西鉄の「福岡都心連節バス」を見てみる
福岡市と西日本鉄道(以下:西鉄)の共働事業として2015年に計画が動き出した「福岡都心BRT構想」。
その第1弾として、連接バスを使った試行運行が2016年8月8日より開始されました。
連節バスを使った都心のバスシステムが注目されている昨今、「折角福岡を訪れるのであれば、連接バスの試行運行を是非一度見ておきたい」という気持ちが強まり、早速現地へ向かい見て来ました。
そこで今回は、この連節バス試行運行について紹介します。
【おことわり】
- 今回ご紹介する連接バスを使った試行運行について、福岡市と西鉄では「福岡都心BRT」と謳っていますが、現時点においてBRTの本来の趣旨(Bus Rapid Transit。バス専用車線、バス専用道路、車外運賃徴収、交差点での優先システムを有し、乗降口の高さも考慮されている)から一部外れていることから、本記事では「福岡都心連節バス」という表記に統一させていただきました。
- 本記事で掲載している画像につきましては、原則公道上から撮影しています。
目次
天神地区再開発に伴うマイカーの都⼼部への乗り⼊れ抑制が主たる目的
まずは、何故にこの都心連節バス計画が持ち上がったのか、経緯を含めて振り返ります。福岡都心の中心地である天神地区は、博多駅地区と並んでビル群が立ち並ぶ「福岡の顔」的場所でありますが、この天神地区が「天神ビッグバン」と呼ばれる再開発によって、近い将来多くのビルが生まれ変わります。
10年間で30棟のビルが建て替わる予定で、床面積が1.7倍に増加する計画です。
これにより、新たなビジネスやショッピングをはじめとする交流や活動が生まれると予想されています。
そこで問題となるのが、都心部へのマイカーの流入増加です。
マイカーの都心部への乗り入れに如何に対応していくか・・・。
これに対応すべく、福岡市では、マイカーを都心周辺の駐車場に停めていただき、都心部は公共交通ネットワークで効率良く繋ぐという考え方を発表。
そのシンボリック的存在として、分かりやすくデザイン性の高い連節バスを導入し、都心部とその周辺部にある駐車場を結び、天神、博多、ウォーターフロントの都心3拠点間を繋ぐことで、スムーズに公共交通で移動出来る様にする・・・
これが「福岡都心BRT構想」であります。
都心循環型連節バスシステムの導入で、福岡市側では
- バスの定時運行、走行環境の改善
- 連接バス導入による大量輸送、輸送の効率化
- バリアフリー効果
- ⾃動⾞から公共交通への転換、バス路線の再編
- 情報案内の強化
具体的な計画が発表された後、2015年夏頃より他社所有の連節バスを使った試験運行を繰り返し、その後西鉄が導入した連接バスでの試験運行を実施した上で、導入に問題が無いことなどを確認し、今回の試行運行にまでこぎつけました。
当初は6月頃に試行運行を開始する予定でしたが、運賃を巡って福岡市と西鉄両者間の調整に時間を要したため、試行運行開始が8月にずれ込みました。
尚、この事業の一部については、低炭素化に向けた公共交通利用転換を図るため、環境省所管の「平成27年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」を活用しているそうです。
欧州車製独特の乗り心地と遠くからでも目立つシンプルなデザイン
やって来たのは、JR博多駅目の前の博多駅Fのりば。西日本シティ銀行本店前といえば分かるでしょうか。
連節バス専用のバス停も新設されました。
ここからの連節バス実見とその後の志賀島訪問は、新宮じゃーなる様が同行してくれました。
まず最初に乗車したのは、博多駅Fのりば10時10分発の便。
付近の道路は渋滞気味でしたが、バスは定時ギリギリに到着しました。
私達は後部車両から車内に入りましたが、後部車両扉付近にICカードリーダーと簡易運賃箱(後術)が設置されている関係上、後部車両扉付近には誘導・案内役として西鉄観光バスのガイドさんが添乗しています。
車内の様子はこちら。 基本的な構造は、新潟市(新潟交通)で導入された連節バスとほぼ同じですが、黒を基調とした新潟仕様とは異なり、こちらはグレーを基調とした内装になっています。
しかも、今回導入された2台共に内装のデザインを変えているとか。
乗客の反応を見た上で、今後導入される予定の増備車両の内装を決めるのでしょうか・・・。
車内数箇所に設置されている窓割り用ハンマーです。
この車両には非常口が無く、非常時にはこのハンマーを使って窓を割り脱出することになります。
欧州車らしいといえばらしいですね。
ハンマーを外した時点で警報音が鳴りますので、非常時以外は触らないようにしましょう。
後部車両出入口付近に設置されたICカードリーダーと簡易運賃箱です。
簡易運賃箱は両替が出来ないため、両替が必要な方は事前に両替しておくか、降車時に前部車両出口から降車することになります。
尚、後部扉は起終点のみ使用されるため、途中停留所から乗車する場合は、従来の路線バスと同様に前部車両の入口扉から乗車する必要があります。
バスは博多駅Fのりばを発車後、大博通りを真っ直ぐひた走ります。
突当りを右折後、最初の停留所である国際会議場・サンパレス前に停車。
その後今度は左折し、マリンメッセ前に停車後、終点の博多港国際ターミナル(中央ふ頭)バスのりばには10時33分に到着します。
その間約20分。
あっという間に到着です。
乗り心地も、欧州車らしく若干固めのサスペンションながらも不快に感じない安定した乗り心地が特長といったところでしょうか。
所要20~30分程度の路線であれば全く問題ないと感じました。
折角なので、中央ふ頭の待機場所で連接バスをじっくり見てみることにしました。
待機場には連節バスが2台並んでいます。
画像右側が今回乗車した0101号車、左側がもう一台の0102号車です。
