近鉄バス「ひなたライナー」(宮崎特急線) 運行終了直前乗車記
現在も長距離夜行高速バス休廃止の動きは続いておりまして、最近では、京浜急行バスと京都交通が運行する東京~亀岡・福知山・舞鶴間夜行高速バス「シルフィード号」の運行休止が発表されています。
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京都交通株式会社:information:東京線(シルフィード号)運行休止のお知らせ
そんな中、今年2019(平成31)年2月28日、またひとつ夜行高速バスが運行を終了しました。
近鉄バスの夜行高速バス「ひなたライナー」(京都・大阪・神戸~宮崎間 通称:宮崎特急線)です。
近鉄バスといえば、関西から全国各地へ夜行高速バスを運行していますが、残念ながら九州方面については運行終了や共同運行会社の撤退が相次いでおり、今回の「ひなたライナー」の運行終了で、関西と南九州を結ぶ夜行高速バスは皆無となってしまいました。
実は先日、運行終了直前の「ひなたライナー」に乗車。
今回はその時の模様をご紹介します。
目次
競合交通機関の台頭に乗務員不足が追い打ちをかけた格好!?
まずは、近鉄バスが公表した文章からご紹介。—–(ここから)—–
日頃より近鉄高速バスをご利用いただきましてありがとうございます。
この度、京都・大阪・神戸~延岡・宮崎線(ひなたライナー)について、2019年2月28日(木)の出発便をもちまして、運行を終了させていただくことになりました。
当路線は、2016年まで運行しておりました『京都・大阪・神戸~都城・宮崎線』(おひさま号)を延岡駅前経由に変更し、割引運賃の導入等により新たな需要の開拓に取り組んでまいりました。しかし、LCC(格安航空会社)の就航や、燃料費高騰、乗務員不足といった様々な内外の環境の変化もあり、今後の収支改善が見込めず、運行を継続することが困難な状況となりました。
ご利用のお客様には、大変ご迷惑をお掛けいたしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
—–(ここまで)—–
運行終了の理由は上記文章をお読みいただくとして、閑散期・通常期の乗客の少なさは以前から指摘されていましたし、新幹線+「B&Sみやざき」の利便性向上やLCC「peach」の就航などで路線自体の存続が危ぶまてれいたのは事実だと思います。
しかし、期間限定で割引運賃の導入した際は、週末を中心にそれなりの数の乗客が利用していたという話も聞いていましたので、「閑散期・通常期に乗らないから」という理由だけで、しかも僅か2年という短い期間で「運行で終了する」という決断をするのかどうか・・・。
やはり、「乗務員不足」という、全国のバス会社が頭を抱える深刻な問題が追い打ちをかけたのでは?という見方が一般的だと私は考えます。
尚、近鉄バスは、親会社の近畿日本鉄道がバス事業を直営していた頃から関西~宮崎間の夜行高速バスを運行しており、今回が3度目の運行終了となります。
変遷については、以下の過去記事をご覧いただけると幸いです。
運行を終了する路線とは思えない程の盛況ぶり
やって来たのは、京都駅八条口を出たすぐ目の前にある「京都駅八条口F3のりば」。宮崎行き「ひなたライナー」はこちらから発車します。
発車時間が18時25分と早いこともあり、夕食はバス車内で済ますことに。
京都駅構内の売店などで飲食物を購入し、しばしバスを待ちます。
暫くすると、宮崎行き「ひなたライナー」が入線。
乗車改札が始まります。
写真のLED表示が見られるのも、あと数日間のみです。(現在は見ることが出来ません。)
乗車改札を受け、車内に入ります。(車内はイメージです。)
車内は、3列独立シート27人乗りの夜行高速仕様。
青系のシートモケットが目立ちます。
トイレ入口横の座席(一般的には5B席、近鉄バスでは13番席)がフリースペースとなっており、進行方向左側座席からのトイレへの出入りがしやすくなっています。
各座席には足置き台、レッグレスト、腰当てクッションの他、携帯電話やスマートフォンの充電に便利なコンセントを完備。
窓側座席には、通路を仕切るカーテンも装備されています。
残念ながら、以前実施されていたドリンクサービスは廃止されましたが、12時間以上を走行する夜行バスの設備としては十分なのかもしれません。
18時25分。私を含めて10名程の乗客を乗せた「ひなたライナー」は、定刻に京都駅八条口を発車します。
鴨川西ランプから阪神高速京都線~第2京阪道路~近畿自動車道~阪神高速東大阪線~同環状線~同守口線という複雑な経路を経て、約1時間で大阪駅前(地下鉄東梅田駅)に到着。
こちらでも10名以上の方が乗車し、19時21分に発車します。
大阪からは、阪神高速環状線~同東大阪線~同大阪港線~同湾岸線という、これまた結構複雑なルートを辿り神戸へ。
新港ランプを流出し、20時02分、最後の乗車停留所である三宮バスターミナル(ミント神戸)に到着します。
こちらでは、少々早く到着したこともあり、10分程時間調整を兼ねて停車。
残りの乗客を乗せ、27席満席になったバスは、20時15分に三宮バスターミナル(ミント神戸)を発車します。
三宮バスターミナル(ミント神戸)を発車後、交代乗務員から自己紹介と各種案内がマイクを通じて行われます。
その間、バスは阪神高速神戸線から同北神戸線へ。
布施畑ジャンクションまで走行した後は、神戸淡路鳴門自動車道を三木ジャンクションまで走行し、その先は九州へ向けて山陽自動車道をひた走ります。
