第12回 日本モビリティ・マネジメント会議(jcomm) 参加レポート

一般路線バス,交通系セミナー・勉強会・イベント,鉄道

去る2017年7月28日から29日の2日間に渡って、『第12回 日本モビリティ・マネジメント会議』(以下:jcomm)が福岡市のアクロス福岡にて開催されました。

第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その1

過度に自動車に頼る状態から公共交通や自転車などを『かしこく』使う方向へと自発的に転換することを促す一連の取り組みを意味する『モビリティ・マネジメント』(以下:MM)
その手法や取り組みが効果的・広範に推進されることを目指して、行政、大学、コンサルタント、市民団体等のMM関係者が一堂に会する会議が、「日本モビリティ・マネジメント会議」であります。

これまで、東京、札幌、京都、別府、福山、八戸、富山、仙台、帯広、松山で開催され、12回目の今回は福岡での開催となりました。
私自身、jcommには3年前の第9回(帯広)から参加しておりまして、今回が4回目の参加となります。

jcommの参加報告については、これまで自身のFacebookにて綴っていましたが、今回は一部のセッションを除きほぼフル参加出来たことから、「参加レポート」という形でこのブログに纏めることにしました。
長文になりますが、備志録としてお読みいただけると幸いです。

開催地企画1「天神・博多のエリアマネジメントとMM戦略」

ここ数年来のjcommでは、本開催の前に「開催地企画」として、ご当地ならではイベントが模様されます。
昨年の松山開催では、道後温泉地域の待ち歩き企画が催されましたが、今年は西日本鉄道(以下:西鉄)の清水自動車事業本部長(We Love 天神委員会 前理事長)を招いての特別講演と、後術の「エアマネジメントとモビリティ」と題したパネルディスカッションが催されました。
第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その2

第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その3

西鉄の清水自動車事業本部長による特別講演では、自身が理事長を勤められていた天神地区のエリアマネジメント推進組織「We Love 天神委員会」の設立のいきさつや取り組み内容について説明された後、西鉄が取り組んでいるMM施策について「利便性」「安全性」「情報発信」の項目毎に説明。
最後に西鉄の企業スローガン「まちに、夢を描こう」の意味についての紹介があり、約40分間の講演が終わりました。
西鉄のMM施策については、国交省から表彰を受けた「柏原3丁目」の取り組みや橋本循環バス、高宮循環バスの事例、そして「守りの営業」から「攻めの営業」のきっかけともなった「エコ企業定期券」の事例を紹介されていました。
クロージングセッションの総括でも出ていましたが、トップダウンから地域密着まで、様々な施策を積極的に推し進めている西鉄の姿を改めて知ることが出来たのが収穫でした。

開催地企画2「エアマネジメントとモビリティ」(パネルディスカッション)

清水氏による特別講演のあとは、清水氏を加えてのパネルディスカッションが催されました。
第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その4

タイトルは「エアマネジメントとモビリティ」
コーディネーターとパネリストは、以下の方々でした。

  • コーディネーター:坂井 猛 (九州大学大学院 教授)
  • パネリスト:
    清水 信彦(西日本鉄道株式会社 上席執行役員 自動車事業本部長)
    中嶋 敬介(博多まちづくり推進協議会事務局長、 JR九州事業開発本部企画部担当部長)
    守田 剛 (福岡市住宅都市局都市計画部長)
    八尋 和郎((公財)九州経済調査協会事業開発部長 兼 BIZCOLI 館長)
まずは、エリアマネジメントと関連するモビリティ・マネジメントについて、福岡市と博多駅周辺の現状と事例の紹介がありました。
福岡市の守田氏からは、南区長住地区の事例(ポスティングをはじめとするバス路線周知)や、転入者MM、乗り方教室、バス旅(体験プログラムとの組み合わせ)の紹介があったほか、JR九州の中嶋氏からは、「博多まちづくり推進協議会」の紹介が行われた後、MM取り組みとして、博多駅周辺の放置自転車対策、公共交通利用促進、交通量調査の事例紹介がありました。

