北海道胆振東部地震から1週間 ~各交通機関の動きをふり返る~

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平常の街並み

2018年9月6日3時08分に発生した北海道胆振東部地震からまもなく1週間。
ようやく日常を取り戻しつつはありますが、それでもスーパーやコンビニは品不足状態、さらに目標2割の節電要求など・・・地震の影響はまだ続いております。

もちろん、道内の各交通機関も大きな影響を受けました。
特に、地震後の大停電から丸2日間は、フェリーを除く空・陸の交通機関がほぼマヒした状態に。
現在でも、その影響は一部残っています。

そこで、今回はまもなく発生から1週間が経とうとしている北海道胆振東部地震における各交通機関の動きを今一度ふり返るとともに、自分なりに思ったことを述べたいと思います。

道内の交通機関は丸2日間マヒ状態に・・・

地震が発生したのは、2018年9月6日(木)の3時08分のことでした。
この時点で1回停電はしたものの、すぐに復電します。
しかし、3時25分頃の余震がおさまった直後に、辺り一帯が停電に。
そして、恐らくこれまで道民が経験したことのないであろう、離島を除く道内ほぼ全域が停電になるという「ブラックアウト」に陥ったのです。

北の空の玄関口はターミナルビルが破損

震源から程近い北の空の玄関口「新千歳空港」は、地震発生後、滑走路及びターミナルビルの点検作業に入ります。
滑走路や管制塔の設備には大きな被害がありませんでしたが、一部のボーディングブリッジ付近の地面が陥没した他、旅客ターミナルビル内で壁の損壊や水漏れが複数確認されたため、地震発生当日の2018年9月6日は、国内線・国際線全て欠航に。
ターミナルビルも終日閉鎖されました。
その後、国内線は翌9月7日午前中に運行を再開するものの、欠航便が多数発生したため、多くの利用者がターミナルビル内に寝泊まりすることになりました。
結局、国内線・国際線が通常通り運航を始めたのは、地震発生から3日目の9月8日になってのことでした。(但し、現在も一部の便で欠航が出ています。)
ANA B787-8 国内線仕様 新千歳空港にて

尚、国内線ターミナルビルは、現在も施設設備の点検・復旧作業を行っています。
2階の物販エリアは9月13日に営業を再開しました、3階の飲食エリア、4階店舗、連絡施設3階、国際線店舗、ホテル及び温浴施設などは引き続き休業となっており、営業再開の見込みは立っていません。

JR北海道は北海道新幹線も完全ストップ

JR北海道 H5系新幹線「はやぶさ」 新函館北斗にて_01

JR北海道 789系「ライラック」 旭川駅にて

JR北海道は、地震発生直後から、北海道新幹線(新函館北斗~新青森)を含む道内全線で運転を休止しました。
「北海道新幹線(新函館北斗~新青森)も?」と思われる方もいらっしゃるかとは思いますが、自前で発電所を所有しているJR東日本などとは違い、JR北海道は電力を全て外部(=北海道電力)からの供給に頼っています。
このため、線路点検や施設点検を行うにも、停電が復旧しないことにはどうにもならないのです。

真っ先に運行を再開したのは、北海道新幹線でした。
9月8日の午後から運行を再開し、続いて札幌~新千歳空港間の快速列車「エアポート」も間引きする形で運行を再開。
その後も停電が復旧したエリアから順次点検を実施し、運行を再開しています。

しかしながら、道内全線で1日以上運休したことや、一部の線区では地震による被害も発生していることから、点検・復旧作業などに時間を要しています。
このため、現在も複数の線区で運転を見合わせており、損傷が発生している日高本線苫小牧~鵡川間を除く道内全線が復旧するのは、早くても9月末日頃になりそうです。(日高本線苫小牧~鵡川間は、線路・設備の損傷が酷いため、運行再開日時が未定となっております。)
また、政府及び北電からの節電要請により、一部の特急列車にて運休が発生しています。
ご利用の方はご注意願います。

