JR宗谷本線の観光列車「風っこそうや」を見てみる(簡単な乗車記)
その列車とは・・・
JR宗谷本線で運行される「風っこそうや号」
です。
JR東日本のトロッコ型気動車「びゅうコースター風っこ」を借り受け、これにJR北海道の「北海道の恵み」シリーズ車両(キハ40系)を連結した4両編成で運行される「風っこそうや号」。
いったい、どんな観光列車なのか・・・気になった私は、事実上運行開始初日の2019(令和元)年7月28日(日)に現地へ向かい、実際に乗って来ました。
今回はその時の模様をご紹介します。
写真中心で紹介するために長くなりますが、どうかお付き合いいただけると幸いです。
目次
4社協力による観光列車運行プロジェクトの第1弾が「風っこそうや号」
そもそも、何故にJR宗谷本線に「風っこそうや号」が運行されることになったのか・・・。今から遡ること約1年前の2018(平成30)年6月17日に、「JR北海道の事業範囲見直しに係る関係者会議」が開催され、その席上、JR北海道が「JR北海道グループの「経営再生の見通し」(案)」という資料を提示しました。(この資料は、翌日の2018(平成30)年6月18日JR北海道公式サイトでも公開されました。)
この資料において、「インバウンド観光客をターゲットにした収益拡大、外部事業者による観光列車運行による線路使用料収入の確保」が明記されており、それを具現化したのが、2019年2月12日にJR北海道が発表した「観光列車走行プロジェクト」であります。
『JR北海道は、JR東日本・東急電鉄・JR貨物と協力し、道内に観光列車を走らせます~観光列車による道内観光の振興と地域活性化を行います~』(JR北海道ニュースリリース 2019年2月12日 [PDF])
このプロジェクトですが、JR北海道、JR東日本、東急電鉄、JR貨物の4社が手を組み、北海道胆振東部地震の復興応援と北海道の観光振興・地域活性化を目的として実施するもので、
- 2019年にJR宗谷本線で、2020年札幌~道東エリア間で観光列車を運行。
- JR宗谷本線ではJR東日本から「びゅうコースターかぜっこ」の提供を受け運行。
- 札幌~道東エリア間では東急電鉄から「THE ROYAL EXPRESS」の提供を受け運行。
- JR北海道は、運行にかかわる業務、着地でのおもてなし体制への協力、全体統括を担当。
- JR東日本と東急電鉄は、既存の観光列車提供を担当。
- JR貨物は、北海道~本州間の車輛回送運搬を担当。
今年運行される「風っこそうや号」は、この観光列車運行プロジェクトの第1弾であり、JR北海道経営再建に向けた取り組みのひとつであるともいえるでしょう。
尚、「風っこそうや」は2期に渡って運行されることになっており、第1期の2019(令和元)年7月27日~8月12日は稚内~音威子府間で、第2期の2019(令和元)年8月17日~9月8日は旭川~音威子府間で運行される予定です。
運行ダイヤやおもてなしの内容など詳細につきましては、JR北海道公式サイトの「風っこそうや号」特設ページにてご確認願います。
JR北海道「風っこそうや号」特設ページ
https://www.jrhokkaido.co.jp/travel/kazekko-soya/index.html
大賑わいの音威子府駅
乗車当日の2019(令和元)年7月28日(日)、札幌発のJR特急「宗谷」で音威子府へ向かいます。前日、網走から帰って来てばかりで疲れていたのと、スマートフォンなどの電子機器を車内で充電したかったということもあり、今回は奮発してグリーン車にしました。
音威子府までの約3時間、快適に移動することが出来ました。
定刻よりも数分遅れて、列車は音威子府に到着です。
改札を通り駅舎へ行ってみると・・・とにかく人が多い!
