西日本鉄道(本社:福岡市、以下:西鉄)が、約3年ぶりに高速バスの新路線を開設しました。
今回の行先は・・・関門橋を渡った本州最西端の県、山口県。
その山口県の北部山陰側にある長門市です。
山口県長門市は、隣の萩市と並び、山口県北部の中心的都市のひとつです。
人口は約31000人で、基幹産業沿岸漁業と畜産業。
青海島をはじめとする観光資源を多く抱え、湯本温泉、俵山温泉、湯免温泉、黄波戸温泉、油谷湾温泉という多くの温泉地を抱えている場所でもあります。
特に、湯本温泉は山口県北部では最大の規模で持つ温泉街としても有名です。
この長門市と九州福岡を結ぶ高速バスが、2022年7月1日に運行を開始したのです。
路線の愛称は「おとずれ号」。
長門湯本温泉を流れる「音信川(おとずれがわ)」から命名され、一般公募で決まりました。
にしてつグループが福岡県と山口県を結ぶ路線を運行したのは、1958(昭和33)年3月10日に当時の国鉄とともに運行を開始した「関門急行線」に遡ります。
のちにこの路線は、沿線の民間事業者が共同出資した新会社「関門急行バス」へ移管しますが、やがて路線が廃止。
その後、関門橋経由で下関駅と門司港駅を結ぶ急行便「関門橋線」(サンデン交通と共同運行)や黒崎~秋芳洞線を運行していましたが、これも利用低迷により廃止されます。
時を経て、西鉄とサンデン交通は、2001(平成13)年3月1日に、福岡と下関を結ぶ高速バス「ふくふく天神号」の運行を開始します。
久しぶりの福岡県と山口県を結ぶ高速バスの開設として注目されましたが、今回の「おとずれ号」運行開始は、にしてつグループとしては「ふくふく天神号」に次ぐ福岡県と山口県の間を結ぶ高速バスとなります。
果たして「おとずれ号」とはどんな路線なのか・・・
ということで、先日見てきました。
今回は、その時の模様をご紹介します。
あの道の駅が始発地の「おとずれ号」
前日、東京新宿から西鉄の夜行高速バス「はかた号」(東京新宿~北九州・福岡)で博多バスターミナルにやって来た私。
JR山陽新幹線「こだま846号」(500系新幹線車両)とJR美祢線を乗り継いでやって来たのは・・・
長門市仙崎にある道の駅「センザキッチン」。
海と食をテーマにした大規模な道の駅です。
敷地内には、観光船の発着所と観光案内所があります。
高速バス「おとずれ号」は、こちらのセンザキッチンが始発地となっています。
時刻表も、サンデン交通のバス停に貼られていました。
今回乗車した車両は、こちらの車両。
西日本鉄道博多自動車営業所所属3346号車(三菱エアロエース 2TG-MS06GP)です。
福岡~熊本線「ひのくに号」で使用していた車両を博多自動車営業所に転属の上、「おとずれ号」に充てています。
バスは、青海島にあるサンデン交通長門分所より回送。
15時25分頃、センザキッチンバス停に到着し、乗車改札が行われます。
乗車すると、既に複数の乗客が着席していたため、残念ながら車内の様子を撮影することは出来ませんでしたが、車内は4列シート40人乗り(トイレ付き)の昼行高速仕様となっています。
全席にモバイル充電用USBポートとドリンクホルダーを完備。
所要3時間程度の路線に十分な設備を有しています。
観光客をターゲットにしている路線であることや所要時間などを考慮すると、「ひのくに号」と同様の車内設備でも良いのかもしれませんが、利用客がどう評価するか、気になるところではあります。
長門から博多まで約3時間のバス移動
15時30分 センザキッチン発車
定刻にセンザキッチンを発車したバスは、JR仙崎駅前を通過。
海沿いの景色を眺めながら県道56号仙崎港線を走行します。
10分程で長門市役所前に到着。
こちらで1名の乗客を乗せ、続く長門湯本温泉では、温泉帰りと思わしき乗客が数名乗車して来ました。
長門湯本温泉を発車したバスは、国道316号を美祢市内へ向けて走行します。
長門市と美祢市・山陽小野田市を結ぶ国道316号は、山口県の日本海側と瀬戸内側を結ぶ主要幹線道路のひとつですが、アップダウンがあったりトンネルがあったりと変化に富んでいるのが特徴。
生憎の雨模様ですが、沿線の長閑な風景が旅人に安らぎを与えてくれます。
長門市内に入り、左手に大規模セメント工場が見えたところで、16時20分、美祢インターを通過。
ここから先は、中国自動車道→関門橋→九州自動車道を経由し、福岡市内を目指します。
17時05分~17時20分 吉志パーキングエリアにて開放休憩
16時53分、同じ日の数時間前に西鉄「はかた号」で通過している関門橋を通過。
本州に別れを告げ、九州に入ります。
