前回、西日本鉄道(本社:福岡市、以下:西鉄)の新ツアーブランド「GRANDAYS(グランデイズ)」の専用車を使った「有田」「波佐見」日帰りツアーの模様をご紹介しました。
「新しさ」「ひとつ上のサービス」「上質な旅」がコンセプトの「GRANDAYS」ですが、実は西鉄にはもう一つ、「地域」と「乗り物」を活用したコンテンツがあります。
それが、今回ご紹介する観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」です。
「LOCAL to TRAIN~街を繋いできたレールは人をつなぐ時代へ~」がコンセプトの「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」。
沿線の伝統工芸や季節のグルメを車内でたっぷり楽しみながらプチ旅行が出来るということで、現在でも時期によっては予約が取りにくいといいます。
実は私、この列車にも以前から乗車してみたいと思っていまして、時期を窺っていたのですが、「GRANDAYS(グランデイズ)」日帰りツアーの約1か月前に乗車する機会を作り、現地へ乗りに行きました。
今回は、その時の模様をご紹介します。
地域を味わう旅列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」。
いったいどんな列車のでしょうか。
約4年越しの観光列車運行計画が遂に具現化
そもそも、西鉄が天神大牟田線に本格的な観光列車の運行を検討すると発表したのは、今から4年前の「2015年度西鉄グループ事業計画」であったと記憶しています。
約3年後の2018(平成30)年1月には、観光列車のネーミングや車両概要、デザインが発表。
そして、その3か月後の2018(平成30)年4月には、列車内で提供される料理の概要および運行ダイヤが発表され、計画の発表から約4年が経った2019(平成31)年3月23日に、「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」は多くの方の期待を胸に運行を開始したのです。
チェック柄の車体に独特のロゴ 特別感満載の列車
「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の最大の特長は、「赤いチェック柄の車体デザイン」と「沿線地域の食材を生かした美味しい料理」といえるでしょう。
ベース車両は、同社の通勤型列車として現在も活躍してしている6050形。
この6050形の1編成を4両編成から3両編成に変更した上で、外装、内装ともに大幅な改造を施しています。
外観デザインは、キッチンクロスをイメージした赤いチェック柄。
料理を楽しんでいただける列車であることや清潔感を表現しているそうですが、一見シンプルながらも細かなところでこだわりを持った手法を取り入れるなど、一目で特別な観光列車であることが分かるデザインになっています。
一方の内装は、八女の竹を使用した竹編みの天井や城島瓦、大川家具、アーティストが描く筑後川など、沿線の地域資源を生かしたデザインが特徴です。
客席定員は52人(1・3号車:22人、2号車:8人)となっており、このうち、中間車両の2号車には、ビザなどを焼く窯をメインとした大型キッチンを設置しています。
1号車と3号車にはトイレも完備しています。
そして、提供される料理も「沿線地域の食材」がテーマ。
ランチとディナーは、地元産の食残をふんだんに使用した四季毎に異なるコース料理が提供される他、ブランチメニューでは地元で人気のパンと旬野菜のスープ、旬の果物、オリジナルブレンドコーヒーが楽しめます。(写真はランチコースの一例)
提供される料理の一例(2020年夏メニュー)
地域を味わうランチの旅「CHIKUGO LUNCH COURSE」に参加してみる
今回私が参加したのは、西鉄福岡(天神)駅を昼前に発車する“地域を味わうランチの旅「CHIKUGO LUNCH COURSE」”。
大牟田発のディナーコースでも良かったのですが、昼間の景色を楽しみたいということもあり、ランチコースにしてみました。
乗車するまで
「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」に乗車するには、基本的に専用予約ページ(https://reserve.railkitchen.jp/)から予約・決済する必要があります。
但し、「地域を味わうブランチの旅」については、(空席がある場合のみ)運行当日に西鉄福岡(天神)駅チケットカウンターにて購入することが出来ます。(販売時間:8時00分~9時15分、当日の電話予約不可。座席が無くなり次第終了。)
予約は、運行日2ヶ月前の1日午前10時から運行日7日前17時まで受け付けており、決済はクレジットカード決済かコンビニ決済のいずれかになります。
代金は、ブランチコースが3,300円、ランチコースとディナーコースが8,800円(いずれも税込)となっています。
