防長交通「萩エクスプレス」655号車 乗車記
某ローカルバラエティ番組でも取り上げられ、一躍有名になったのはご存知の方も多いかと思います。
で、今回ご紹介するのは、「はかた号」と比較される形で取り上げられることの多い夜行バスになります。
その夜行バスとは・・・・防長交通の東京駅~山口・萩間夜行高速バス「萩エクスプレス」です。(写真は2016年12月に撮影した新型車両(日野セレガHD)。) 「萩エクスプレスって?」「どうして萩エクスプレスなの?」と思われる方へ。
先述の通り、「はかた号」は日本最長距離夜行高速バスでありますが、実は文句なしの日本最長所要時間路線ではないのです。
厳密には、「ある路線と同位で日本最長所要時間路線」ということになります。
そこで登場するのが、今回ご紹介する防長交通「萩エクスプレス」です。
防長交通「萩エクスプレス」は「はかた号」に並ぶ日本最長所要時間夜行高速バス。
所要時間を比較してみますと、「はかた号」の下り便14時間17分・上り便14時間39分に対して、「萩エクスプレス」は下り便14時間34分・上り便14時間39分。
「萩エクスプレス」上り便の所要時間と「はかた号」上り便の所要時間が全く同じなのです。(2019年4月1日現在)
因みに運行距離は上りが1,013㎞で下りが1,012㎞。
「はかた号」の1,103km、「博多フジヤマExpress」の1,065kmに次いで、全国で3番目に長い距離を走る夜行高速バスでもあります。
私自身、「萩エクスプレス」には開業2年後の1995年秋に一度乗車したことがありますが、それ以来乗車する機会がありませんでした。
今春、九州へ私用で出かける用事が出来、その帰路で利用する機会を得ましたので、早速乗車することにしました。
初回乗車した約20年前から「萩エクスプレス」。
果たしてどの様に変化したのでしょうか。
バブル末期に開設された老舗の超長距離夜行高速バス
ここで、「萩エクスプレス」の歴史について簡単におさらいしておきましょう。夜行高速バス「萩エクスプレス」は、1993年4月24日に京浜急行電鉄(当時)と防長交通の2社共同運行路線として開設されました。
路線開設当初は、一般道の走行時間を極力抑えることを考慮した結果、県中部(萩・山口・防府)と東京を結ぶ「萩エクスプレス」の他に、県東部(周南・岩国)と横浜を結ぶ「ポセイドン号」(相模鉄道・防長交通)が運行されていました。
「ポセイドン号」は、のちに横浜から東京へ延伸され、名称も「アルバ号」に改称。
この時、運行会社も相模鉄道から京浜急行電鉄(当時)に変更されています。
ところが、沿線人口の少なさもあり、採算性の問題から、1998年3月31日に「萩エクスプレス」と「アルバ号」は統合され、新生「萩エクスプレス」としてリニューアルします。
その後、京浜急行側の会社組織変更による運行会社変更(京浜急行電鉄→京浜急行バス→羽田京急バス管理委託→京急観光バス)が行われますが、2007年5月末日をもって京急観光バスが運行から撤退し、防長交通単独運行に変更されます。
そして、2007年8月10日出発分より、東京側の発着地を浜松町・品川から霞が関(上りのみ)・東京駅に変更し、併せて山口側の停留所を増設します。
また、前日分をもって京急での予約・発券・運行支援業務は終了となり、東京での発券・運行支援業務をジェイアールバス関東に移管します。
最近の話題としては、2015年と2016年に導入された新型車両でしょうか。
新夜行用塗装が採用された他、新たに座席コンセントや通路カーテンが採用されるなど、快適性重視の造りになっています。
山口県内中部・東部をくまなくカバーする首都圏直行便
「山陰の小京都」としても有名であり、数年前に放映された大河ドラマの舞台にもなった山口県萩市。夜行高速バス「萩エクスプレス」は、この山口県萩市から発車します。
やって来たのは、萩市中心部に程近い防長交通萩バスセンター。 萩市内路線バスや郊外路線、高速バスが発着する、萩地区の交通の要所でもあります。
17時35分頃、萩バスセンターに東京行き「萩エクスプレス」が入線します。
今回乗車した車両はこちら↓でした。
「山口市ラッピング」を施した2008年式の日野セレガHD(PKG-RU1ESAA)です。
