西日本鉄道「博多・フジヤマExpress」乗車記

夜行バス,高速バス乗車記

2013年6月の世界文化遺産登録をきっかけに今や世界的観光地になりつつある「富士山」、国内有数の一大アトラクション遊園地「富士急ハイランド」、そしてお茶とサッカーとプラモデルが有名の静岡県、これら3地区と九州とを結ぶ超長距離夜行高速バスが2014年8月2日に誕生しました。
その名は「博多・フジヤマ Express」

西日本鉄道「博多・フジヤマ Express」 4850

日本最大のバス会社グループの一員である西日本鉄道(以下:西鉄)と、富士山・富士五湖地区の交通・観光を一手に引き受ける富士急グループの富士急山梨バスという、高速バスの運行に実績がある両社がタッグを組みました。
しかも運行距離は1,065kmと久々の1,000km超え長距離路線の開設となっただけに、「博多・フジヤマ Express」の運行開始は関係者のみならずバスファンからも注目を集めることになります。

福岡から静岡方面への路線開設については、今から1年前の2013年夏頃から噂になっていました。
この話を初めて聞いたとき、私は正直なところ需要面で不安視していました。
しかし、いざ公表された路線計画を見るや否や、「これはもしかすると良い意味で利用客が付く路線になるかも?」という思いがしたのと同時に、「まずは一度乗ってみないと・・・」という思いが強まり、開業から約1ヶ月経過した2014年9月のとある平日に乗車することに。
乗車券を「@バスで」で手配し、福岡側の始発地である博多バスターミナルへと向かいました。

久しぶりに採用された29人定員夜行高速仕様車

やって来たのは、JR博多駅に隣接する博多バスターミナル。
にしてつグループの高速バス・一般路線バスはもとより、昭和自動車・ジェイアール九州バスの一部路線バスも乗り入れる一大バスターミナルです。
にしてつグループが運行する夜行高速バスは、殆どの路線において西鉄天神バスセンター(福岡市中央区)が始発となっており、博多バスターミナルは経由地となっていますが、「博多・フジヤマ Express」は運行距離及び所要時間の関係から、博多バスターミナルが始発(西鉄天神バスセンターが経由地)となっています。
17時50分過ぎ、横浜・東京池袋・さいたま大宮行き「Lions Express」が発車すると、すぐさま静岡・富士山駅行き「博多・フジヤマ Express」が入線してきます。
今回乗車した車両は西鉄博多自動車営業所所属2014年式の三菱エアロクイーン(QRG-MS96VP)。
西日本鉄道「博多・フジヤマ Express」 4852 博多BTにて

西日本鉄道「博多・フジヤマ Express」 4852
すっかりお馴染みの車体デザイン「白夜行」が、シンプルながらも存在感を引き立たせています。

早速乗務員による改札を済ませたところで、車内を見てみます。
西日本鉄道「博多・フジヤマ Express」 4852 車内
車内は「はかた号」ビジネスシートの内装をベースとした、3列独立シート29人乗りの夜行高速仕様を採用しています。西鉄ではこれまで全席一人掛けの3列独立シート28人乗りを採用してきましたが、今回久しぶりに最後部4列仕様を投入してきました。
(因みに最後部は女性専用席として500円引きで発売することになっています。)

西日本鉄道「博多・フジヤマ Express」 4852 シート
シートは天竜工業製の純正夜行バス用シートを採用。
可動式枕を搭載している他、足置き台の前方くり抜き部分が通常のものより深くえぐられており、ゆったりと足を伸ばして休むことが出来ます。
そして今回導入された車両では、昨今の利用客からの要望からか、長年採用され続けたマルチステレオシステムが廃止され、代わりに座席コンセントが装備されました。携帯電話・スマートフォン利用者にとってはありがたい設備だったりします。

勿論、西鉄の夜行高速バス伝統のプライベートカーテンも健在。
西工が無くなり、導入される車両もメーカー純正に変わりましたが、「道中快適に寝てもらおう」という姿勢は変わらずに引き継がれています。

土砂降りの雨の中を一路東へ・・・

そうこうしているうちに出発時刻になり、17時55分、定刻にバスは博多バスターミナルを発車します。
15分程走行して西鉄天神バスセンターに到着するのですが、この日はヤフオクドームでの福岡ソフトバンクホークス公式戦開催による臨時直行バス運転の日でターミナル内は大混雑。
この影響で、のりばに横付け出来たのは定刻5分遅れの18時15分のことでした。
西鉄天神バスセンターからは6名乗車し、予約客が全員揃ったところでバスは天神バスセンターを出発します。

