡~ハウステンボス線「ハウステンボス号」が廃止された他、福岡~伊万里線「いまり号」の運行からも撤退します。

西鉄高速バス「ふくふく天神号」 3032
福岡~下関線「ふくふく天神号」

自社直営の夜行高速路線も運行を開始

2005(平成17)年~2006(平成18)年には、福岡~大分線「とよのくに号」(スーパーノンストップ便)を段階的に西鉄観光バスへ移管されます。(その後、西鉄高速バスへ再移管→西鉄本体からの管理委託路線に変更。)
これまでは九州島内での展開が主でしたが、2007(平成19)年、ついに本州方面へ進出します。
2007(平成19)年7月1日、同社としては初の本州方面夜行高速路線である福岡~高松線「さぬきエクスプレス福岡号」を四国高速バスと共同で運行を開始。
その翌年の2008年(平成20)年6月6日には、伊予鉄道と共同で福岡~松山線「道後エクスプレスふくおか号」の運行を開始する他、2010(平成22)年7月16日には三重交通と共同で福岡~三重線「お伊勢さんエクスプレス福岡号」の運行も開始します。(現在、福岡~高松線と福岡~松山線は運行から撤退。福岡~三重線は廃止。)

西鉄高速バス「さぬきエクスプレス福岡号」 3175
福岡~高松線「さぬきエクスプレス福岡号」

西鉄高速バス「さぬきエクスプレス福岡号」 3134
福岡~松山線「道後エクスプレスふくおか号」

西鉄高速バス「お伊勢さんエクスプレス福岡号」 4101
福岡~三重線「お伊勢さんエクスプレス福岡号」

また、2009(平成21)年秋には、福岡~鹿児島線「桜島号」の夜行便が西鉄高速バス直営として移管されるなど、2005(平成17)年からの5年間は、夜行路線の拡充が印象に残る期間でした。

日本最長夜行高速バス「Lions Express」の誕生と廃止

2011(平成23)年は、同社にとって大きな年であったかもしれません。
4月13日には、福岡~宮崎線「フェニックス号」の大幅ダイヤ改正に伴い、西鉄本体運用分とは別に直営便として新規参入する他、11月21日には北九州(小倉)~久留米線の運行を西日本鉄道の管理委託に変更されます。
福岡~宮崎線「フェニックス号」に3列・4列混合シート「セレクトシート」が登場したのも、この時でした。

西鉄高速バス「フェニックス号」 9134
福岡~宮崎線「フェニックス号」

そして、年末の12月8日、福岡~横浜・池袋・大宮線「Lions Express」(ライオンズエクスプレス)を西武観光バスと共同で運行を開始します。

西鉄高速バス「Lions Express」 8529
福岡~横浜・池袋・大宮線「Lions Express」 暫定車両

西鉄高速バス「Lions Express」 8546
福岡~横浜・池袋・大宮線「Lions Express」 専用車両

営業終了直前の運行距離約1,150kmは、西鉄が運行する「はかた号」(福岡~東京線)を抜き、日本最長を誇っていました。
この路線が開設された最大の目的は、いうまでもなく旧高速ツアーバス対策。
トイレ付き4列シートという簡素な装備と運賃の安さが特徴で、LCCが台頭するまではそれなりの乗車率を維持していましたが、旧高速ツアーバスの新高速バス制度への移行が決まったことと、LCCの台頭などで利用者数が伸び悩んだことから、一定の役目を終えたとして2015(平成27)年5月16日をもって運行終了となりました。
運行最終日に多くのバスファンが発着地などに集まって別れを惜しんだのは記憶に新しいところです。

本社移転と宮崎夜行復活、そして解散へ・・・

2013(平成25年)4月1日、福岡~三重線「お伊勢さんエクスプレス福岡号」の運行から撤退します。(路線自体も2014年1月5日をもって廃止。)
同日、福岡~宮崎線「フェニックス号」の西鉄本体担当分と、福岡~鹿児島線「桜島号」の昼行便が直営便として西鉄本体から移管されます。(但し、1往復ずつ本体担当便あり。)
これにより、福岡~南九州間2路線は、夜行便を含む殆どの便が西鉄高速バス担当となります。

西鉄高速バス「桜島号」 6020
福岡~鹿児島線「桜島号」昼行便

2015(平成27)年7月下旬には、西鉄高速バス株式会社本社・福岡支社が福岡市中央区那の津4丁目から同那の津3丁目へ8番15号へ新築移転します。
竣工直後に特別の許可を得て見学させていただいたのも、今となっては良い思い出です。

西鉄高速バス 本社
西鉄高速バス 本社

2016(平成28)年4月22日には、西鉄高速バス単独による「福岡~延岡・宮崎夜行線夜行便」を運行開始します。
現在は宮崎交通との共同運行路線になっていますが、「フェニックス号」を補完する路線として、主に週末や繁忙期限定で運行しています。

西鉄高速バス「福岡~延岡・宮崎夜行線」 4303
「福岡~延岡・宮崎夜行線」

その後は目立った動きがありませんでしたが、2018(平成30)年8月2日に西鉄高速バス株式会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせがリリースされます。

⇒ 『完全子会社(西鉄高速バス株式会社)の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ』(西鉄公式サイト)

プレスリリースによると、"安定的な高速バス乗務員の確保によるさらなる安全性の向上、および高まる高速バス需要に対し柔軟な要員配置をすることを目的"としていますが、いうまでもなく、今回の吸収合併・吸収分割は昨今の深刻な乗務員不足が背景としてあることには間違いないでしょう。

以上、西鉄高速バス株式会社の19年間を簡単に振り返ってみました。
色々とありましたが、私が印象に残っているのは、やはり「さぬきエクスプレス福岡号」の運行と日本最長夜行高速バス「Lions Express」の運行でしょうか。
「さぬきエクスプレス福岡号」については、運行初便に乗車した時に「ようやく子会社も本州方面夜行を運行する様になったかぁ・・・。」と感慨に浸ったものです。
そして、日本最長夜行高速バス「Lions Express」は、「はかた号」を補完する役割だったとはいえ、フラッグシップ路線ならではの「風格」を持っていたのでは?と、今となっては思います。
かつての「西鉄ライオンズ」のロゴを配した専用車は、シンプルな装備ながらも「また乗ってみたい」と思わせる雰囲気を醸しだ出していた車両でもありました。
残念ながら、今となっては見ることも出来ませんが、当時の良い思い出として今でも脳裏に焼き付いています。

2019(平成31)年4月1日からは、現在の本社・福岡支社が「西日本鉄道福岡高速自動車営業所」として、北九州支社が「西鉄バス北九州株式会社」に引き継がれ、再出発します。
一部の車両では「Groupロゴ」の撤去及び社名表記の変更も終えている他、新体制への移行準備も終盤に入っているそうです。
新体制による運行、そして新カラー「HARMONY」の本格投入と、4月以降の西鉄ハイウェイバスに目が離せませんね。

19年間ありがとうございました。
そして、新体制下でも安全第一の運行と快適なサービスの提供を是非ともお願いします!


西鉄高速バス「桜島号」夜行便 4012
福岡~鹿児島線「桜島号」夜行便


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