これを受けて、天神・博多地区のエリアマネジメントとMMの課題について話が移り、
西鉄清水氏:天神地区では、老朽化したビルの建て替え、再開発にどう対応するのか課題だった。そこでMDC(天神明治通りまちづくり協議会)を設立し、地域まちづくり計画を市に登録。グランドデザインに沿ったまちづくりが行われているかをチェックする仕組みを備えている。
JR九州中嶋氏:新幹線開業に伴う再開発がひと段落した中、今後は地下鉄延伸が博多の街を変える契機にしたい。ただ、具体的にどうするのかついてはこれからの課題。
福岡市守田氏:自転車放置対策(特に啓発)をどうしていくのかが課題。
BIZCOLI館長八尋氏:地下・空間をどう使っていくのか、人口増加に伴う住民の意見をどう取り入れていくのか、特定産業への偏りをどう是正していくのか、屋台の魅力をどう保っていくのかが課題。一方で広域的視点でのまちづくりも必要。福岡市内の極をどうするのかについても考える必要がある。
といった意見を述べられていました。

そして、モビリティの視点からのエリアマネジメントについては、
西鉄清水氏:イベントと絡める施策→目標設定と成果点検→常にブラッシュアップしていく必要がある。都心循環連節バスを核とした交通網の再構築(ピンクバスの事例など)、これに絡めた自家用車の駐車場分散も考えていく必要がある。
JR九州中嶋氏:やはり公共交通との共存が大事なのかなぁと。アクションプランの実行が課題。
福岡市守田氏:MMと自治活動をどう絡めるのかが今後の課題。(柏原3丁目の例など)
BIZCOLI館長八尋氏:特定のイベント時の集中する交通量をどう捌いていくのかが課題。(この発言に対して、西鉄清水氏からは「先日のももち浜花火大会時でも実施した様な、ある程度のマイカー規制が必要なのではないか。」との発言がありました。)
といった意見を述べられていました。

最後に、参加者からの質問タイムとなり、ある参加者から福岡都心連接バス(Fukuoka BRT)に関する質問(というよりクレームチックな意見)が。
「バス停の行き先・経路情報が分かりにくい。」「専用走行帯がなく渋滞で遅延しており、BRTとしての役目を果たしていない。」「キャナルシティ、中州がカバーされていない。」といった参加者からの意見に対して、西鉄清水氏からは「バス停の情報については、数日前に改良に着手したところである。」「連接バスはあくまで試行段階。専用走行帯の設置は是非とも実現したい。」「キャナルシティ、中州については、既に100円循環バスにてカバー済み。ただ、分かりやすいバス車体デザインの導入については社としても考えたい。」といった話をされていました。

一連のパネルディスカッションの話を聞いていて、博多・天神地区のエリアメネジメントとMMの現状・課題を知ることが出来たことが一番の収穫でしたね。
個人的には、やはり天神地区の慢性的な渋滞の解消と、福岡都心循環バスの専用通行帯の設置は、是非とも実現して欲しいところです。

開会挨拶・祝辞・特別講演「九州福岡が目指すゲートウェイの景」

昼休憩を挟み、『第12回 日本モビリティ・マネジメント会議』本編の開催です。
第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その5
JCOMM代表理事で京都大学大学院教授の藤井 聡氏による開会の挨拶、国交省九州運輸局長の佐々木 良氏による祝辞の後、開催地企画のコーディネーターを勤められた九州大学大学院教授の坂井 猛氏による特別講演「九州福岡が目指すゲートウェイの景」がありました。
第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その6
博多の歴史の話から始まり、60年代には商業で行く!と決め、80年代にはアジアに目を向けた開発・整備を進めていった経緯、人口予測の話、更なる国際化を目指して港を天神・博多に続く3つ目の拠点として整備しようと実行中である話、交通網整備・港の整備・まちづくりの課題や今後についての話など、興味深い話を聞くことが出来ました。

