沿岸バス「31 サロベツ線」(豊富駅~稚咲内第2) 惜別乗車
沿岸バス(本社:羽幌町)の路線バス「31 サロベツ線」。
北海道ならではの雄大な景色が楽しめる「知る人ぞ知る」的な路線でしたが、残念ながら2021(令和3)年3月31日をもって運行を終了しました。
沿岸バス「31 サロベツ線」については、系統番号が付与される前の2013(平成25)年6月に乗車した時の模様を、このブログにて紹介しました。
その後、この路線は書籍「秘境路線バスをゆく」にも紹介された他、北海道総合政策部交通政策局交通企画課が企画した事業「バスタビ北海道」(のちにこの事業は北海道バス協会が引き継いで継続中)でも紹介されております。
実は今般、路線が無くなるということで、運行終了直前の2021年3月29日、惜別乗車をしに現地を訪れました。
今回は、その時の模様を簡単に紹介します。
沿岸バス「31 サロベツ線」は、JR宗谷本線豊富駅と稚咲内(わかさかない)第2の間を結ぶ、全長14.2kmのローカル路線バスです。
沿岸バスの公式サイトやTwitterの書き込みなどによると、この間の路線バス運行を開始したのは1955(昭和30)年9月20日。
当時は「稚咲内線」として運行を開始しています。
戦前の稚咲内地区の主たる産業は農林業でしたが、1949(昭和24)年に北海道総合政策で同地区が未開発魚田地に選定されて以来、人口が急激に増加、路線バスの整備が急務になったそうです。
1967(昭和42)年には、丸山と豊徳の間に位置するサロベツ原野に、「原生花園」停留所(現在の「サロベツ原生花園」停留所)を新設。
運行系統名を「稚咲内線」から「サロベツ線」に改めます。
この頃より、観光客の利用が右肩上がりに増えていき、利尻礼文国定公園がサロベツ原野を含む「利尻礼文サロベツ国立公園」に制定された最盛期の1974(昭和49)年には、年間輸送人員が4万人を突破します。
しかしながら、以降は年々利用者が減少。
1983(昭和58)年には、年間輸送人員がピーク時の半分以下の15,467人にまで落ち込んだため、「サロベツ線」の乗合運行を廃止し、一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス)にもとづく廃止路線代替バスとして運行を始めます。
2005(平成17)年、サロベツ原野がラムサール条約に登録されます。
同年、豊富西5条5丁目~サロベツ原生花園~稚咲内第2の間で停留所以外で乗降可能なフリー乗降を開始した他、2007(平成19)年には、法改正により「サロベツ線」の輸送形態を再度路線バスに移行します。
その後、サロベツ湿原センター開業に伴う停留所の移設・名称変更など、利便性向上を図りますが、沿線の過疎化や住民の高齢化などの理由で利用客は減少。
2019年度の利用者数は、1,135人までに落ち込んだそうです。
近年は、「みなし4条市町村単独補助路線」として、豊富町から補助金の交付を受けて運行していましたが、この度、豊富町・沿岸バス間の協議により廃止が決定。
そして、多くの方に惜しまれつつ、2021(令和3)年3月31日の最終運行をもって、66年の歴史に幕を下ろしたのです。
羽幌町内のホテルで一泊し、翌朝、同社「11 豊富羽幌線」始発便でJR豊富駅へ向かいます。
目覚めの羽幌町の朝。
運行終了を惜しむ涙雨なのか、はたまた単に私の行いが悪いのかは分かりませんが・・・外は生憎の雨でした。
羽幌から2時間半程で、バスは豊富駅に到着。
ひと息つく間も無く、すぐさま乗り換えです。
今回私が乗車したのは、豊富駅09時15分発の便。
こちらのバスが充てられていました。 いすゞエルガワンステップです。
首都圏事業者から来たと思わしき車両ですが、同社がいすゞブランドの車両を導入したのは、私が記憶する限りではこの車両が初なのではないでしょうか。(違っていたらゴメンナサイ。)
平日ということもあり、乗客は私一人かなぁと思いきや、私と同様の惜別目的の乗客が他に4名いました。