バス車内は、通路カーテンを閉めてスマートフォンを操作する乗客やシートを倒して眠る乗客など様々。
それぞれが思い思いの時間を過ごしています。
途中休憩は1箇所のみ 目覚めると長閑な風景が一面に・・・
神戸三宮を発車して約1時間半後の21時30分、バスは唯一の開放休憩場所である山陽自動車道龍野西サービスエリアに到着します。こちらでは15分間の開放休憩となりました。 「ひなたライナー」は途中、数か所のサービスエリアに停車しますが、乗客が外へ出られるのはこの龍野西サービスエリアのみ。
他の停車場所は乗務員交代及び車両点検のための停車で、乗客は外へ出ることが出来ません。
貴重な開放休憩ということもあり、殆どの乗客が外に出てトイレや洗顔、買い物などを済ませていました。
で、私はというと・・・
トイレと洗顔を素早く済ませ、いつもの如くWEB用の写真撮影です(笑)。
車内出入口付近には、「高速バスガイドライン」に基づく運行案内が掲げられていました。
21時45分、乗客が全員揃ったところでバスは龍野西サービスエリアを発車。
その25分後の22時10分、車内の灯りが消され、消灯となりました。
バスはその後、小谷SA、美東SA、別府湾SAで乗務員交代を挟みながら九州宮崎へ。
眠っていて分からなかったのですが、関門橋は夜中の2時半前後に通過したのではないのでしょうか。
翌朝5時43分 東九州自動車道北川インターを流出。
ここから暫くは国道10号を走行します。
5時54分、車内灯が灯され起床。
交代乗務員から、延岡到着の案内が伝えられます。
6時03分、延岡駅前に到着。
併せて、最後の乗務員交代も実施されました。
こちらでは半数の14名が下車。
写真はありませんが、カーテン越しから外を見てみると、新しくなったバスのりばに停車していました。
機会があれば、新しくなった延岡駅前のバスのりばもじっくり見てみたいですね。
延岡駅前を発車したバスは、延岡インターから再び東九州自動車道へ。
ここから先は、門川バスストップ、日向インター、西都インター、国富バスストップ、宮崎バスストップと、高速道路上のバス停及びインターチェンジ併設のバス停に停車していきます。
窓のカーテンを開けてみます。
長閑な風景が一面に広がります。
7時27分 バスは宮崎西インターを流出。
週明けの朝のラッシュに巻き込まれながらも、バスは順調に宮崎市中心部へ入ります。
車内最前部に掲げられている区間表示も、もう見られないのですね・・・。
7時45分、カリーノ宮崎前で数名が下車。
宮崎駅を眺めながらバスは南下し、7時56分、定刻よりも20分程早くバスは終点の宮交シティに到着しました。
宮交シティのバス停には、「ひなたライナー」の時刻表と運行終了を告げる掲示物が。
間も無く運行が終わってしまうのだなぁ・・・と、掲示物を見ながらしばし感傷に浸っていました。
4度目の復活はありうるのか?
以上、近鉄バス「ひなたライナー」の乗車記をお届けしました。同社の宮崎特急線の乗車は、2016年8月に乗車した前身の「おひさま号」以来、約2年半ぶりの乗車となります。
今回は、京都からの乗車となりましたが、所要6時間~8時間程度の路線で見られる様な「バタバタ感」がなく、乗車後消灯までの時間及び起床後到着までの時間に余裕があってのんびり出来たことから、思っていた程の疲れを感じずに済んだのが個人的には良かったです。
一方で、今回の移動中の車内で考えていたのが、「4度目の復活はあるのか?」ということでした。
色々と考えたのですが、
- 関西~宮崎間においては、運賃が高速バスとほぼ同等のフェリー「宮崎カーフェリー」が就航しており、一定のシェアを得ていること
- LCC「peach」の就航で、時期によっては高速バスよりも遙かに安く移動出来ること
- バス業界の「深刻な人手不足(乗務員不足)」の解決の見通しが立っていないこと(むしろ深刻化していること)
- 業界全体の流れとして、乗務員の拘束時間が長く人数も割かれる割に利益率が低い「長距離夜行高速バス」から、1人の乗務員で複数往復運行できる「短距離・中距離高速バス」へ重きを置く傾向にあること
- 「ひなたライナー」が廃止された後でも、乗り継いで関西~宮崎間を(陸路で)移動する手段が複数確立されていること(新八代での新幹線乗り継ぎや、熊本or大分での夜行高速バス別路線への乗り継ぎ など)
ただ、これも、今後の景気動向や業界を取り巻く環境の変化、さらには事業者側の経営判断によっては、もしかすると「4度目の復活」というのもありうるかもしれません。
バブル期に運行を開始した「あおしま号」から「おひさま号」、そして「ひなたライナー」と、トータルで約20年間運行を続けて来た関西~宮崎間の夜行高速バスは、2019(平成31)年2月28日をもってその役目を終えました。
特に、「おひさま号」以降は事実上近鉄バス1社が担っていたわけで、まずは「20年間お疲れ様」という言葉を贈りたいと思います。
先述の通り、現時点で「4度目の復活」はかなり難しいと考えますが、陸上交通機関ならではメリットもある訳ですし、またいつか何らかの形での復活を願いたいものです。
【乗車データ】
- 乗車日:2019/02/24
- 乗車区間:
京都駅八条口→宮交シティ - 運行会社:近鉄バス
- 車両:日野/セレガHD(QPG-RU1ESBA)
- 年式:2012年式
- 所属:稲田営業所
- 社番:2256
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