駅員や特設売店の店員曰く、「音威子府駅にこんなに多くの人が訪れたのは記憶にないです。」とのことでした。
名物の駅そば「常盤軒」にも行列が出来ていました。
私も並んで天ぷらそばとお土産そば(生そば)を注文。
美味しうございましした。 因みにこの後、後述の稚内発「風っこそうや2号」が到着するな否や、駅そばを求める乗客などで大行列が出来、駅そばは瞬く間に完売したそうです。
駅前には、宗谷バスの旧天北線代替路線「天北宗谷岬線」が。
稚内まで直通する便の様です。
この路線の10月以降の動向が、私としては大変気になります。
暫くすると、稚内からの「風っこそうや2号」が到着します。
本来であれば、2019(令和元)年7月27日(土)が運行初日の予定でしたが、実はこの日、道北地方の大雨の影響で「風っこそうや号」が運休になってしまいました。
ですので、翌日2019(令和元)年7月28日(日)「風っこそうや2号」が事実上の運行初日初列車となります。
「北海道の恵み」シリーズを連結した4両編成で運行
ここで、「風っこそうや号」に使用される車両を見てみましょう。「風っこそうや号」は、JR東日本「びゅうコースター風っこ」をサンドイッチする形でJR北海道「北海道の恵み」シリーズ車両を連結した4両編成で運行されています。
全席座席指定となりますが、実際に座席が販売されるのは2号車と3号車の「びゅうコースター風っこ」車両のみ。
1号車と4号車の「北海道の恵み」シリーズ車両は、フリースペースとして開放されます。
【編成表】※JR北海道公式サイト「風っこそうや号」特設サイトより転載
旭川方面の4号車です。
「道央・花の恵み」(キハ40 1780)が連結されています。
2号車と3号車は、JR東日本「びゅうコースター風っこ」車両です。
キハ48 547・1541を種車として2000(平成12)年に登場しました。
車体側面が大きくなっているのが特長で、外気を存分に感じることが様になっています。
写真は側窓が無い開放状態になっていますが、冬季には寒気対策のために開口部にガラス戸をはめ込んだりすることが出来るそうで、2号車にはだるまストーブも設置されています。
そして、稚内方面の1号車です。
「道北・流氷の恵み」(キハ40 1720)が連結されています。
「びゅうコースター風っこ」車両の外観全体が見られないのは残念ですが、好みや状況に応じて座る車両を変えられるのは、私は大変良いと思いました。
「風っこそうや1号」音威子府を出発!
音威子府駅のホームは、「風っこそうや号」を写真に収めようと、多くの方で賑わっています。「風っこそうや1号」の出発時間も近づいたところで、音威子府村住民有志による出発式が執り行われました。
村長からの挨拶もありました。
そして、出発進行です。
ホームでは、村民有志によるお見送りも。
観光列車に乗っていることを実感します。
心地よい風を感じながら北へ・・・天塩中川では特産品の販売も
13時22分、定刻に音威子府を発車した「風っこそうや1号」は、天塩川に沿って北へ進みます。暫くは遠くの山々や緑が続きますが・・・
やがて、川沿いの風景に変わっていくのも、この区間の楽しみのひとつです。
14時10分、天塩中川に到着。
こちらでは、上り「サロベツ4号」との行き違いのため、20分間停車します。
天塩中川駅の駅舎です。
無人駅ですが、2014(平成26)年の改修工事で、かつての駅事務所は交流スペースに生まれ変わっていました。
ホームでは、停車時間を利用して特産の品の販売が。
中川町のハスカップやはちみつ、ハッカを使用した「ナカガワサイダー」などが販売されており、比較的暑かったことから、サイダーがバカ売れしていました。
中川町のご当地キャラ「じゅえる」です。
やがて、稚内からの旭川行き特急「サロベツ4号」が入線。
20分間の停車時間はあっという間に過ぎ、14時30分に「風っこそうや1号」は天塩中川を後にしました。
天塩川からサロベツ原野、そして利尻富士の車窓もいただきました!