JCOMM賞授賞式

特別講演の後は、jcomm賞授賞式です。
国内の様々なモビリティ・マネジメント(MM)についての様々な取り組みや研究の中でも、特に優秀な取り組みや研究をJCOMM実行委員会として選定し、その実現に貢献した個人あるいは団体を表彰するJCOMM賞。
今年は4賞を6団体が受賞されました。
第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その7

第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その8

⇒平成29年度JCOMM四賞の各受賞者についてはこちらを参照願います。

ポスター発表A 、口頭発表ツール展示

jcomm賞授賞式の後は、1日目のポスター発表の時間です。
第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その9

第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その10

第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その11
参加者がポスター発表者と直にコミュニケーションが取れる絶好の機会。
興味のある分野を中心に、数箇所お伺いさせていただきました。
ポスター発表は2日間に分けて実施されますが、今回はメイン会場のすぐ後ろがポスター発表の会場となっており、メイン会場との行き来がしやすかったのが良かったです。

企画セッション「公共交通のリスクマネジメント」(パネルディスカッション)

1日目のポスターセッションの後は、企画セッションpart1の時間です。
「公共交通のリスクマネジメント」というタイトルでパネルディスカッションが行われました。
第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その12
コーディネーターとパネリストは、以下の方々でした。

  • コーディネーター:溝上 章志(熊本大学大学院先端科学研究部 教授)
  • パネリスト:
    本田 和久(国土交通省九州運輸局交通政策部 部長)
    中島 英明(九州旅客鉄道(株)新幹線部工務課 課長)
    河合 賢一(九州産交バス株式会社 取締役・管理本部長)
    若菜 千穂(NPO法人いわて地域づくり支援センター 事務局長
ご存知の通り、昨年2016年4月に発生した熊本地震では、九州新幹線の脱線や高速道路の通行止めなど、地域間輸送に大きな被害をもたらしました。
復旧作業は予想を上回る速さで進んだものの、支援物資や支援者の輸送、地域経済などに大きな影響が発生しました。
一方で、車庫の被害や道路の通行止めにより、路線バスや市電は運休せざるを得ないなど、域内輸送にも影響を及ぼし、一般道路での慢性的渋滞のために、地震直後だけでなく、復旧の過程でもバス輸送は遅延が発生。
現在でも利用客数が元に回復しないなど、熊本地震の影響は続いています。
この企画セッションは、熊本地震直後の公共交通の被害把握と復旧方策に尽力された関係者の復旧経緯や、東日本大震災後の公共交通復旧に尽力されたNPO法人の復旧経験を紹介するとともに、災害に備えた公共交通機関のリスク管理のあり方と需要回復のための方策などについて議論するというものでした。

最初に、国交省九州運輸局本田氏から、熊本地震発生時の状況、各モードの初動対応、物資輸送ルートの確保、バスルートの迂回運行、代替輸送確保(JR豊肥線代替バス、南阿蘇鉄道)、仮設住宅への公共交通確保、被災自治体への支援などの事例を紹介。
関係者の情報共有と意思疎通が重要であることを主張されていました。
続いて、JR九州中島氏より、九州新幹線の被災状況と早期復旧の取り組みについての紹介がありました。
脱線してから約300m走行していたことや、22/24軸が脱線していたこと、桁のひび割れ・損傷、締結装置の破損が確認されたこと、脱線箇所に車体を吊り上げるクレーンを搬入することが出来ないことから、ジャッキアップ&スライドで線路に戻したこと、通常速度での早期復旧は難しいと判断し、まずは復旧を優先(当面は徐行対応)して地震発生時から11日で運行再開したことなどを紹介。
比較的早かった運行再開が被災地への大きな力になった一方で、直下型地震への対応が課題であることを述べられていました。
九州産交バス河合氏からは、高速道路を経由する「ひのくに号」(福岡~熊本線)などは比較的復旧が早かった一方で、熊本〜大分は現在でも影響が続いていて、(並行している鉄道が不通になっていることから)「何時間待っても乗れない」(阿蘇駅にて)といったクレームも頂いてご迷惑をおかけしていること、今回の地震を通じてリスクマネジメントの必要性を感じたこと、伝えやすい情報と伝えにくい情報があること、災害時と平常時のMMの本質は同じなのではないかということを述べられていました。
NPO法人いわて地域づくり支援センター若菜氏からは、地震と津波とでは被害と復興に相違があるということ、東北の被災地の場合は沿線の鉄道が被災していち早くバスが復旧したこと、津波で車が流されたために移動の足としてバスが住民の「命」となったこと、仮説住宅への対応もバスで行い、対応出来ないところは乗り合いタクシーで対応したことなどを紹介した上で、上がったサービスのソフトランディングと鉄道復旧後の公共交通網再構築が課題であるということを述べられていました。

