大分交通「ぶんご号」乗車記 ~古き良き時代への誘い~

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突然ですが・・・中京圏と大分県とを結ぶ交通機関といえば?
皆さんは何を思い浮かべますか?

多くの方は、「飛行機」を思い浮かべるかと思います。
現在、ANAネットワークに加盟している「IBEXエアライン」が1日2往復就航していますが、運賃が高いことに加えて、ビジネス優先の就航ダイヤを組んでいることから、決して使い勝手が良いとは言えない状況にあります。

その点、これからご紹介する名古屋~別府・大分間の夜行高速バス「ぶんご号」は、片道11,000円という格安な運賃と使いやすい運行ダイヤ、更には中京圏と大分県とを結ぶ唯一の夜行直行交通機関であることが支持され、1991年4月の開業以来、多くの方に利用されています。

大分交通「ぶんご号」 ・106

大分交通「ぶんご号」 ・106 リア

今般、「SUNQパス」を利用した取材旅行の帰りの足として、この「ぶんご号」を選んでみました。
「ぶんご号」を利用するのは今回が3度目。
前回利用したのが1998年になりますので、実に15年ぶりになります。

「ぶんご号」を選択した理由とは?

今回「ぶんご号」を選択したのには、2つの理由がありました。
一つ目の理由は、大分交通担当便に使用される専用車両「106号車」(三菱KL-MS86MP 西工02MC SD-Ⅰ)をじっくり見てみたかったということ。
(こちらの車両↓になります。尚、撮影にあたっては大分交通株式会社様のご協力を得ています。)
大分交通「ぶんご号」・106

大分交通「ぶんご号」・106 リア
こちらの車両、デビューが2001年と夜行高速用車両としては経年車の部類に入るのですが、バスファンの間では「西工史上最高の名車」として挙げる人が居る程の完成度が高い車両になっています。
その魅力については後程紹介することにしましょう。
そして二つ目の理由は、2013年7月にテストケースとして1ヶ月限定で実施された、web決済限定の割引サービス「web早割7」サービスを試してみたかったというのがあります。
この「web早割7」、web予約&web決済限定ではありますが、乗車日7日前までの予約かつ予約後3日以内のweb決済(クレジット)を行うことで、通常片道運賃10,400円~11,000円がなんと7,500円と、最大約32%引きになるお得なキャンペーンになります。
「車両も見てみたいし、30%引きになるなら、これは一度利用してみるか・・・」ということになり、早速乗車券を手配・決済し、乗車の準備を進めることにしました。

とはいいつつも、私自身高速バスの乗車券購入に関しては、基本的にクレジット決済を使わないことにしているんですよね。
情報漏えいなど、何かあると危ないので・・・。
そこで今回利用したのが、楽天銀行が発行している「VISAデビットカード」。
機能的には一般的なデビットカードと同じなのですが、「VISA」発行のクレジットカードと同じ方法で決済が出来るんです!
一部の加盟店、ECサイトでは利用することが出来ないのですが、予約先サイト「ハイウェイバスドットコム」で「VISAデビットカード」が利用出来ることは知っていたので、今回これを使用してみました。
個人情報保護の観点から、決済時の画像を掲載することはできないのですが、意外と簡単に予約・決済することが出来ました。
「web決済は使いたいんだけど、クレジット決済には抵抗があるんだよなぁ~」という方は、1枚「VISAデビットカード」を持っておくのも良いかもしれませんね。

名車の名に相応しい「ぶんご号」西工車

と、前置きが長くなりました。
乗車時の模様をご紹介しましょう。

今回は始発地である大分交通新川バスセンターから乗車します。
大分交通 大分新川バスセンター
バスターミナルにしてはこじんまりとしていますが、待合室・乗車券カウンターが備わっている他、隣には大分交通が建設・運営している複合商業施設「Dプラザ」があり、飲食施設や「ドンキホーテ」、スーパー銭湯「SAMASAMA」がテナントとして入っています。
ひとっ風呂浴びて食事してから「ぶんご号」に乗車・・・という利用の仕方も出来るわけで、ロケーション的には恵まれた環境下にあるのではないかと思います。

大分交通新川バスセンターの発車時刻は20時00分。
福岡線「とよのくに号」や「エアライナー」の発車もあるため、入線は発車5分前とギリギリの時間だったりします。
大分交通「ぶんご号」 ・106 大分新川改札中
車両は先述の通り、大分交通所属の106号車。
シャーシは三菱製(三菱KL-MS86MP)ですが、西工02MC型夜行高速仕様の車両としては市販第1号車になります。

改札を受け、車内に入ります。
車内はこの様になっておりまして・・・・
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大分交通「ぶんご号」 ・106 シート

大分交通「ぶんご号」 ・106 車内 フリースペース
3列独立シート26人乗りの夜行仕様なのですが、西工製の夜行高速仕様車にしては珍しく非公式側にトイレを配置したり、トイレ横の5B席をフリースペースにすることで、長時間でも快適にくつろげるゆったり仕様になっています。
このため、シートピッチも一部座席を除いて約1,000mm確保されています。
今日の夜行バスでは珍しい、「お茶・コーヒーのセルフサービス」も用意されていますよw。

更に足置きもこの様な工夫が・・・。
大分交通「ぶんご号」 ・106 車内 足受け
前席シートの奥深くまで刳り抜かれており、ゆったりと足を伸ばせられる様になっています。