天塩中川を発車したところで、車掌による検札があり、乗車証明書をいただきました。 車掌の方も、「風っこそうや」対応なのか、制服着用ではなく、カジュアルな服装で対応されていました。列車は、引き続き天塩川に沿って北上します。
川沿いを進む列車・・・九州のJR肥薩線球磨川沿いの区間を思い出します。
15時24分、幌延に到着。
こちらの停車時間は僅か1分間でしたが、幌延町のご当地キャラ「ホロッピー」「ホロベー」によるお見送りがありました。
幌延からは、それまでの景色がうって変わって、サロベツ原野が一面に広がります。
15時49分、豊富に到着。
こちらの停車時間も僅か1分でしたが、地元の方によるお見送りがありました。
豊富を発車後、稚内市観光協会の方から記念品の詰め合わせをいただきました。
そして、地元ボランティアによる観光案内が始まります。
その間、「風っこそうや」はサロベツ原野をさらに北上し、終着駅稚内へ向けてひた走ります。
そして、抜海を過ぎると、JR宗谷本線で一番のビュースポット(と私は思っている)”遠くに見える利尻富士”と“海岸線の風景"が見えて来ます。
稚内発の「風っこそうや2号」は生憎の空模様で利尻富士が見られなかったそうですが、運良く晴れたこともあり、利尻富士も海岸線もはっきりと見ることが出来ました。
いや~これが見られて本当に良かったです!
楽しくて心地よい観光列車「風っこそうや号」
海岸線の風景を過ぎると、列車は内陸に入り、そして稚内市街地へと入ります。16時52分、定刻3分遅れで南稚内に到着。
こちらでは数名が下車していきました。
そして、南稚内を発車し減速した列車は、16時58分に終点稚内に到着しました。
稚内では、関係者とご当地キャラ「りんぞうくん」「出汁之介」の出迎えを受けました。
もう少し到着の余韻に浸りたいところでしたが、後発の札幌行き特急「宗谷」や名寄行き普通列車の入線を控えていることから、「風っこそうや」は到着後10分程でホームから離れ、車庫へ回送されていきました。
後発の札幌行き特急「宗谷」と名寄行き普通列車です。
結構な数の「風っこそうや1号」の乗客が乗り込んでいたのが印象に残りました。
稚内でゆっくりしていけば良いのに・・・とも思いましたが、翌日が月曜日で多くの人が仕事なので、急いで旭川・札幌方面へ帰る人も多いのでしょうね。
以上、JR北海道の観光列車「風っこそうや1号」乗車の模様をお届けしましたが、率直にいって「楽しい!!!そして心地よい!!」このひとことでした。
自然の風を感じながら雄大な景色を堪能出来、駅では地元の人や特産品に触れ合える・・・「観光列車ってこんなに楽しいものなのだぁ・・・」と改めて実感しました。
キハ54やキハ261から見る景色とは全く違った景色に見えたのも、個人的には興味深かったです。
そして、もうひとつ印象に残ったのは、ホームでの出迎え・見送りや特産品の販売、手作り感満載のイベントなど、(自治体・住民含め)地元沿線がこの観光列車運行に際して盛り上げようと頑張っている姿勢が至るところで見られたことです。
来年以降、この手の観光列車が運行されるかどうかは、今のところ分かりません。
ですが、今回の観光列車の運行が、地元沿線の方々が自分達の地域公共交通を見つめなおすきっかけになれば、そして持続可能な公共交通の確保・維持のための行動に繋がっていけば良いのかなぁと思った次第です。
最後に、これから「風っこそうや」に乗車される予定の方へ。
稚内~音威子府間の運行はあと3日間を残すのみとなりましたが、北へ行けば行くほど風が冷たく感じますので、出来れば羽織るものを1枚持参した方が良いです。
あと、運行ダイヤの関係上、途中停車駅での停車時間が長いのは「風っこそうや2号」ですが、朝方は霧が発生して遠くの景色が見えない可能性があります。
利尻富士を含めた抜海~南稚内間の素晴らしい景色を堪能したいのであれば、むしろ「風っこそうや1号」の方が良いのかもしれません。
そして、SNSなどの情報によると、直前キャンセルが結構発生しているとのことですので、現時点で指定券が取れなかったとしても、諦めずに粘ってみてはいかがでしょうか。
乗って楽しいJR北海道の観光列車「風っこそうや号」。
お盆明けには旭川~音威子府間の運行が始まります。
機会があれば、是非一度乗車してみてはいかがでしょうか。
応援して頂けると嬉しいです。
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