これらの事例紹介を受けて、論点を2つに絞って議論されました。
1つ目の、公共交通のリスクマネジメントをどうやっていくのかという点については、
JR九州中島氏:これまでの災害の経験をもとに災害時マニュアルを構築しているところ。
九州産交バス河合氏:バス事業については、道路の復旧によって左右されるのが実状。(事業者としても対策は考えるが)事業者のみではどうにもならない部分もある。
国交省本田氏:各事業者におかれては、まずは災害時のマニュアル整備をお願いしたい。
いわて地域づくり支援センター若菜氏:災害時にどう対応するか「判断」する訓練が必要なのではないか。
といった意見を述べられていました。

そして2つ目の事業者の対応については、
JR九州中島氏:ハザードマップの備え付けと津波発生時の対応を整備しているところ。
九州産交バス河合氏:ケースバイケースの対応にならざるを得ない。あと、熊本地震では、営業所を一部開放した経験から、営業所をしっかり機能させることも必要と考えている。
国交省本田氏:現場で乗務員が判断する訓練を行う、普段からの危機管理の意識と準備が必要なのではないか。
といった意見を述べられていました。

最後に、参加者からの質問タイムとなり、「情報収集に関して良かった部分と反省すべき点があれば教えて欲しい。」という質問に対しては、
JR九州中島氏:災害の種別によって対策本部設置(指令内)の有無が決まっている。情報の一元管理は出来ているが、現地にて指導できる人がその時点でいないので、これをどうするかが今後の課題。
九州産交バス河合氏:乗務員がきちんと営業所に来てくれたのが良かった一方で、本社、営業所、乗務員の情報共有がうまく取れなかった。
国交省本田氏:現地対策本部に職員を派遣、現地対策本部会議での情報をとり、運輸局本部に吸い上げるしくみがある。発災直後の情報発信は難しいものがある。
といった回答を述べられていました。

また、「復旧後の利用者数回復についてはどう考えるのか。」という質問に対しては、
JR九州中島氏:正直な話、そこまで考えられないのが実状。復旧がいつになるのか分からない状態。まずは復旧優先。
九州産交バス河合氏:渋滞→遅延→利用客減少の悪循環に陥っている。MMを考えなければならないのかなぁと考えている。悪循環に陥っている理由については時間をかけてでも調べたい。
いわて地域づくり支援センター若菜氏:交通から街を元気にしていくという考え方があっても良いのかなぁと。街の装置として考えても良いのかなぁと。
といった回答を述べられていました。

いつどこで災害が起きてもおかしくない日本列島。
東日本大震災以降、災害時のリスクマネジメントの必要性が更に高まっています。
公共交通においても例外ではなく、一部の事業者では既にマニュアルの整備や訓練の実施などを進めているところもありますが、一連の話を聞いた限りでは、全体としてはこれからなのかなぁという印象を持ちました。
今回は時間の関係でリスクマネジメントの話が主でしたが、復旧後の需要回復のための方策についての突っ込んだ話も次回以降のjcommで聞いてみたいものです。