そして、ランチコースとディナーコースご利用の方限定にはなりますが、乗車日に限り天神大牟田線・太宰府線・甘木線全駅で自由に乗り降り出来る乗車券「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO 限定1日乗車券」も発売しています。
発売金額は、大人550円、小児280円(税込)。
西鉄福岡(天神)~大牟田間の普通運賃が1,200円ですので、帰りも西鉄電車を利用して福岡へ戻りたい・・・という方は、この乗車券を利用した方がお得です。
11時35分過ぎ 西鉄福岡(天神)駅にて
西鉄福岡(天神)駅のチケットカウンターにて先述の「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO 限定1日乗車券」を購入後、有人改札窓口にて「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」乗車券の代わりとなるメールを提示してホームに入ります。
「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」は、既に入線していました。
早速、乗車します。
指定されたテーブルです。
レシピカードのやドリンクのメニュー表も置いてありました。
そうこうしているうちに、「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の発車時刻となりました。
11時50分 西鉄福岡(天神)駅発車
発車直前、クルーの方が発車の合図となるトライアングルを鳴らし、ドアが閉まります。
そして、11時50分、定刻に「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」は西鉄福岡(天神)駅を発車します。
約2時間の非日常に誘う旅の始まりです。
発車後、間もなくしてウェルカムドリンクが運ばれて来ます。
乗車当日のウェルカムドリンクは、あまおうのスパークリングワインとフルーツジュースのいずれかを選ぶことが出来ましたが、私は迷わずあまおうのスパークリングワインを選択。
乗客全員で乾杯し、あまおう独特の甘い香りがするスパークリングワインの味を楽しみます。
初めて飲みましたが、私好みの味でした。
暫くして運ばれてきたのは、とうもろこしと胡瓜の冷たいスープ。
柳川産とうもろこしと八女産の胡瓜を使用しているとのことですが、とうもろこしならではの甘さと胡瓜のさっぱり感がミックスして、味的にも飲みやすいスープでした。
続いて運ばれてきたのは、ベジタブルプレート。
うきは産のズッキーニや茄子などを使ったスカペーシェと、同じくうきは産卵やドライトマトなどを使ったゆで卵のドライトマトソース、そして同じくうきは産の桃やマスカットなどを使ったカプレーゼが一皿に盛り付けられています。
どれも美味しかったのですが、印象的だったのはズッキーニの美味しさ。
私自身、ズッキーニは普段食べないのですが、調理の仕方でこんなに美味しくなるのものなのか・・・と、新たな発見をした気がします。
12時30分頃 筑紫駅停車
12時30分頃、筑紫駅に停車。
筑紫駅といえば、駅舎内に乗務所がある他、隣接して筑紫車両基地があることでも有名です。
職員の方々が手を振って見送る中、この様な横断幕を掲げる職員の方も。
そういえば、今楽しんでいる夏メニュー、スタートしたばかりでしたね。
ベジタブルプレートを食したところで、もう少しお酒が飲みたいと思い、メニューを見てみると・・・なんと1,800円(税込)でお好きなドリンクを3杯呑めるセットがあるではありませんか!
早速注文し、1杯目は「うきはフルーツエール」という、うきは産のぶどうと麦芽を使用したクラフトビールを頼みました。
口当たりの良い、さっぱりとした味で飲みやすかったです。
ビールを飲みながら景色を見ているうちに、肉料理が運ばれて来ました。
うきは産の耳納いっーとんという豚肉を、赤ワインと野菜やニンニク、シナモンなどで煮込んだものですが、とにかく肉が柔らかい。
そして、シナモンとニンニクを効かせた味わいがくせになりそうでした。
暫く走ると、沿線の方々が手を振る姿を見かけます。
特に、この辺りにある「たこやき工房じゅん」のご夫婦がいつも手を振って下さっているとか。
話には聞いていましたが、車内がさらに和やかになったひと時でした。
13時00分頃 花畑駅停車
筑後川を渡った「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」は、久留米市に入ります。
そして、13時00分頃、花畑駅に停車。
こちらではホームに降りることが出来るとのことでしたので、ホームに降りてみました。
駅名標は「花畑」という駅名の通り、花畑らしさを表現したデザインになっています。
両面でデザインが異っているのも特徴のひとつで、片面が「ガーベラ」と「コスモス」の造花を、もう片面が「クルメツバキ」の造花を敷き詰めているとのことでした。
2号車のサイドロゴです。
この様になっていたとは・・・。
列車の中で食する焼きたてのピザは格別!
