鹿児島交通加世田バスターミナルを見てみる
かつては加世田市という独立した「市」でしたが、2005年の市町村合併で南さつま市加世田となり、現在は南さつま市の市役所がこの地に置かれています。
この加世田に、かつて存在した鉄道駅の雰囲気を残すバスターミナルがあることをご存知でしょうか。
それが、今回ご紹介する「鹿児島交通加世田バスターミナル」であります。
昔は南薩地区の交通の要所でもあった加世田。
実は2017年2月に枕崎を訪問した帰路で加世田を通り過ぎたのですが、その時から加世田のバスターミナルの存在について気になっていました。
今般、「西鉄バスファン有志による貸切乗車会」(後日ブログにてご紹介予定)に参加すべく九州へ訪問することになり、「それならば折角なので加世田のバスターミナルを訪問しよう!」ということで、5月下旬の平日に加世田を訪問しました。
「鉄道駅の雰囲気を残すバスターミナル」とは一体どんなバスターミナルなのでしょうか。
目次
鹿児島交通鉄道線の要所であった加世田駅と跡を継ぐバスターミナル
加世田を語る上で欠かせないのが、かつて南薩地区の住民の足として活躍していた「鹿児島交通鉄道線」です。歴史は大正時代まで遡ります。
1914年(大正3年)4月に、当時の南薩鉄道によって伊集院~伊作間が開業します。
その翌月には伊作~加世田間が開業しますが、枕崎まで延伸、全線開通したのは17年後の1931年(昭和6年)になってからのことになります。
その後、支線として万世線(加世田~薩田万世間)が開業した他、当時別会社であった薩南中央鉄道(後に南薩鉄道に吸収合併)によって知覧線(阿多~知覧間)も開業し、加世田は南薩地区の鉄道の要所として機能します。
戦後暫くして、1962年(昭和37年)には万世線(加世田~薩田万世間)が廃止。
その2年後の1964年(昭和39年)には、南薩鉄道が三州自動車と合併し鹿児島交通に社名を変更。
南薩鉄道枕崎線・知覧線は、「鹿児島交通鉄道線」(枕崎線・知覧線)という扱いになります。
しかしながら、沿線人口の減少や自動車の普及に加えて、沿線から鹿児島に向かう客も同社のバスに流れるようになったことで、利用客は次第に減少していきます。
1965年(昭和40年)には知覧線を廃止。
その後も貨物輸送の廃止など合理化を進めますが、1970年代に入ると車両や設備の老朽化も著しくなったことから、1982年(昭和57年)12月に鹿児島交通は鉄道廃止の方針を打ち出します。
労働組合や地元は廃止に反対しましたが、翌年1983年(昭和58年)6月の豪雨で大きな被害を受けたことが最後のとどめを刺す形になってしまいました。
同年7月に日置~加世田間は運行を再開したものの、伊集院~日置間と加世田~枕崎間は復旧しないまま、1984年(昭和59年)3月18日に鉄路は廃止されました。
鉄道廃止後、加世田駅の跡地に「鹿児島交通加世田バスターナル」が整備されます。
同社のバス営業所(加世田営業所)を兼ねており、敷地内には、石造りの元倉庫を利用した南薩鉄道記念館の建物がある他、機関車(DD12と2号機関車(現在は4号機関車に置き換え))が屋外に展示されるなど、鉄道時代の面影を残す施設の一つにもなっています。
遠い加世田までの道のり
札幌から加世田までどういったルートで移動するのか・・・。一番早いのは「飛行機乗り継ぎ+リムジンバス」で移動する方法なのですが、そう簡単な方法では移動しないのが私の常。
今回はこの様な方法で加世田まで移動しました。
まずはJR快速「エアポート」とスカイマークで神戸空港へ。
神戸空港から神戸新交通「ポートライナー」で三宮まで移動した後、神戸三宮からは両備ホールディングス「リョービエクスプレス神戸」で岡山まで移動します。
同社の昼行高速用車両としては唯一の存在であるスーパーハイデッカーの三菱エアロクイーンⅠ(KL-MS86MP)が充てられていました。
岡山からは、同じく両備ホールディングスの夜行高速バス「ペガサス号」(岡山・倉敷~北九州・福岡)で福岡へ移動。
専用車両の0511号車(三菱エアロクイーンⅠ KL-MS86MP)が充てられていました。
最近、この路線・車両に乗車する機会が多いです。(写真はイメージです。)
福岡でひと休みして、福岡からは西鉄高速バス「桜島号」昼行各停(鹿児島空港経由)便で鹿児島空港へと向かいます。
鹿児島市内まで乗り通しても良かったのですが、時間のロスを考慮して鹿児島空港で乗り換えることにしました。
3列スーパーシート(2+1配列)で約4時間、のんびりと高速バスの旅を堪能します。
AT仕様の日産PKG-RA274RBN(西工02MC C-1)が充てられていました。
そして、鹿児島空港からは鹿児島交通のリジジンバス「鹿児島空港~加世田・枕崎線」で加世田へと向かいます。
