長崎自動車「オランダ号」乗車記
しかし、その後の旧高速ツアーバスの台頭、更にはLCC「Peach」の就航の影響で利用客が減少したことで不採算の路線が整理されていく中、現在も関西~長崎間を結ぶ唯一の夜行交通機関として運行しているのが、近鉄バス(本社:東大阪市)と長崎自動車(本社:長崎市)が運行している夜行高速バス「オランダ号」であります。
「オランダ号」については、以前このブログで近鉄バス担当便の乗車記をご紹介しましたが・・・
今回は先日乗車した長崎自動車担当便の「オランダ号」をご紹介します。(写真はイメージです。)
幾度の経路変更などを経て運行を続ける「オランダ号」
ここで、「オランダ号」について簡単にご紹介すると、「オランダ号」は1998年12月に大阪~長崎間の夜行高速バスとして運行を開始しました。数回の経路変更・停留所変更等を経て、2002年5月には京都まで延伸されます。
当時、京都~長崎間においては、京阪バスと長崎県交通局が「きょうと号」「ながさき号」という夜行高速バスを運行していましたが、2001年3月で廃止されたことから、「オランダ号」の京都延伸は陣営こそ全く異なるものの、事実上京都~長崎線の路線復活となりました。
その後は長崎市内の経路変更・停留所新設及び大阪駅前(地下鉄東梅田駅)停留所新設などを経て、現在に至っています。
今回乗車したのは、2014年9月のとある平日の京都発の便になります。
京都の乗車地は京都駅八条口の近鉄高速バスのりば。
太陽光パネルを搭載した電光式バス停が目印です。
19時25分、長崎自動車の長崎行き「オランダ号」が入線します。
今回乗車したのはこちら↓の車両でした。
2008年式の2801号車(いすゞガーラHD PKG-RU1ESAJ)です。
j-bus製セレガーラの車体にシンプルな同社高速路線用カラーが良く合っています。
車内はこの様になっておりまして、
3列独立シート27人乗り夜行仕様車となっています。
一見、普通の夜行仕様車に思えますが、実はこの車両、バブル期の「古きよき時代の設備・機能」をいくつか有しております。
まずはシートから。 見た目は普通の天竜工業製1人がけシートなのですが、実はこのシート、ある一定の角度以上をリクライニングすると、リクライニングに連動して座面の後部が隆起し、腰を真っ直ぐに近い状態にすることが出来る機能を搭載しています。
かつての杉本工業製「スリーピングシート」の初期型と同じ機能といえば、ピンと来る方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そして、車内中央部にこの様な設備が。 今ではすっかり珍しくなったセルフサービス式のドリンクコーナーです。
温かいお茶・コーヒーを飲むことが出来ます。
一方で、車内前方部の冷蔵庫には冷たいジュース(カゴメ野菜生活100オリジナルミニ)も提供されていました。
更に、写真はありませんが各座席にはマルチステレオコントローラを完備。
各座席にてテレビ・ラジオ音声を楽しむことが出来ます。
かつてはどの夜行バスにもマルチステレオコントローラを完備していましたが、今ではむしろ珍しくなってしまいました。
次回導入される車両は、恐らくマルチステレオを廃止して代わりに座席コンセントを採用・・・でしょうね。
勿論、昨今のニーズを反映してか、窓側座席には通路カーテンを後付けにて設置。
道中周りを気にせずに休める配慮もなされています。
という様に、長崎自動車の夜行高速バスは今時珍しい「至れり尽くせり」の車内サービスを提供しております。
昔ながらの夜行バスのサービスを味わいたい方にはお勧めですね。
途中休憩は1回のみ 目覚めると長崎
では、乗車時の模様を簡単にご紹介。京都駅八条口で私を含めて7名の乗客を乗せた「オランダ号」は、19時40分定刻に発車します。
京都南インターより名神高速道路へ。
名神大山崎・名神高槻・名神茨木インターにて乗客を乗せた後は、名神高速から阪神高速豊中線へと入り、更に同環状線をあべの橋駅方面へと進んで行きます。
20時48分、あべのハルカスが聳え立つ近鉄あべの橋駅に到着。
ここで4名の乗客を乗せた後、阿倍野ランプから再び阪神高速環状線へ。
数分で近鉄なんば駅西口(なんばOCAT)に到着後、3名の乗客を乗せ、出発時刻の21時15分まで待機します。
21時15分、なんばOCATを発車。
湊町ランプから三度阪神高速環状線に入り、更に同守口線を扇町ランプまで走行します。
21時35分、大阪駅前(地下鉄東梅田駅)に到着。