考えることは同じですね(笑)。
バスは、道道397号豊富停車場線から国道40号線を通り、豊富郵便局前の交差点を右折後、道道444号稚咲内豊富停車場線を西へひた走ります。
豊富市街地を抜けると、「これぞ北海道」というべき雄大な景色が、車窓一面に広がります。
天気が良ければ最高ですけどね。
サロベツ湿原センター付近からは、サロベツ原野が一面に広がります。
生憎の天気ですが、天気が良ければ、写真の様な美しい景色が楽しめます。
遠くには、利尻富士(利尻島)も見ることが出来ます。
今回、これが見られなかったのが残念でなりません。
バスは、20分程で、終点の稚咲内第2に到着。
私を含め、乗客全員が思い思いの構図で記念撮影を行います。
このバス停が見られるのも、あと僅かです。
同じバスで、豊富駅に戻ります。
バスの前面には、運行終了を知らせる特製の掲示物も。
因みに、この掲示物に登場している萌っ子さん、実は来る5月1日から始まる「萌えっ子第13シーズン」に登場する新キャラクターだそうで、名前は「ソフィー・アファナシエフスカヤ」さん(通称:そーやさん)。
ロシア出身の25歳だそうです。
ついに沿岸バスも、外国人のバスガイドさんを雇う様になった様です(笑)。
そして、10時15分頃、バスは豊富駅に到着。
乗客を降ろし、回送されていくバスの後ろ姿を見ながら、私はしばし感傷に浸っていました。
その後は、「31 サロベツ線」で乗車したバスや沿線の風景などを思い出しながら、沿岸バス「32 豊富幌延線/12 幌延留萌線」と北海道中央バス「高速るもい号」を乗り継いで帰路についたのでありました。
ですが、1泊2日という短い時間にもかかわらず、現地にてお別れが出来たのは、自分なりの区切りが出来たという点で「やはり来て良かった!」と思いました。
聞くところによると、運行最終便は、道内外からの惜別乗車や沿線の皆様によるセレモニー(有志の皆様による暖かいココアの差し入れや沿線の子どもたちによる手製の旗、鍵盤ハーモニカによる蛍の光の演奏など)もあったそうです。
ひっそりと運行を終える路線も少ない中、この様な最後を迎えることが出来たのは、地元にとって無くてはならない会社であることの証左なのかもしれません。
この路線ですが、サロベツ原生花園を経由することから、夏期と冬期で便数に変化をもたせるなど、観光路線としての側面もありました。
一面に広がるサロベツ原野に、遠くに霞む利尻島・・・「これぞ北海道!」という景色が楽しめる、私にとって好きな路線のひとつでした。
それだけに、運行終了は正直残念ではありますが、昨今の厳しい状況を考えると、致し方がないのかなぁと思います。
66年間、本当にお疲れ様でした。
そして、ありがとうございました。
【乗車データ】
【おことわり】
本記事の執筆にあたっては、北海道新聞の記事、沿岸バス公式サイト及び同社公式Twitterを一部参考にしております。
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北海道宗谷管内の豊富町内にて運行していた
北海道ならではの雄大な景色が楽しめる「知る人ぞ知る」的な路線でしたが、残念ながら2021(令和3)年3月31日をもって運行を終了しました。
沿岸バス「サロベツ線」(2013年6月撮影)
沿岸バス「31 サロベツ線」については、系統番号が付与される前の2013(平成25)年6月に乗車した時の模様を、このブログにて紹介しました。
その後、この路線は書籍「秘境路線バスをゆく」にも紹介された他、北海道総合政策部交通政策局交通企画課が企画した事業「バスタビ北海道」(のちにこの事業は北海道バス協会が引き継いで継続中)でも紹介されております。
実は今般、路線が無くなるということで、運行終了直前の2021年3月29日、惜別乗車をしに現地を訪れました。
今回は、その時の模様を簡単に紹介します。
沿岸バス「31 サロベツ線」とはどんな路線?