これで1日目のプログラムは終了となり、この後は場所を移動して懇親会となったのですが、私は所用のために参加出来ませんでした。
ですが、所用を済ませた後、西鉄の柏原3丁目の現場を少しだけですが実見するなど、夜の福岡を自分なりに楽しんでおりました。

西鉄桧原営業所 待合室

西鉄 桧原 9857 その1

西鉄 桧原 9857 その2


口頭発表1「教育・成長とMM」

2日目は「教育・成長とMM」と題した口頭発表から始まります。

・・・・といいたいところなのですが、実は私の勝手な都合で朝方にヲタ活動をしていたところ、なんと開始時刻の9時に間に合わず、1時間遅刻をしてしまうという失態を犯してしまいました。
なので、口頭発表1の内容は聴くことが出来ませんでした。(お恥ずかしい限りです・・・。)

聞くところによると、弘南バスの学校MMの取り組みや、小規模コミュニティにおけるまちづくりマネジメントの取り組み、そして幼少期の生活環境と成人後の「大衆性」との関連分析の発表があったとか。
何でも、幼少期の生活環境と成人後の「大衆性」との関連分析については、「幼少期のクルマ利用習慣が強かった人は、成人後の傲慢性が高くなる可能性がある。」という興味深い分析結果が発表されたとのことで、是非話を聞いてみたかったです。(近々にjcomm公式サイトにて資料がアップされるかとは思いますが・・・。)

企画セッション「モビリティ・マネジメントの担い手を育む」(パネルディスカッション)

口頭発表に続いては、企画セッションpart2の時間です。
「モビリティ・マネジメントの担い手を育む」というタイトルで、MMの人材育成について考えるパネルディスカッションが行われました。
第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その13
(あれっ、パワーポイントの表題が変えられていませんね。(笑))

コーディネーターとパネリストは、以下の方々でした。

  • コーディネーター:原 文宏( (一社)北海道開発技術センター理事)
  • パネリスト:
    本田 豊(NPO 法人持続可能なまちと交通をめざす再生塾(兵庫県))
    高山 純一(K.cat 代表(金沢大学理工研究域環境デザイン学系教授))
    大井 尚司(Q サポネット世話人(大分大学経済学部准教授))
    伊地知 恭右(NPO 法人まちもびデザイン事務局長((一社)北海道開発技術センター))
効果的なモビリティ・マネジメント(MM)が継続的に各地で実施されるためには、その担い手が必要ですが、それぞれの地域で孤軍奮闘し、悩みを抱える人も少なくなく、担い手もなかなか現れないというのが現実問題としてあります。
一方で、MM・交通まちづくりに取り組む人々が集まり、学び合うことで、課題を共有して解決の方途を探るとともに、持続的なまちの発展に向けてサポートしあう体制を構築しようとしている組織・団体もあります。
この企画セッションでは、登壇者の事例を共有した上で、MMの人材育成のあり方について考える内容でした。

前半は、各登壇者がそれぞれ運営しているMMサポート団体の紹介及び課題などについての紹介がありました。

第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その14
NPO法人持続可能なまちと交通をめざす再生塾の本田氏からは、再生塾の取り組みについての紹介がありました。
⇒ NPO法人再生塾の詳細についてはこちらにてご確認願います。)
再生塾の設立に至った経緯や歴史、特長、コースなどについての説明がありましたが、アドバンス・コースにおける「互学互修」「LF(ラーニング・ファシリテーター)の配置」が特長といったところでしょうか。
※LF(ラーニング・ファシリテーター)=一般的には学習者が自ら学ぶことを支援する人材のこと。再生塾では、自ら学びつつも各チームが効果的に機能しているかをチェックし、時には議論に介入し対話や議論を活発化させる補助的な役割を担う。