てっきり新型車両が充てられると思っていただけに、拍子抜けでした。
それにしても、側窓全面にまでラッピングを施すとは・・・とにかく目立ちますね。
車内は3列独立シート28人乗りの夜行高速仕様となっています。
車内中央部にはお茶・コーヒーのセルフサービスコーナーが設けられている他、通路カーテンが後付されています。
但し、座席コンセントは装備されていませんので、スマートフォン充電の際は各自充電用バッテリーを持参する必要があります。
また、窓側座席は、通路幅を確保する目的からか窓側の肘掛が装備されていません。
このため、収納式テーブルも装備されていませんので、特に飲食時は注意が必要です。
17時45分、バスは定刻通りに萩バスセンターを発車します。
萩バスセンターから乗車したのは、私を含めて2名。
しかし、乗務員によるとこの便は予約で満席とのこと。
平日にもかかわらず満席とは・・・恐れ入りました。
バスは国道262号・萩道路・国道435号などを経由して山口市内へ向けて南下します。
大田中央は乗車客がおらずに通過。
その約30分後の18時53分にバスは山口湯田温泉に到着します。
こちらでは8名が乗車。
その後、山口西京橋で1名、山口宮野(防長交通山口営業所)で1名乗車します。
始発地萩からは乗務員1名で運行していましたが、山口宮野で乗務員1名が加わり、ここからは乗務員2名体制で運行します。
広範囲な営業エリアを抱える事業者ならではの乗務員運用です。
山口宮野から走ること約50分でバスは防府駅前に到着。
こちらでは4名が乗車します。
さらに一般道を走ること45分程で、バスは防長交通の本社が所在する徳山に到着。
徳山駅前では5名が乗車します。
ここまでは下道のみを走行してきましたが、徳山からはいよいよ高速道路に入ります。
20時49分、バスは徳山東インターから山陽自動車道へ。
20時59分、熊毛インターに停車しますが、乗車客はいません。
21時10分、玖珂インターでは1名が乗車し、21時24分に岩国インターで一旦山陽自動車道を降ります。
21時41分、岩国駅前に到着。
こちらでは2名が乗車します。
岩国からは大竹インターまで一般道を走行します。
22時02分、大竹インター口で最後の乗客1名を乗せ、総勢26名を乗せた「萩エクスプレス」は、22時05分に大竹インターから再び山陽自動車道へ。
一路東京へ向けてひた走ります。
22時20分、萩を発車して4時間35分経過したところで、バスは消灯前の休憩地である山陽自動車道宮島サービスエリアに到着します。
こちらでは15分間の開放休憩が設定されており、多くの乗客がバスを降りて就寝前の準備を済ませていました。
22時35分、乗客が全員揃ったところでバスは発車。
消灯は23時00分とのことで、消灯前の間、交代乗務員がスタンプカードの配布及び捺印のために車内を巡回します。
このスタンプカード、スタンプが6つ貯まると片道1回分の乗車が無料になるとのことですが、多くの乗客がスタンプカードを所有していたのには正直驚きました。
それだけリピーターが多いということなのでしょうか。
そしてもう一つ、今回私が乗車した便の乗車率の高さについてですが、改めて防長交通の公式サイトを見たところ、実はこの日は「閑散日」運賃適用日でありました。
現在の「萩エクスプレス」の運賃は変動運賃制を採用しており、「閑散日」「特定日」「繁忙日」の3種類の運賃が設定されています。
「閑散日」の場合、東京~徳山・山口間を最安8,400円(早売7適用時)で利用することが出来、大変お得になっています。
設定日カレンダーも拝見しましたが、曜日の振り分けも上手く行っており、変動制運賃を上手く使いこなしている印象を受けました。
もしかすると、変動運賃制の上手い使いこなしが「萩エクスプレス」の平日時の乗車率の高さの要因になっているのかもしれません。
23時00分、車内は消灯。
消灯後は翌朝の開放休憩場所まで下車することが出来ません。
その間、バスは山陽自動車道から中国自動車道~名神高速道路~新名神高速道路~東名阪自動車道~伊勢湾岸自動車道~新東名高速道路~東名高速道路を東京へ向けてひた走ります。
翌朝7時00分、バスは朝の開放休憩場所である東名高速道路足柄サービスエリアに到着します。
こちらでも15分間の開放休憩が設定されており、多くの乗客が下車して洗顔やトイレ、買い物などを済ませていきます。