関門橋を通過して約10分後の17時05分、バスは吉志パーキングエリアに到着します。
吉志パーキングエリアは、福岡県北九州市門司区にある、九州自動車道では最初のパーキングエリア。
福岡~広島線「広福ライナー」などの休憩場所としても知られており、駐車場がそれなりに広いことや、施設が充実していることから、数多くの車やトラックが停車しています。
こちらでは、17時20分までの15分間停車しました。
ラストスパートに向けて、バスもしばしのひと休みです。
18時49分 博多バスターミナル到着
吉志パーキングエリアを発車したバスは、九州自動車道を西進。
夕方の通勤時間帯に差し掛かり、車の量も多くなっていきます。
18時05分、福岡インターを通過。
直結する福岡都市高速道路を10分程走行し、天神北ランプを流出後、福岡那の津地区~天神地区に入ります。
18時27分、西鉄天神高速バスターミナルに到着。
こちらでは約半数の乗客が下車しました。
福岡の夏といえば、もちろん「山笠」。
約3年ぶりの開催となり、街も賑やかです。
7月15日早朝には、恒例の「追い山(笠)」も無事に開催されました。
そして、18時49分、バスは終点の博多バスターミナルに到着。
私を含めた残りの乗客を降ろしたバスは、息つく暇もなく、近くの西鉄博多自動車営業所へ回送されていきました。
長門~博多間の所要時間は約3時間。
昼行高速バスとしては、「ひのくに号」よりも長い”中距離”の部類に入りますが、サービスエリアでの開放休憩もあることから、思っていたよりも長く感じず、景色を眺めているうちに目的地に着いてしまったという感覚の路線でした。
自治体主導(?)の観光地直行高速バス 今後の行方は・・・
以上、西鉄の高速バス新路線「おとずれ号」の簡単な乗車記をお届けしました。
新路線を利用してみての感想ですが、確かに福岡から長門湯本温泉・長門市街へ直行出来る点で便利な路線だと感じました。
一方で、平日を含めた年中の利用が見込めるかというと・・・このままでは、そう遠くないうちに土日祝&繁忙期限定運行になるのではと感じました。
年中通しての観光客の集客がきちんと出来るのかどうか・・・ここが「おとずれ号」の路線としての成長の鍵だと私は思います。
ご存知の方も多いかと思いますが、実はこの路線、長門市からの要請で路線開設の計画が立てられ、運行開始にこぎつけたといわれています。
コロナ禍明けに向けての長門市や長門湯本温泉の観光需要活性化が目的ですが、この手の路線で重要なのは、いかに自治体と事業者が上手く連携して観光客を集客するかいう点です。
集客が上手くいけばこれに越したことはありませんが、仮に集客が上手くいかないとなると、下手をすれば短期間で路線が廃止・・・ということにもなりかねません。
事例が少し違うかもしれませんが、実は現地のタクシー会社で新山口駅~センザキッチン間のジャンボタクシーを運行しています。
移動アクセス手段を確保するという点で考えると、必ずしもバスにこだわる必要もないわけで、「バス1台が埋まる程の利用者数は見込めないが、観光地へのアクセス手段をどうしても確保したい」ということであれば、一部運行日(または全日)を乗合タクシーに切り替えるというのもアリなのかなぁと、新山口駅~センザキッチン間のジャンボタクシーの事例を見て思いました。
このご時世、ある特定の交通機関に固執することなく、あらゆるモード(交通手段)と連携して観光アクセスを確保するといった観点も必要なのかもしれません。
もうひとつ気になる点があるとするならば、美祢市内を走行するにもかかわらず、美祢市内には一切停車しないという点でしょうか。
素通りするのも勿体無いとも思いましたが、恐らく山口側事業者のことを考慮してのことなのでしょう。
繰り返しにはなりますが、この「おとずれ号」については、長門市と西鉄がいかに上手く連携して観光客の集客が出来るかにかかっているという印象を強く受けました。
折角開設された高速路線なのですから、利用客が少しでも増え、皆様に親しまれる高速路線に成長をすること切に願いたいものです。
機会がありましたら、また是非乗車してみたいと思います。
【乗車データ】
- 乗車日:2022/07/05
- 乗車区間:
センザキッチン(長門市仙崎)→博多バスターミナル - 運行会社:西日本鉄道
- 車両:三菱/エアロエース(2TG-MS06GP)
- 年式:2019年式
- 所属:博多自動車営業所
- 社番:3346
【おまけ】動画にしてみました
現在、Youtubeにて公開しています。
宜しければご覧いただけると幸いです。