⇒ [資料1]今後の運転再開の見込みについて(9月12日現在) ※JR北海道公式サイト

バスもほぼ全社全路線で運休

北都交通「高速はこだて号」 4757_01

沿岸バス「豊富留萌線」 1401_101

鉄道と並んで、道民にとって欠かせない交通機関であるバスも、地震で大きな影響を受けました。
道内ほぼ全域で信号が点灯しなかったことから、運行の安全を確保出来ないとして、停電が復旧するまでの間、ほぼ全てのバス会社が都市間路線を含む全路線を運休するという事態に陥りました。

翌7日から、停電が復旧した地域で順次運行を再開しましたが、安全確保の理由で2日間全路線運休するという事業者も複数ありました。

現在はほぼ平常運行に戻っていますが、地震による道路陥没などの影響で運休や迂回運行を行っている路線があります。

札幌市営地下鉄、札幌市電も停電で運休に・・・

札幌市交通局 東豊線 9000系

札幌市交通局 A1200形「ポラリス」 すすきのにて

札幌市営地下鉄及び札幌市電も、地震発生当日の9月6日は停電で全区間運休となりました。
しかし、札幌市電の主なエリアである札幌市中央区が比較的早く復電したことから、札幌市電は翌7日の11時前に運行を再開。
残る札幌市営地下鉄も、同日14時頃から東西線が運行を再開し、残る南北線及び東豊線も夕方までには運行を再開しました。

フェリーは停電時も平常運航

新日本海フェリー「らいらっく」

唯一、地震の影響を殆ど受けなかったのが、道内と本州及び離島を結ぶフェリーでした。
震源から近い苫小牧東港発着の新日本海フェリー(苫小牧東港~敦賀、苫小牧東港~秋田~新潟~敦賀)や、苫小牧西港を発着する太平洋フェリー(苫小牧~仙台~名古屋)、商船三井フェリー(苫小牧~大洗)、シルバーフェリー(苫小牧~八戸)も平常運航。
地震発生当時、フェリーが道内と本州を結ぶ唯一の交通手段であったということもあり、苫小牧や小樽のフェリーターミナルは数多くの利用者で混雑していたそうです。

各交通機関の動きを見て思ったこと

以上、北海道胆振東部地震における各交通機関の動きを簡単にふり返りましたが、ここからは今回の震災を通じて自分なりに思ったことの中から、以下の2点を取り上げたいと思います。

災害時の情報発信の仕方

今回の震災を通じてまず感じたのは、災害時の情報発信の仕方(=情報の出し方)でした。
一般的に、地震や台風などの災害時に情報を発信するツールとしては、事業者の公式サイトやSNS(Twitter、Facebook)などが挙げられますが、これらツールを上手く活用している事業者とそうでない事業者との差が如実に現れたなぁという印象を受けました。

Twitterでは、地震発生後の道内各バス会社の公式サイトを比較検証されている方も。
このTwitterの書き込みは参考になるかと思います。


一部では、「公式サイトで情報公開していれば問題ない」と思う方や事業者の方もいらっしゃいますが、今回の様な大規模停電において、公式サイトでの情報発信だけでは不十分(厳密にいえば役に立たない)と感じました。
実際に、大規模停電で公式サイトが更新出来ないという事業者も続発しましたし・・・。

東日本大震災以降いわれていることですが、電話回線がつながらなくなった状況下、多くの人がインターネットを利用して家族との連絡や安否確認、避難場所の確認、災害情報の取集、救助要請などを行っています。
特に利用者が多かったのが、TwitterやFacebookをはじめとするSNSです。
「悪質なデマや誤った情報の拡散」というデメリットはありますが、「情報発信・収集の迅速さ」「量の多さ」「繋がりやすさ」という点で、SNS(特にTwitter)が有用なツールであることは今回の地震でも証明されています。

以上を考慮すると、もはや鉄道やバス事業者は情報発信ツールとしてのSNS(特にTwitter)の活用が必須といってもいいのではと思います。
同時に、事業者には「いかに早く」「いかに正確に」「いかに簡潔に」情報を発信するスキルが、これまで以上に求められてくるのではないのでしょうか。