この様に、快適性を重視した車内の細かな造りが、バスファンから「名車」と呼ばれる所以でもあり、製造から10年以上経過した今でもファン間で親しまれている理由であることが改めて分かります。
もっともこの車両、西鉄の「どんたく号」初代専用車や「ぶんご号」初代専用車をベースに設計されていることもあり、いわば「古き良き時代の夜行バスの車内サービスを味わえる」、今となっては貴重な車両であるといえましょう。
ただ、現場サイドからすると、主にメンテナンス面で色々とご苦労もあるようで、大分交通の方のお話では「この車が活躍できるのもあと数年位の間かなぁ~」とのことでした。

そうこうしているうちにバスは発車時刻になり、20時00分、定刻にバスは大分交通新川バスセンターを出発します。
5分程走ったところにあるかつての始発地「大分トキハ前」で数名の乗客を乗せ、バスは大分市内を駆け抜けます。
この日は週末日曜日の便であるにもかかわらず乗客は少なめ。
乗務員氏の配慮で「web割7」で指定された中央席から中央部窓側座席へ移動することが出来ました。
前後に乗客はおらず、リクライニングシートも倒し放題。
改めて乗務員氏の気の利いた配慮に感謝ですww。

バスは別府北浜で1名、その後の宇佐法鏡寺で1名を乗せ、合計8名の乗客を乗せたバスは一路国道10号線を小倉東インターまでひた走ります。
てっきり苅田あたりから東九州自動車道~九州自動車道のルートを経由すると思っていただけに、当時とそのままの運行経路を進むことに改めてびっくり。
23時10分頃、バスは小倉東インターから九州自動車道に入ります。
その後は関門橋~中国自動車道~山陽自動車道~中国自動車道~名神高速道路~新名神高速道路~東名阪自動車道と、高速道路をひた走ることになります。

23時20分頃、バスは消灯前の休憩地である吉志パーキングエリアに到着。
ここでは10分間の消灯前休憩が設定されています。
大分交通「ぶんご号」 ・106 吉志PAにて

開放休憩が終った後は、車内が消灯され、翌朝の御在所パーキングエリアでの開放休憩まで就寝タイムとなります。
当然のことながら、乗客は外へ出ることが出来ません。
シートを深く倒して、目を瞑ります。
流石、シートピッチを1,000mm以上確保されていることだけはあって、身長173cmの私でさえ爪先が足受けの一番奥まで届きませんww。
それだけゆったりしているということなのですが、ともかく圧迫感が無い車内でぐっすりと眠ることが出来ました。

翌朝、目を覚ますとバスは亀山ジャンクション付近を走行していました。
6時30分、バスは最後の休憩地である東名阪自動車道御在所パーキングエリアに到着。
ここでは15分間の開放休憩が設定されています。
殆どの乗客がバスを降りてトイレや買い物・洗顔を済ませますが、私はというと・・・web用の写真撮影に集中。
乗務員氏の配慮もあり、それなりのカットの写真が撮影出来ました。
大分交通「ぶんご号」 ・106 御在所SAにて

大分交通「ぶんご号」 ・106 正面

6時45分、乗客が全員揃ったところでバスは出発。
その後はこれといった渋滞に巻き込まれること無く東名阪自動車道~名古屋高速を走行し、終点の名古屋名鉄バスセンターには定刻よりも15分程早い7時25分に到着しました。
大分交通「ぶんご号」 ・106 名鉄BC到着
所要時間11時間30分弱のバスの旅、長く感じるかと思いきや、あっという間に時間が過ぎてしまったというのが正直なところでしょうか。

「古き良き時代」の夜行バスが味わえる車両

というわけで、大分交通「ぶんご号」の乗車記をお届けしました。
先述の通り、今回約15年ぶりに「ぶんご号」に乗車した訳ですが、経年車両とはいえ大分交通106号車の予想以上の快適さにはただ驚くばかりでした。
同時に、バブル期の「なんでもあり」状態の頃の思い出が蘇ってきましたね。
同社の「ぶんご号」初代専用車然り、京王・西鉄の「はかた号」初代専用車、JRバス関東・サンデン交通の「ドリームふくふく号」サロンつきエアロキングなどなど・・・今では考えられない、乗っていて「わくわく感」「充実感」を味わえる車両達。
この様な快適性を重視した車両が、次第に少なくなって来ている気がするのは私だけでしょうか。
ですが、車両価格の高騰、安全保安基準の厳格化、更には厳しいバス会社の懐事情などを考えると、致し方がないのも事実。
その辺のバランスをメーカー・事業者は今後どうクリアしていくのか・・・私としても注目していきたいですね。

ともあれ、「古き良き時代の夜行バスの雰囲気を味わいたい」方には、この大分交通「ぶんご号」専属の106号車はお勧めしたいです。
特にバスファンになりたての「若いバスファン」に是非とも乗っていただきたい車両です。
何か感じ取るものがあるのではないでしょうか。
そんなことを思った、今回の大分交通「ぶんご号」の旅でございました。


【乗車データ】
●乗車日:2013/07/21
●乗車区間:大分新川→名古屋名鉄バスセンター
●運行会社:大分交通
●車両:三菱/KL-MS86MP(西工02MC SD-Ⅰ)
●年式:2002年式
●所属:大分営業所
●社番:106

※現在は運行を終了しています。


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