西鉄天神バスセンター出発後、交代乗務員から自己紹介と車内設備の案内が行われ、最後に車内を一巡して分からない点が無いかを確認していきます。
何時も思うのですが、路線・運行事業者が変われど、乗客に対するきめ細かな接客を見るに付け、にしてつグループの乗務員教育の徹底ぶりを改めて実感しますね。

20分程遅れて、バスは天神北ランプから福岡都市高速道路へ。更に福岡インターから九州自動車道に入り、一路静岡・富士山方面へと進んでいきます。
本来であれば日の入り前の車窓を楽しんで・・・といいたいところなのですが、この日は夕方から土砂降りの雨が降り止まず、外は真っ暗。
折角のバス旅も楽しさ半分といったところでしょうか。

九州自動車道を30分程走った八幡インターで一旦九州自動車道とお別れし、ここからは暫くの間、北九州都市高速道路をひた走ります。
19時13分、高速千代ニュータウンに到着しますが、乗客0で通過します。
従来であればこの先の黒埼インター引野口に停車して乗車扱いを行うのですが、運行距離及び所要時間の関係、更にはパーク&ライド駐車場が完備されているという理由から、西鉄夜行高速バスでは初めて高速千代ニュータウンでの停車が実現しました。
残念ながらこの日は乗客がいませんでしたが、今後の利用促進に期待したいところです。

19時33分、砂津(チャチャタウン前)に停車するも乗車0で通過。その次の小倉駅前でも乗車0で、最終的に乗客14名で静岡・富士山方面へ向かうことになりました。
9月の平日で乗車率50%近くとは中々の乗車率なのではないでしょうか。

20時00分、バスは関門橋を通過します。ここで九州とはお別れ。
この先は中国自動車道~山陽自動車道を静岡方面へ向けてひた走りますが、静岡地区まであと約10時間、終点富士山駅まであと約13時間・・・目的地までまだ先は長いです。

関門橋を通過して約1時間経過したところで、バスは消灯前の休憩地である山陽自動車道佐波川サービスエリアに到着します。
ここでは15分間の開放休憩時間が設定されていますが、売店や軽食スペースが充実しているからか、殆どの乗客がバスを降り、トイレや洗顔、買い物を済ませていきます。
西日本鉄道「博多・フジヤマ Express」 4852

21時10分、乗客が全員揃ったところで、バスは消灯の準備に入ります。乗務員2名がプライベートカーテンをセットし、室内灯を消します。
バスはこの先数箇所のサービスエリアに停車しますが、乗務員交代と車両点検のため、翌朝まで下車することが出来ません。
21時15分、バスは佐波川サービスエリアを出発。
ですが、消灯時間が早いからか、中々寝付くことが出来ません。
それは他の乗客も同様でして、殆ど乗客が読書灯を点灯させて持参の携帯電話やスマートフォンで時間を潰している様でした。
私も暫くはiPhoneで翌日以降の行程に関する調べ物をしていたのですが、それも23時を過ぎると眠気が襲ってしまい、いつしか夢の中へ。
途中何度目が覚めるものの、ゆったりシートとプライベートカーテンのおかげでぐっすり眠ることが出来ました。

静岡県内に立ち寄り富士五湖へ・・・

翌朝5時30分、室内灯が灯され起床。その後、交代乗務員がプライベートカーテンを片付け、サービス品のミネラルウォーターが配布されます。
そして5分後の5時35分、最後の休憩地である東名高速道路日本坂パーキングエリアに到着します。
ここでも15分の開放休憩時間が設定されており、多くの乗客がバスを降りて気分転換をするのですが、売店や食堂が営業していなかったということもあり、トイレを済ませた後、売店で飲み物類を購入してバスに戻る乗客が多かったですね。
西日本鉄道「博多・フジヤマ Express」 4852 日本坂PAにて その1

西日本鉄道「博多・フジヤマ Express」 4852 日本坂PAにて その2

西日本鉄道「博多・フジヤマ Express」 4852 日本坂PAにて その4

5時50分、乗客が全員揃ったところでバスは出発。
この先は静岡県内及び富士山地区にてこまめに乗客を降ろしていきます。
定刻ですと既に静岡インターを降りて静岡駅前を通過している頃ですので、20分程遅れて運行していることになるでしょうか。
西日本鉄道「博多・フジヤマ Express」 4852 まもなく静岡インター

6時08分、静岡駅前を通過します。
乗客の立場からすると「このバスも静岡駅前に止めてくれたら・・・。」と思うところなのですが、静岡駅前は事業者間による諸事情がありまして、おいそれ停車というわけにもいかない様です。
中々難しいですね。