その前に、沿岸バス「31 サロベツ線」について改めておさらいしておきましょう。沿岸バス「31 サロベツ線」は、JR宗谷本線豊富駅と稚咲内(わかさかない)第2の間を結ぶ、全長14.2kmのローカル路線バスです。
沿岸バスの公式サイトやTwitterの書き込みなどによると、この間の路線バス運行を開始したのは1955(昭和30)年9月20日。
当時は「稚咲内線」として運行を開始しています。
戦前の稚咲内地区の主たる産業は農林業でしたが、1949(昭和24)年に北海道総合政策で同地区が未開発魚田地に選定されて以来、人口が急激に増加、路線バスの整備が急務になったそうです。
1967(昭和42)年には、丸山と豊徳の間に位置するサロベツ原野に、「原生花園」停留所(現在の「サロベツ原生花園」停留所)を新設。
運行系統名を「稚咲内線」から「サロベツ線」に改めます。
この頃より、観光客の利用が右肩上がりに増えていき、利尻礼文国定公園がサロベツ原野を含む「利尻礼文サロベツ国立公園」に制定された最盛期の1974(昭和49)年には、年間輸送人員が4万人を突破します。
しかしながら、以降は年々利用者が減少。
1983(昭和58)年には、年間輸送人員がピーク時の半分以下の15,467人にまで落ち込んだため、「サロベツ線」の乗合運行を廃止し、一般貸切旅客自動車運送事業(貸切バス)にもとづく廃止路線代替バスとして運行を始めます。
2005(平成17)年、サロベツ原野がラムサール条約に登録されます。
同年、豊富西5条5丁目~サロベツ原生花園~稚咲内第2の間で停留所以外で乗降可能なフリー乗降を開始した他、2007(平成19)年には、法改正により「サロベツ線」の輸送形態を再度路線バスに移行します。
その後、サロベツ湿原センター開業に伴う停留所の移設・名称変更など、利便性向上を図りますが、沿線の過疎化や住民の高齢化などの理由で利用客は減少。
2019年度の利用者数は、1,135人までに落ち込んだそうです。
近年は、「みなし4条市町村単独補助路線」として、豊富町から補助金の交付を受けて運行していましたが、この度、豊富町・沿岸バス間の協議により廃止が決定。
そして、多くの方に惜しまれつつ、2021(令和3)年3月31日の最終運行をもって、66年の歴史に幕を下ろしたのです。
涙雨の中の沿岸バス「31 サロベツ線」の惜別乗車
前日、沿岸バス「特急はぼろ号」札幌発最終便に乗車し羽幌町へ。羽幌町内のホテルで一泊し、翌朝、同社「11 豊富羽幌線」始発便でJR豊富駅へ向かいます。
目覚めの羽幌町の朝。
運行終了を惜しむ涙雨なのか、はたまた単に私の行いが悪いのかは分かりませんが・・・外は生憎の雨でした。
羽幌から2時間半程で、バスは豊富駅に到着。
ひと息つく間も無く、すぐさま乗り換えです。
今回私が乗車したのは、豊富駅09時15分発の便。
こちらのバスが充てられていました。 いすゞエルガワンステップです。
首都圏事業者から来たと思わしき車両ですが、同社がいすゞブランドの車両を導入したのは、私が記憶する限りではこの車両が初なのではないでしょうか。(違っていたらゴメンナサイ。)
平日ということもあり、乗客は私一人かなぁと思いきや、私と同様の惜別目的の乗客が他に4名いました。
考えることは同じですね(笑)。
バスは、道道397号豊富停車場線から国道40号線を通り、豊富郵便局前の交差点を右折後、道道444号稚咲内豊富停車場線を西へひた走ります。
豊富市街地を抜けると、「これぞ北海道」というべき雄大な景色が、車窓一面に広がります。
天気が良ければ最高ですけどね。
サロベツ湿原センター付近からは、サロベツ原野が一面に広がります。
生憎の天気ですが、天気が良ければ、写真の様な美しい景色が楽しめます。
遠くには、利尻富士(利尻島)も見ることが出来ます。
今回、これが見られなかったのが残念でなりません。
バスは、20分程で、終点の稚咲内第2に到着。