改めて車体を見てみますが・・・目立ちますね。
7時15分、乗客が全員揃ったところでバスは足柄サービスエリアを発車します。
あとは東京へ向けてラストラン・・・といいたいところですが、この日は東名厚木付近から朝の渋滞が酷くなっているとのことで、東京駅到着が遅れるとのアナウンスが。
暫くは順調に走行していましたが、乗務員からのアナウンスの通り、東名厚木バス停付近から徐々に速度が落ち、やがて渋滞に巻き込まれます。
東京駅日本橋口予定到着時刻は8時24分ですが、この時点でバスはまだ東名川崎インター付近を走行していました。
渋滞は東京インターを過ぎて首都高速道路3号線まで続く形となり、到着も大幅に遅れることが確実となったため、バスは東名ハイウェイバスが渋滞時に降車扱い停車を行う用賀パーキングエリアに臨時停車しました。
こちらでは2名が下車していきました。
その後も渋滞は六本木あたりまで続き、霞ヶ関バス停に到着したのは定刻1時間22分遅れの9時35分でした。
こちらでは4名が下車。
その後、渋滞気味の都内を20分近く走行し、終点の東京駅日本橋口には定刻1時間30分遅れの9時54分に到着しました。 1時間30分遅延したからか、バスを降り荷物を受け取るな否や、目的地へ急ぐ方が多かったのが印象的でした。
超長距離夜行バスならではの渋滞遅延のリスクも
というわけで、防長交通「萩エクスプレス」の乗車記をお届けしました。今回、久しぶりに同路線に乗車しましたが、まず感じたのは、リピーターと思わしき乗客の多さでした。
スタンプカードや変動制運賃の導入が功を奏していること、そして何よりも山口県中部・東部から首都圏へ直行する唯一の夜行交通機関であるという点が大きいと考えますが、20年以上運行を続けている事業者(=防長交通)及び路線に対する信頼も大きいではないかと思いました。
そして、先述の変動制運賃の運用が上手いなあとも感じました。
「閑散日」「特定日」「繁忙日」の3種類に限定していること、そして「閑散日」の運賃設定の安さが、平日の高乗車率に繋がっているのではと感じました。
一方で気になったのが、超長距離路線ならではの渋滞遅延のリスクです。
「萩エクスプレス」に限った話ではありませんが、朝の渋滞に巻き込まれた場合のリスク回避が大変だなぁと感じました。
当たり前の話ですが、遅延が酷くなればなるほど、その分乗務員の折り返し休憩時間が短くなるわけで、大幅遅延時のフォロー体制がどうなっているのか、気になるところではあります。
のちに萩~山口宮野間の乗務を1人体制に切り替えたのも、もしかするとコストとの兼ね合いも考慮した渋滞時リスク回避策の一環であるのかもしれませんが。
今回乗車してみて思ったのですが、東京側の渋滞回避という観点で考えると、山口側の発車時刻をあと30分~1時間程早く設定しても良いのかもしれません。
その分、萩バスセンターの発車時刻が早くはなりますが、萩~山口間17時台の発車であれば、乗客にとっても早いとはいえ許容範囲内であるのではと考えます。
過去に16時台発車の夜行高速バス(いわみエクスプレス)も運行されていたことを考えると、不可能ではないかと思います。
いろいろと書きましたが、日本最長所要時間14時間39分を誇る夜行高速バス「萩エクスプレス」は、乗り応えのある夜行高速バスであることには間違いないでしょう。
もちろん、山口、萩方面への所用・観光の足としても便利な路線です。
機会があれば、一度乗車されてみてはいかがでしょうか。
個人的に今回心残りだったのは、出来れば新型車両に乗車したかったなぁと。
これは近いうちにリベンジ乗車を企画しなければならないかもしれませんね。
「萩エクスプレス」新型車両に乗車した暁には、改めてこのブログにてご報告させていただきますので、どうかお楽しみに。
【乗車データ】
- 乗車日:2017/03/21
- 乗車区間:
萩バスセンター→東京駅日本橋口 - 運行会社:防長交通
- 車両:日野/セレガHD(PKG-RU1ESAA)
- 年式:2008年式
- 所属:萩営業所(乗務員は萩営業所と山口営業所が担当)
- 社番:655
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