年代ものの日野セレガFD(U-RU2FTAB)が充てられていました。
鹿児島空港から加世田までは約1時間15分。
この車両で九州自動車道を走破する様は、なかなかのものでございました。
ということで、札幌から乗り継ぐこと丸一日で鹿児島県南さつま市加世田に到着しました。
東京羽田経由の飛行機乗り継ぎで移動すれば、乗り換え時間を考慮しても7~8時間で到着出来るのですが、まあ、今回の移動手段についてはのりもの好きの醍醐味ということでご了承を。(笑)
それにしても、札幌から加世田へは本当に遠いですね。
鉄道時代の面影を残す加世田バスターミナル
鹿児島交通加世田バスターミナルの所在地は、南さつま市加世田本町。先述の通り、鹿児島交通加世田駅の跡地に整備されました。
町の中心街からも比較的近く、バスターミナルの隣には地元資本の大型ホームセンターや大手家電量販店があります。
かつての鉄道駅であることや、バス営業所も併設していることから、敷地の広さはそれなりに広いです。
構内には、かつて活躍していた蒸気機関車やディーゼル機関車が展示されている他、一般の方は見ることが出来ませんが、バス営業所の検車場内にはキハ100形が保存されています。
バスターミナルの待合所です。
コインロッカー、乗車券販売窓口も設置されており、待合所奥には鹿児島交通加世田営業所の事務所と点呼場があります。
加世田バスターミナルから発着する路線は、鹿児島交通の直営路線8路線10系統と、南さつま市コミュニティバス「つわちゃんバス」4路線の計12路線14系統。
12路線14系統を2つののりばで捌いています。
但し、南さつま市コミュニティバス「つわちゃんバス」については、本数が少ないため、利用の際は注意が必要です。
1番のりばは、鹿児島空港行きリムジンバスと鹿児島線(新幹線リレー特急・準急・普通)が、2番のりばはそれ以外のなんてつ線(伊集院~加世田~枕崎)、知覧線などが発着しています。
保存車両を横目に発車を待つ鹿児島交通なんてつ線(枕崎行き)です。
加世田で見かけた鹿児島交通の路線バスを少しご紹介しましょう。
かつての鉄道がルーツのなんてつ線(枕崎~加世田~伊集院)です。
いずれの車両も、関西の公営事業者からやって来たいすゞキュービックLV前後扉仕様です。
大坂を経由して鹿児島~加世田間を結ぶ普通鹿児島加世田線です。
関東の事業者からやって来たいすゞキュービックLV前中扉ツーステップ仕様です。
南さつま市コミュニティバス「つわちゃんバス」の専用車両です。
専用カラーを纏っていますが、ノンステップバスからツーステップバスまで、車種は様々です。
因みに、営業所エリア内「つわちゃんバス」駐車スペースの前(バスターミナル入口横)には、サイクルステーション「りんりんかせだ」があります。
自転車20台を完備しており、1回200円~1,000円(電動アシスト・クロスバイク)と格安で借りることが出来ます。
鹿児島交通リムジンバス「鹿児島空港~加世田・枕崎線」で活躍する三菱エアロバススタンダードデッカー(KC-MS829S)です。
九州自動車道経由で鹿児島空港~加世田・枕崎間を1時間15分~45分で結びます。
南薩地区から飛行機を利用するのに便利な路線で、利用客もそれなりに多い印象を受けました。
バスターミナル待合所隣には、1994年(平成6年)に開設された「南薩鉄道記念館」があります。 館内見学は有料となっており、大人200円、小人100円で見学することが出来ます。
残念ながら館内を写真で紹介することは出来ませんが、かつて使用されていた縦長の駅名標や、現役当時のダイヤグラム、写真、鉄道関連備品、伊集院~加世田間の建設時に交付された内閣総理大臣西園寺公望名の鉄道営業免許状(原文)など、廃線鉄道ファンにとっては「宝」であろうものが数多く展示されています。
但し、この建物にはエアコンが完備されてないために、特に夏場の見学の際には熱中症などに十分ご注意下さい。
毎週水曜日(祝祭日の場合は翌日)と年末年始(12月31日~1月1日)が休館日となっており、営業時間は6月~8月が10:00~18:00、それ以外の期間は10:00~17:00となっております。
入館券は、鹿児島交通加世田営業所窓口(待合所内)で販売しております。
というわけで、鹿児島交通加世田バスターミナルを紹介しました。
今回初めて訪問しましたが、鉄道時代の面影を残しつつもバスターミナルとして加世田地区の交通の要所にもなっている点に、個人的にはツボにはまりました。
訪問日が平日ということもあるのでしょうが、バスステーションを発着するバスも、空港行きや鹿児島行き準急はそれなりに乗車している印象を受けました。
鉄道時代の面影を残すバスターミナルは全国いくつかありますが、個人的には大分交通高田バスターミナルに次いで「一度は見ておくべきバスターミナル」だと感じました。