車両は新潟市の連節バスと同様の「スカニア-ボルグレン製」を選択。
全長は18m、ボディはオーストラリア、車台はスウェーデン製です。
所属は愛宕浜自動車営業所です。
今回乗車した0101号車の外観です。
ホワイトをベースにイエローのアクセントを配置した、シンプルながらも目立つ外観になっています。
鋭い目ながら曲線を上手く使った前面は、何処となく愛らしさすらも感じます。
それにしてもさすが連節バス、遠くから見ても長いですね。
こちらは相方の0102号車です。
外観は全く同じですが、内装が0101号車と異なっており、0102号車の内装は赤とグレーのシート柄が特徴です。
博多港国際ターミナル付近の交差点を通過する連節バス0101号車です。
曲がる時の迫力は、連節バスならではといえましょう。
天神付近の大渋滞で出発が遅延
ここで福岡都心連節バスとは一旦お別れして、博多ふ頭へ移動後、西鉄バス宗像の「志賀島ぐりーん」を見るために志賀島へ移動。(「志賀島ぐりーん」については次回ご紹介します。)
志賀島から戻って来た後、今度は天神ソラリアステージ前のバス停へ移動して、天神15時10分発の連節バスに乗車します。
ところが、この日は天神地区の道をが大渋滞。
何時まで経ってもお目当ての連節バスが来ません。
博多駅からの回送に時間を要しているようです。
結局、連接バスが天神ソラリアステージ前に到着したのは、定刻よりも10分以上遅れた15時25分のことでした。
バスは天神北~那の津通を経由して国際会議場・サンパレス前、マリンメッセ前に停車後、博多港国際線ターミナルへと向かいます。
こちらも所要時間は20分弱とあっという間です。
感覚的には博多駅からよりも近いかもしれません。
終点博多港国際ターミナルに到着した連節バスです。 この後バス待機場で1時間程休んだ後、この日の最後の運用に就きます。
循環運行へ移行後の定時運行確保が課題!?
というわけで、試行運行を開始した西鉄の福岡都心連節バスをざっと見て回りました。「かつて福岡市内で活躍していた連節路面電車を思い出す」という声が挙がる程、今回デビューした連接バスは多くの方にインパクトを与えました。
今後、連節バスは福岡の街の新たなシンボルとして活躍していくことになりますが、シンプルながらも目立つ車体デザインは、今後徐々に受け入れられていくのではないでしょうか。
今回実際に乗車してみて、当初計画の循環運行ではなく往復運行で始めたことや、誘導・案内役としてガイドさんを添乗している点など、先行の新潟での事例(反省点)を生かしているなぁという印象は受けました。
専用の停留所も、シンプルながら最低限必要な情報はきちんと提供していると感じました。
一方で、今回の乗車を通じて気になった点が2つありました。
一つは、後部車両の出入口扉の扱いについてです。
先述の通り、現在は西鉄観光バスのガイドさんを添乗させていますが、今後本格運行へ移行した際は完全ワンマン運行になる予定です。
現行では後部車両の出入口扉は起終点のみの取り扱いになっていますが、本格運行の際はどうするのか、そして運賃の収受方法はどうするのか、現行の方式のままで行くのか、それとも変えるのか・・・本格運行の際は停留所が増える予定であるだけに、気になるところであります。
この辺については、試行運行の結果を精査して決めることになろうかとは思いますが・・・。
そしてもう一つは、循環運行に移行した際の時刻設定についてです。
現在の運行時刻をご覧いただきたいのですが、現在の運行経路と時刻はあくまで試行段階であり、2016年9月以降は現在回送扱いになっている博多駅~天神間も営業区間にして、博多港⇔博多駅⇔天神⇔博多港という経路で循環運行することになっています。
この場合、運行時刻の組み方を相当工夫しないと、遅延が増幅して下手をすれば新潟の二の舞になりかねないのでは?と感じました。
あくまで想像ですが、今回往復運行という形で試行運行を始めたのは、事前準備不足で混乱(遅延とシステムトラブルが発生)した新潟の二の舞を避けると同時に、博多駅~天神間の実際の回送時間を予め把握しておくことで、循環運行へ移行する際の時刻設定の参考にする目的があるのではと思います。
博多駅地区及び天神地区の渋滞をどう読むのか・・・難しいところではありますが、おいそれ専用レーンの設置がすぐには難しい今日においては、現在実施している試行運行のデータをきちんと精査した上で、出来るだけ利用者にストレスを与えない、ある程度余裕のある時刻設定をお願いしたいものです。
計画の発表から1年が経過し、ようやくスタートした「福岡都心連節バス」の運行。
最終的には連節バスを15台にまで増台し、10分間隔で運行することになっていますが、福岡市と西鉄ではいくつか段階を踏んだ上で本格運行へ移行するそうです。
解決すべき課題は多いかと思いますが、諸外国や日本国内の事例、更には試行運行のデータをきちんと精査して、利用者にとって使いやすく便利な交通システムに仕上げていって欲しい・・・そう感じた今回の「福岡都心連節バス」の乗車でございました。
「福岡都心連節バス」については今後も引き続き注目していきたいと思います。
【乗車データ】
- 乗車日:2016/08/19
- 乗車区間:
博多駅Fのりば→博多港国際ターミナル - 運行会社:西日本鉄道
- 車両:スカニア/ボルグレン
- 年式:2016年式
- 所属:愛宕浜自動車営業所
- 社番:0101
- 乗車日:2016/08/19
- 乗車区間:
天神ソラリアステージ前(2A)→博多港国際ターミナル - 運行会社:西日本鉄道
- 車両:スカニア/ボルグレン
- 年式:2016年式
- 所属:愛宕浜自動車営業所
- 社番:0101
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