花畑駅を出発したところで、2杯目のアルコールを頼みます。
2杯目は、ウェルカムドリンクとして味わったあまおうのスパークリングワイン。
どうもこの味が気に入ってしまった様です・・・。
そうこうしているうちに、メインともいえるズッキーニと大葉のピザが運ばれて来ます。
これもまた、ズッキーニと大葉の美味しさが感じられる逸品で、しかも焼きたてですから、美味しくないわけがありません。
久しぶりに美味しいピザというものを味わった気がします。
ピザを食べ終えたところで、3杯目のアルコールを頼みます。
3杯目は、「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」オリジナルカクテル。
詳細は忘れましたが、モヒート系のカクテルでした。
さっぱりしていて飲みやすかったです。
食後のデザートは、うきは市吉井町にあるカフェ&ケーキショップ「miel」のアイスケーキ。
ブルーべリーとミント、そして上にのっているクッキー(?)のアクセントが個人的には絶妙だと感じました。
最後に出されたハーブティーは、ほうじ茶とレモングラスが入った「The Adventure」。
フローラルな味わいが特徴とのことでしたが、こちらも飲みやすかったです。
飲んで食べてお腹も満足になりました。
そんな中、「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」は長閑な風景の中を大牟田へ向けて南下。
約2時間の非日常な時間も、あと少しで終わろうとしています。
14時14分 大牟田駅到着
西鉄福岡(天神)駅を発車して2時間20分あまり経過した14時14分、「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」は定刻に終点大牟田駅に到着しました。
食事を楽しんでいるうちに着いてしまったという感覚。
もう少し乗っていたい気もしますが、とりあえず降ります。
この後列車は、約2時間の停車時間を使って福岡行きディナーコースに向けての準備を行います。
記念写真を撮っているご夫婦も。
ご夫婦にとって良い思い出になるといいですね。
大牟田駅西口に出てみました。
三池港行き路線バス(島原行き高速船に接続)に乗車される方は、こちらの出口が便利です。
西口広場へ行ってみると・・・かつての西鉄大牟田市内線で活躍していた車両「200形電車204号」が静態保存されていました。
聞くところによると、西鉄大牟田市内線は1927(昭和2)年に大牟田電気軌道の路線として旭町~四ツ山間で開業し、その後、同社の九州鉄道への吸収合併などを経て、1942(昭和17)年の九州電気軌道の西鉄への社名変更以降は西鉄大牟田市内線として運行されていたそうです。
しかし、1952(昭和27)年1月6日に全線が休止となり、1954年に廃止。
約25年の歴史に幕を閉じたのでありました。
静態保存されている204号は、1943(昭和18)年に関西で製造された車両。
実に77年も経過しているわけで、凄いとしかいいようがありません。
大牟田市内線廃止後は、福島線(久留米~八女福島)や福岡市内線で活躍後、山口県光市の市立図書館の児童図書室に活用されていたそうですが、2011(平成23)年に大牟田への里帰りが実現し、現在に至っています。
地元の方の努力の賜物だとは思いますが、状態の良さにびっくりすると思います。
もし大牟田へ立ち寄った際は、是非一度ご覧になられてはいかがでしょうか。
これまでの観光列車とは一線を画す「沿線地域」重視の列車
以上、西鉄の「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」ランチコース乗車の模様をお届けしました。
私自身、回数としては少ないながらも、観光列車にはいくつか乗車して来ましたが、西鉄の「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」は、これまで乗車した観光列車とは一線を画す列車だと感じました。
中でも印象的だったのは、「沿線地域」「地域密着」を強く打ち出している点。
車両の内装しかり、提供される料理やお酒しかり、あくまで地元産メインで揃えている点や、手を振る西鉄社員や沿線住民の姿を見るに、この列車を地域のシンボルとして育てようとしている気概を強く感じました。
そして、もうひとつ感じたのは「あったかさ」です。
車内の造りしかり、スタッフ・車掌の応対しかり、沿線住民の方々の笑顔しかり・・・家にいる様な落ち着く「あったかさ」を感じるんですよね。
「安過ぎず高過ぎず」のバランスが取れた価格設定も、個人的には好印象でした。
”束の間非日常を味わう”という点においては、手を出しやすい価格帯ともいえましょう。
強いて課題を挙げるとするならば、料理の質を含めて「飽きさせないコンテンツをどこまで提供し続けることが出来るのか」ということでしょうか。
料理を含めたサービスがパターン化されてしまうと、いずれは飽きられます。
出来るだけパターン化させずに質の高い料理を今後も提供し続けることが必要でしょう。
そして、列車以外のコンテンツ(バスや川下り、観光施設など)と上手くコラボさせて面白い旅を提供していくことも、今後は必要になって来るのではないでしょうか。
個人的には、当初の計画にもあった豪華バス(前回ご紹介した「GRANDAYS」のことを指す?)とリンクさせたツアーの提供も期待したいところです。
色々と書きましたが、料理も美味しくお酒も呑めて、束の間の非日常を楽しめた2時間でした。
機会があれば、また是非乗ってみたいですね。