第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その15
K.cat代表の金沢大学教授高山氏からは、K.catの目的や活動内容、変遷などについての紹介がありました。
回を重ねるごとに、ディベート方式からワークショップ方式へ変化していった点は興味深いですね。

第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その17
Qサポネット世話人でもある大分大学准教授の大井氏からは、Qサポネットの設立に至った経緯や目的、現状についての報告と共に、自身の国土交通大学校講師をしていて感じたことについての報告がありました。
(⇒ 地域と交通をサポートするネットワーク in Kyushu「Qサポネット」公式Facebookページはこちらにてご確認願います。)
「公共交通に関する相談をしたいが、駆け込み寺がない! 学びの機会が欲しい!」といった声が設立のきっかけになったそうです。
一方で、運営に関しては費用面、人材面でご苦労されているそうです。

第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その20

第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その21
NPO法人まちもびデザイン事務局長の伊地知氏からは、八戸中心街ターミナルモビリティセンター(通称:モビセン)と八戸公共交通アテンダント「はちこ」における人材育成事例を紹介されました。
(⇒「はちこ」など八戸の公共交通について紹介されている「八戸公共交通ポータルサイト」はこちらにてご確認願います。)
「モビセン」は2年前の2015年に発展的閉鎖となりましたが、「モビセン」と「はちこ」の違いを分かり易く説明されていたのが印象に残りました。

これらの事例紹介を受けて、論点を2つに絞って議論されました。
1つ目の、人材の育成像(どんな人材を育成していったらよいのか)という点については、
再生塾本田氏:行政と事業者とのコミュニケーションがとれるツールとしてのワークショップがやれる人。あとはリピーターを如何に増やしてやる気の熟成に繋がられるか。
Qサポ大井氏:人と繋がりたいという気持ちの熟成が大事。これはワークショップによって効果が出てくるのでは。
K.cat高山氏:今やっている活動を続けること。続けることで人材が育成され、意味を成して来る。
といった意見を述べられていました。

そして2つ目の人材育成の課題点については、
まちもびデザイン伊地知氏:マニュアル化出来ることと出来ないことがある点。「はちこ」はマニュアルの整備が良い方向へ進んだが、MMは理念を喋ることが出来ても文章化は難しい。(気持ちが入る入らないの問題?)そして、コンサルの主な仕事は、技術のお世話とお金のお世話、そして心のお世話。実は心のお世話が一番難しい。
と述べられた上で、コーディネーターの原氏より「運営資金」に関する質問が出され、これに対しては、
再生塾本田氏:ほぼボランティア。あとは参加費などで賄っているのが現状。運営費用の安定化は課題。
K.cat高山氏:初期は自治体から費用が出ていたが、現在は会費を徴収。ゆるゆると続けているのが良いのかなぁと。
Qサポ大井氏:お金の問題はやはりつきまとう。 あと、人がとにかく少なく、自主的にやっているのが現状。今の活動を今後も続けられるかどうかは分からない。
といったことを述べられていました。

タイムリミットが近づき、最後に参加者からの質問タイムに。
「人材育成も大事だか、人材発掘も大事なのでは?」「「はちこ」を辞められたあとのライフスタイルがどうなったのか?」「人材育成の幅を広げることと自動化も必要なのでは?」という、質問というよりは意見に近い発言が参加者から出ました。
「はちこ」を辞められたあとのライフスタイルについては、バス乗務員になられた方やMMに携わる方も出ているという報告を受けているそうです。

MMの人材育成の動きは広がっている認識でいましたが、想像とは違う運営側の厳しさ・苦労・課題を直に聴くことが出来たのが収穫でした。
MMを推進する上での人材確保と人材育成・・・今後の大きな課題になるのではないでしょうか。