6時13分、JR東静岡駅に到着。ここでは2名が下車していきます。
その後は長崎インターから静清バイパスに入り、清水インターからは東名高速道路に入ります。東名富士は降車客がおらずに通過し、30分程走行した7時過ぎにバスは沼津インターを流出します。
7時17分、沼津駅北口に到着。ここでも2名が下車し、その後バスは再び沼津インターから東名高速道路に入ります。
15分程走行し、御殿場インターに差し掛かったところで東名高速道路とはお別れし、御殿場インターからは降車客がいない御殿場駅には立ち寄らずに、国道138号~東富士五湖道路を富士吉田方面へとひた走ります。
天気が良ければ左手に富士山が見えるのですが、この日は悪天候で富士の頂を拝むことが出来ませんでした。残念!!
西日本鉄道「博多・フジヤマ Express」 4852 東富士五湖道路走行中

8時27分、富士吉田インターを降りたところで、バスは富士急ハイランドバスターミナルに到着。
ここで2組の団体客9名が下車していきます。(写真はイメージです。)
富士急ハイランドバスターミナル

富士急ハイランドバスターミナルからは私一人の貸切状態になり、河口湖駅前を通過後5分程でバスは終点の富士山駅に到着しました。
西日本鉄道「博多・フジヤマ Express」 4852 富士山駅到着
15時間程の移動時間が意外にも短く感じたのは、充実した車内設備もさることながら、富士山観光への期待、そして富士急ハイランドでの楽しいひと時への期待が乗車時間を短く感じさせているのかもしれませんね。
約十数年ぶりに降り立った富士山駅。
かつては富士吉田駅と呼ばれていたこの駅も、水戸岡デザインで大きく生まれ変わりました。
駅舎を見るにつけ時代の流れというものを改めて感じつつ、富士山駅を後にしたのでありました。
富士急行 富士山駅

可能性を秘めた超長距離路線

今回、久しぶりに開業して間もない夜行高速路線に乗車しましたが、「博多・フジヤマExpress」を乗車しての感想を一言で述べるとするならば、「可能性を秘めた超長距離路線」となるでしょうか。

福岡~静岡間において交通機関を利用して移動するとなると、これまでは飛行機(フジドリームエアラインズ)の直行便を利用するか、新幹で乗り換え移動する方法の二択しかありませんでした。
それが今回の路線開設で、乗り換えなしの交通機関が一つ増えたことになります。
しかも片道最安10,000円からという安価な方法で・・・。
更に今回の路線開設で、世界文化遺産登録で注目を集めている「富士山」、そして絶叫系アトラクションで知名度が全国区になった「富士急ハイランド」まで九州から乗り換えなしで移動出来る様になり、九州から静岡・富士五湖方面への観光・レジャーの機会が増えた(行くきっかけが出来た)という点において、「博多・フジヤマ Express」が運行を開始した意義は大きいと考えます。

問題はこれから先です。西鉄と富士急がこの路線をどうやって売り込み育てていくかにこの路線の将来がかかっているのではないでしょうか。静岡地区からの利用客を如何に増やしていくか、そして九州から富士五湖・富士急ハイランドへの利用客を如何に増やしていくか・・・これを上手くやるかやらないかでこの路線の将来が決まる様な気がします。
現状では幅運賃を設定することで閑散期及び平日の乗車率を確保する施策を取っていますが、これだけですと流石に厳しいと思わざるを得ません。
西鉄旅行や富士急トラベルと手を組んで、富士急ハイランドの一日フリーパスと夜行バス往復をセットにしたパック商品の販売や、九州旅行客向け(又はビジネス客向け)の夜行バスとホテルを組み合わせたパック商品の販売、あるいは片道飛行機利用の往復パック商品の販売等の施策が、今後必要になってくるのではないでしょうか。

とはいえ、これまで考えられなかった区間の移動が可能になるのも、バスならではのメリットであります。
そして、3列独立シートでゆったりと寝て移動出来るのも、夜行高速バスの最大のメリットであります。
需要が多い大都市間路線の様に「常日頃満席」とまではいかないでしょうが、今後の運行事業者の努力で「博多・フジヤマ Express」が大阪・京都~富士五湖線「フジヤマライナー」の様に『良い意味』で化けてくれることを期待したいと思います。


【乗車データ】 
  • 乗車日:2014/09/03
  • 乗車区間:
    博多バスターミナル→富士山駅
  • 運行会社:西日本鉄道
  • 車両:三菱/エアロクイーン(QRG-MS96VP)
  • 年式:2014年式
  • 所属:博多自動車営業所
  • 社番:4852


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