最後の乗車扱いを行い、総勢18名の乗客を乗せた「オランダ号」は、大阪駅前から阪神高速豊中線を中国道方面へと向かいます。
とここで、乗務員の自己紹介と液晶モニターを活用した車内設備の案内が行われます。
乗務員の口頭による案内や自動放送による案内が多くなっている一方で、モニターを使って詳しく説明する事業者は少なくなってきましたね。
22時00分、バスは中国池田インターを通過。
ここからは中国自動車道~山陽自動車道~中国自動車道~九州自動車道~長崎自動車道~長崎バイパスを経由して、一路大村・諫早・長崎市内へと進んでいきます。
「オランダ号」の開放休憩は上り便と下り便で開放休憩回数が異なり、上り便は1回のみの実施なのですが、下り便は2回実施されます。
消灯前の休憩は、山陽自動車道の福石パーキングエリアにて15分間設定されています。
殆どの乗客がバスを降り、消灯前の準備を進めていきます。
23時25分、乗客が全員揃ったところでバスは発車、消灯となります。
暫くは起きていましたが、この日の疲れからか次第に眠くなり、気が付くとバスは佐賀県内の長崎自動車道を走行していました。
その間約6時間、一回も目を覚まさずに寝ていたということは、それだけ車内が快適だった証拠なのでしょうか。
翌朝6時過ぎ、車内灯が灯され起床となります。
10分程走行したところで、バスは最後の休憩地である長崎自動車道大村湾パーキングエリアに到着。
ここでも15分間の開放休憩時間が設定されており、多くの乗客がバスを降りて身支度を済ませたり気分転換をしたりと思い思いの時間を過ごしていきます。
6時25分、乗客が全員戻ってきたところで、バスは大村湾パーキングエリアを出発します。
まもなくして大村インターに到着しますが、ここでの降車客はおらずに通過。
続いての諫早インターでは1名が下車し、大村インターからは長崎バイパス~川平有料道路を走行、川平ランプからは長崎市内の停留所に停車してしていきます。
7時09分、打坂に到着。
ここでは1名が下車し、続いての道尾・住吉の各バス停では各1名が下車していきます。
更にその次の大橋では2名、ココウォーク茂里町では1名が下車。
長崎市内主要停留所にて乗降出来る「オランダ号」の利便性の良さを象徴する光景です。
纏まった降車があったのは長崎駅南口で、ここでは7名が下車。
その次の大波止では2名が下車し、私を含めて残り3名となったバスは7時46分、定刻よりも20分程遅れて終点の長崎バス新地ターミナルに到着しました。
バスならではのメリットを生かした路線
というわけで、長崎自動車の京都・大阪~長崎線「オランダ号」の乗車記をお届けしました。以前ご紹介した「オランダ号」近鉄バス便の乗車記でも同じことを書きましたが、寝台特急「あかつき」が無くなり、「ロマン長崎号」(大阪梅田・神戸~長崎線)や「プリンセスロード」「エトランゼ」(神戸・姫路~長崎線)が無くなった現在、長崎地区と関西地区とを結ぶ交通機関として利用が更に定着しつつあるという印象を強く持ちました。
特に今回の乗車で一番印象に残ったのは、長崎市内における細かな停留所設定。
自宅近所から直接関西方面へダイレクトに移動出来ることは、まさにバスならではのメリットといえましょう。
何せ飛行機やJRではまず実現不可能ですから・・・。
そして、今回乗車した長崎自動車便のサービスレベルの高さも印象に残りました。
個人的にはこの車両、とても気に入りました。
まさか、今日の夜行バス用シートでかつての「スリーピングシート」と同様の機能を搭載しているとは思いもしませんでしたし、サービスコーナーやドリンクサービス・マルチステレオサービス等、バブル期に数多くの夜行高速バスで採用されたサービスが、ほぼそのままの状態で引き継がれています。
強いて言えば、窓カーテンの厚さが若干薄く、トンネルの照明が頻繁に入ってきていたのが若干気になりましたが・・・。
ともあれ、関西~九州間の夜行路線バスは季節波動が大きいといわれていますが、今後も利用客に目を向けたサービス改善と安全運行を引き続きお願いしたいものです。
【乗車データ】
- 乗車日:2014/09/02
- 乗車区間:
京都駅八条口→長崎バス新地ターミナル - 運行会社:長崎自動車
- 車両:いすゞ/ガーラHD(PKG-RU1ESAJ)
- 年式:2008年式
- 所属:松ヶ枝営業所
- 社番:2801
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