ポスター発表B 、口頭発表ツール展示

お昼休みを挟み、午後はポスター発表2日目からスタートです。
ポスター発表の大まかな内容は1日目のポスター発表の時間で大体見て回ったということもあり、この時間では西鉄の「柏原3丁目の取り組み」についてと弘南バスの「MM教育の取り組み」の2つに絞って見て回りました。

第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その23

西鉄の「柏原3丁目の取り組み」については、実際に西鉄の社員の方から色々と伺うことが出来たのですが、経緯としては

  • 路線バス開設の要望は10年以上前からあった。
  • 当時は検討するも、採算面の理由から路線開設実現には至らなかった。
  • その後、福岡市で「公共交通空白地等及び移動制約者に係る生活交通の確保に関する条例」が制定。
  • 住民側の動き・熱意が続く中、「行政」「住民」「事業者」の話し合いで再度路線開設の検討に入る。
  • 回送経路だった桧原営業所~柏原営業所間を路線化した上で、柏原3丁目エリアに立ち寄るという方法で対応することに。
  • 4年前に運行試験を実施。道路改良などの課題を洗い出し対応。
  • その後、補助金活用による試行運行を経て、2年前の4月に本格運行を開始。
ということのようです。
この事例のポイントは、やはり「地域住民の公共交通の確保・維持への熱意と実行力」「行政と事業者のサポート」だと思います。
実際に私も現地へ行きましたが、自治会設置の「バスが通ります」看板や横断幕を至る所で見かけた他、町内会の夜間パトロールの足としてバスを利用する姿(6人程でしたが)が見受けられたなど、このバスを「自分たちで維持していく」気概を感じました。
「地元の熱意がとても強いだけに、事業者としてもその期待に応える」という西鉄の心意気も流石といったところ。
よそ者ではありますが、末永く運行が続いて欲しいと願いたいものです。
(尚、現地の昼間の様子については、NPO法人ゆうらん公式サイト(ブログ)にて詳細レポートがアップされていますので、ご参考までに。)

弘南バスのMM教育の取り組みについては、数年前から開始した社員によるプロジェクト「バスプラスプロジェクト」の一環として始められた事業者主導によるMM教育の実践報告がメインでした。
小学校の学習指導要領を意識して内容を作成し、ゲームや乗り方教室、清掃体験などを実施。
終了後にはアンケート調査票やノベルティ、お試し乗車券を配布するなど、利用促進活動にも繋げています。
効果の検証についてはこれからといっていましたが、バラツキはあるものの、参加者の約6~33%がおよそ1か月以内に実際にバスを利用したという結果も出ているそうです。
平成28年度には13箇所で実施されましたが、一方で御多分に漏れず乗務員不足問題が課題となっていることから、今後は必ずしも実車を用いた乗り方教室にこだわらない座学プログラムを充実させる方向で、MM教育の展開を図っていきたいとのことでした。
効果検証の結果については興味がありますし、今後の方向性についても、座学プログラムメインで生徒の理解度がどう変化するのかをも含めて注目したいところです。

口頭発表2「地域課題に挑むMM」

ポスター発表の後は、口頭発表2の時間です。
第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その24
口頭発表2では、「地域課題に挑むMM」と題して、MMを防犯活動に生かした事例、行政とバス事業者が連携して乗務員確保に挑戦した事例、そして廃止された鉄道を復活させた事例が発表されました。

第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その25
京都市中京区における防犯MM「つくろう・安心・中京区」では、ワンショットTFP(公共交通の情報を提供するとともに、アンケート(コミュニケーションアンケートと呼ばれます)に回答いただくことを通じて、一人ひとりの交通に対する意識や行動の変化を促す、モビリティ・マネジメント(MM)の代表的な手法)を防犯活動に応用したというもので、動機付け情報のコンセプトは「あいさつ、声かけ、門掃き、水撒きをしている地域は犯罪が少ない。」「落書きが放置されている街や人の生活感が感じられない街は、住民が無関心である様に思え、犯罪が実行しやすい。」というもの。
賛同いただいている方も多く、防犯には地域力による防犯活動が一番で、一人一人の主体的な行動が大事であることを述べられていました。