私を含め、乗客全員が思い思いの構図で記念撮影を行います。
このバス停が見られるのも、あと僅かです。
同じバスで、豊富駅に戻ります。
バスの前面には、運行終了を知らせる特製の掲示物も。
因みに、この掲示物に登場している萌っ子さん、実は来る5月1日から始まる「萌えっ子第13シーズン」に登場する新キャラクターだそうで、名前は「ソフィー・アファナシエフスカヤ」さん(通称:そーやさん)。
ロシア出身の25歳だそうです。
ついに沿岸バスも、外国人のバスガイドさんを雇う様になった様です(笑)。
そして、10時15分頃、バスは豊富駅に到着。
乗客を降ろし、回送されていくバスの後ろ姿を見ながら、私はしばし感傷に浸っていました。
その後は、「31 サロベツ線」で乗車したバスや沿線の風景などを思い出しながら、沿岸バス「32 豊富幌延線/12 幌延留萌線」と北海道中央バス「高速るもい号」を乗り継いで帰路についたのでありました。
最後に
本来であれば、沿岸バス「31 サロベツ線」惜別乗車を運行最終日に敢行する予定でしたが、今回はスケジュールの都合上、叶いませんでした。ですが、1泊2日という短い時間にもかかわらず、現地にてお別れが出来たのは、自分なりの区切りが出来たという点で「やはり来て良かった!」と思いました。
聞くところによると、運行最終便は、道内外からの惜別乗車や沿線の皆様によるセレモニー(有志の皆様による暖かいココアの差し入れや沿線の子どもたちによる手製の旗、鍵盤ハーモニカによる蛍の光の演奏など)もあったそうです。
ひっそりと運行を終える路線も少ない中、この様な最後を迎えることが出来たのは、地元にとって無くてはならない会社であることの証左なのかもしれません。
(前項より)
— 沿岸バス【公式】2021.4.1 特急ましけ号運転再開 (@enganbus) March 31, 2021
当系統を補助する豊富町との協議により廃止が決定後、ひっそりと運行を終了する予定でしたが、廃止の話が口コミやSNS等で大きく広がり、道内外からの惜別乗車や沿線の皆様によるセレモニーなど、想定を大きく上回る素晴らしい最後を迎えることができました。(さらに続く) #沿岸バス pic.twitter.com/QiqPLNdUvD
(前項より)
— 沿岸バス【公式】2021.4.1 特急ましけ号運転再開 (@enganbus) March 31, 2021
有志の皆様による暖かいココアの差し入れ、沿線の子どもたちによる手製の旗、鍵盤ハーモニカによる蛍の光の演奏、回送・帰庫するバスを追いかけて来てくれた可愛らしい男の子などなど、すべてが素敵な思い出となりました。関わっていただいたすべての方に感謝申し上げます。 #沿岸バス
この路線ですが、サロベツ原生花園を経由することから、夏期と冬期で便数に変化をもたせるなど、観光路線としての側面もありました。
一面に広がるサロベツ原野に、遠くに霞む利尻島・・・「これぞ北海道!」という景色が楽しめる、私にとって好きな路線のひとつでした。
それだけに、運行終了は正直残念ではありますが、昨今の厳しい状況を考えると、致し方がないのかなぁと思います。
66年間、本当にお疲れ様でした。
そして、ありがとうございました。
「特急はぼろ号」の車両が運用に就くことも
稚咲内第2停留所付近にて
稚咲内第2停留所付近にて
【乗車データ】
- 乗車日:2020/03/29
- 乗車区間:
豊富駅→稚咲内第2→豊富駅 - 運行会社:沿岸バス
- 車両:いすゞ/エルガワンステップ(形式不明)
- 年式:不明
- 所属:羽幌営業所
- 社番:604
【おことわり】
本記事の執筆にあたっては、北海道新聞の記事、沿岸バス公式サイト及び同社公式Twitterを一部参考にしております。
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