因みに今回の震災では、沿岸バス(@enganbus)宗谷バス(@SOYA_BUS)北都交通(@HOKUTOKOTSU)などが積極的にTwiiterで情報発信を行っていました。

災害時支援施設としてのバス車両の活用

もうひとつ、今回の震災で注目したのが、災害時支援施設としてのバス車両の活用でした。

今回の地震による大規模停電で問題となったものに、「スマートフォン(携帯電話)の充電」があります。
数時間程度の停電であれば大きな問題にならなかったのかもしれませんが、丸2日近くも停電となると、情報収集ツールとして欠かせないスマートフォン(携帯電話)のバッテリー確保は大きな問題になります。

このため、今回の震災では、自家発電で電力が確保出来た公共施設や放送局を中心に、無料の充電スタンドが設置されました。
充電を求める方で大混雑したそうですが、一方で電力が確保出来ずに充電がままならない場所も。

そこで、一部のバス会社では、運休になった都市間路線の車両を使用し、充電スタンドとして住民に開放しました。
最初に動いたのが、稚内市に本社を置く宗谷バスでした。


宗谷バスでは、稚内~札幌線「特急わっかない号」の専用車3台を、稚内市内の公共施設3箇所に配置し、充電スタンドとして住民に開放しました。
同社では現在、都市間路線用車両の充電用USBポートの設置を進めており、これが功を奏す形となりました。

これに触発されたのかは分かりませんが、のちに、帯広市に本社を置く十勝バスでも、帯広~札幌線「ポテトライナー」の専用車2台を、十勝バス本社と帯広駅バスターミナルに配置し、充電スタンドとして住民に開放しました。

野村社長のTwitterによると、駅前には50名程、本社には10名程の方が利用されたそうです。

運休になったバス車両を災害時支援施設として活用する事例は、実は2016年の熊本地震でもありました。
九州産交バス(熊本市)が、運休になった高速バスの車両を公衆トイレとして住民に開放。
当時、熊本市内の多くの地域で断水していたこともあって、多くの住民に喜ばれたそうです。

残念ながら、北海道では道外の事業者程座席コンセント(USBポート)が普及していませんが、運休になったバス車両を災害時支援施設として活用する事例は、もっと広がって欲しいと思いました。

最後に

北海道では現在も余震が続いています。
震源地近くの厚真町、安平町はもとより、私が住む札幌でも、毎日数回余震を感じています。
加えて、電力供給が非常にひっ迫していることから、2割目標の節電も要求されており、最悪の場合は計画停電が実施される可能性もあります。
ブラックアウトが再び起きるとも限りません。
ましてや、真冬に今回の様な事態が発生すれば、全道民の生命すら危うくなってきます。(いわゆる凍死というやつです。)
スーパーやコンビニの品不足状態も完全には解消されていません。
日常を取り戻すには、暫く時間を要するでしょう。

地震発生以降、街中に溢れていた観光客の姿もすっかり消えました。
キャンセルも相次いでおり、観光客の増加で息を巻いていた北海道の経済界は、大打撃を受けること間違いないでしょう。

交通業も例外ではありません。
特に、運休が続くJR北海道は、今回の地震による減収が7億以上ともいわれており、今後の再建計画に多大の影響を及ぼすことはほぼ間違いないでしょう。
観光客(インバウンド)で何とか持っていたバス事業者の中には、倒産する事業者が出て来るかもしれません。

今回の地震で、北海道はかつてない窮地に立たされてます。
けど・・・

「踏ん張るしかない」
「頑張るしかない」

今はこれしかいえません。
北海道全体でこの苦境を乗り越え、復興していくしかないでしょう。

日常がなんとありがたいことか。
日常のありがたさを日々噛みしめながら、一日も早く日常が戻ってくることを切に願い、毎日を過ごしていきます。

2018年 北海道胆振東部地震から1週間 アイキャッチ用 480


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