特に、「南薩鉄道記念館」は、廃線鉄道ファンであれば一見の価値があると思います。
一地方のバス会社が鉄道時代の記念館を運営していること自体、ある意味貴重であり、ファンにとっては感謝すべきなのでしょうが、しいていえば、夏場の湿気や資料価値などを考慮すると、展示物の保存状態を保つためにもエアコンは完備した方が良いのではと感じました。
ともあれ、「また来たい!」と思わせる鹿児島交通加世田バスターミナルの訪問でした。
残念ながら、今回は市内コミバスに乗車する時間が取れなかったのですが、次回訪問時には是非とも乗車してみたいですね。
【おまけ】珍しい車両で加世田から鹿児島へ、そして福岡へ
バスターミナルでしばしバスを眺めていると・・・写真のバスが入線して来ました。
なんと、日産シャーシの西工製ノンステップバス(日産KL-UA272KAM改 西工96MC B-1ノンステップ)ではありませんか。
関東の事業者から10台ほどが鹿児島交通にやって来たという話は聞いていましたが、鹿児島市内をメインに活躍しているという話だっただけに、このバスを見た時は正直「えっ!!!」となりました。
聞くところによると、このバス、加世田17時10分発の準急便で鹿児島へ戻るとのこと。
というわけで、このバスで鹿児島へ移動することにしました。
加世田から鹿児島中央駅までは、準急便で1時間30分程かかります。
平日の夕方ということもあってか、通学やパートタイム勤務帰りの方で座席はほぼ埋まります。
夕暮れの風景を堪能しながら、バスは鹿児島へと進みます。
停留所に停車する度に乗客も徐々に少なくなっていきますが、谷山あたりを過ぎると、今度は鹿児島中心部まで向かう乗客で再び混雑するなど、地方都市を走るバスならではの光景を伺い知ることが出来ました。
驚いたのは、加世田から谷山あたりまで乗車していた高校生が5人程いたこと。
谷山~加世田間を通学している高校生がいること自体驚きなのですが、逆にいうとこのバスが無ければ通学手段も断たれるわけで、地方の路線バスを考える点で見過ごせない光景であることを改めて感じた次第です。
鹿児島でひと休みした後は、西鉄高速バス「桜島号」夜行便で福岡へ戻ります。(写真はイメージです。)
お馴染みの4012号車(三菱KL-MS86MP 西工02MC SD-1)です。
週末ということもあってか、車内は若者を中心に満席。
「桜島号」夜行便の乗車率の高さは相変わらずの様です。
疲れもあってか、鹿児島中央駅発車後すぐに夢の中へ。
気が付くとバスは博多バスターミナル到着前でした。
終点の西鉄天神高速バスターミナルで慌ただしく下車した私は、撮影と身支度を済ませて、今回の九州訪問のメインである「西鉄バスファン有志による貸切乗車会」の集合場所へと向かうのでありました。
※「西鉄バスファン有志による貸切乗車会」の模様については、次回ご紹介します。
【乗車データ】
- 乗車日:2017/05/25
- 乗車区間:
神戸三宮(神姫バスターミナル)→岡山駅西口 - 運行会社:両備ホールディングス
- 車両:三菱/エアロクイーンⅠ(KL-MS86MP)
- 年式:2001年式
- 所属:両備バスカンパニー岡山営業所
- 社番:1091
- 乗車日:2017/05/25
- 乗車区間:
岡山駅西口→西鉄天神高速バスターミナル - 運行会社:両備ホールディングス
- 車両:三菱/エアロクイーンⅠ(KL-MS86MP)
- 年式:2005年式
- 所属:両備バスカンパニー岡山営業所
- 社番:0511
- 乗車日:2017/05/26
- 乗車区間:
博多バスターミナル→鹿児島空港国内線ターミナル - 運行会社:西鉄高速バス
- 車両:日産/PKG-RA274RBN(西工02MC C-1)
- 年式:2009年式
- 所属:福岡支社
- 社番:6019
- 乗車日:2017/05/26
- 乗車区間:
鹿児島空港国内線ターミナル→加世田 - 運行会社:鹿児島交通
- 車両:日野/セレガFD(U-RU2FTAB)
- 年式:1993年式
- 所属:加世田営業所
- 社番:1085
- 乗車日:2017/05/26
- 乗車区間:
加世田→鹿児島中央駅 - 運行会社:鹿児島交通
- 車両:日産/KL-UA272KAM改(西工96MC B-1ノンステップ)
- 年式:2003年式
- 所属:鹿児島営業所
- 社番:1827
- 乗車日:2017/05/26
- 乗車区間:
鹿児島中央駅前(南国交通バスターミナル)→西鉄天神高速バスターミナル - 運行会社:西鉄高速バス
- 車両:三菱/KL-MS86MP(西工02MC SD-1)
- 年式:2009年式
- 所属:福岡支社
- 社番:4012
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