第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その26
八戸市地域公共交通会議の「バス運転手確保に向けた挑戦」では、国内唯一のバス業界専門求人サイト「どらなび」の助言・協力を頂きながら、行政主導によるバス運転体験会+バス会社(八戸市営バス、・南部バス(現:岩手県北自動車南部支社)・十和田観光電鉄)合同説明会(2回)、各社の営業所見学(3回)の計5回のイベントを2か月間で集中的に行ったというもので、一定数参加者が増え、手ごたえはあったものの、結果的にはどらなびに掲載した八戸市営バスの一人勝ちであった一方で、掲載情報の変化(項目を詳細に記載)や各社の会社説明会の激増など、事業者側の大きな行動変化が見られたことなどが報告されました。
今後は、各社の求人活動をとのかしこい組み合わせを検討しながら、より効果的な施策を検討したいとのことでした。

第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その27
JR可部線利用促進同盟会からは、JR廃止路線の復活に向けた住民主体の取り組みについての報告がありました。
活動自体は、JR可部線の一部廃止より10年年前の1994年に結成された住民主導の「電化促進期成同盟会」がはじまりとのこと。
あき亀山地区の人口急増のより電化延伸の要望が上がるも、JRは可部から先の区間を廃止→諦めない住民の思い、団結力、指導者の強いリーダーシップ、復活に向けた様々な活動、広島市への要望→活動が実を結び広島市の連携計画に可部線電化延伸が盛り込まれる→広島市とJR西日本が基本合意→2017年3月に廃止路線の復活・・・という結果に結びついたとか。
やはり廃止後の諦めない姿勢と住民の思いと指導者のリーダーシップ、そして実行力が大きかったのかなぁと話を聞きながら思いました。
終点のあき亀山駅前には広島市立安佐市民病院が移転されることにもなっている様で、今後の街の発展が楽しみですね。

クロージングセッション

そして、クロージングセッションです。
第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その28

2日間に渡る議論の総括を行った後、来年の開催地が発表されます。
来年の開催地は・・・愛知県豊田市となりました。
第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その29

豊田市の礒谷裕司副市長によるプレゼンです。
第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その30

第12回 日本モビリティ・マネジメント会議 その31

そして、最後の締めの言葉で「第12回 日本モビリティ・マネジメント会議(jcomm)」は無事に閉幕となりました。

最後に

というわけで、長々と「第12回 日本モビリティ・マネジメント会議(jcomm)」の様子について書いてみました。
例年、jcommでは開催地の特色や事などに合わせたプログラムが組まれるわけですが、私個人的には、開催地企画「天神・博多のエリアマネジメントとMM戦略」で西鉄のMM施策についての話が聞けたのと、昨年の熊本地震を受けての企画セッション「公共交通のリスクマネジメント」が良かったと感じました。
強いていえば、復旧後の需要回復のための方策についての突っ込んだ話も聞きたかったのですが、これについては次回以降のjcommで続編という形で企画して欲しいと願わずにはいられません。
ポスター発表も、内容はさることながら、2日間全ての内容をまとめて展示してあったこと、メイン会場との移動がしやすかったのも良かったと思います。

先述の通り、次回開催地は愛知県豊田市と決まりました。
豊田市といえば、世界有数の自動車メーカー「トヨタ自動車」の本社・工場がある世界でも有数のクルマの街。
このクルマの街でMMを考える会議を開催すること自体、私自身正直驚いているのですが、実は公共交通でも先進的な取り組みを行っていると伺いました。
果たして来年は豊田の地でどんな議論が交わされるのか、今から楽しみです。

名鉄バス 豊田 1628
(豊田市のプレゼンでは出て来ませんでしたが、私にとって豊田市を走るバスといえば、やはり写真の名鉄バスのイメージが強いです。)


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