太平洋フェリー 新「きたかみ」 乗船記

フェリー

苫小牧と仙台・名古屋の間を結ぶ「太平洋フェリー」
名古屋に本社を置く名鉄グループのフェリー会社で、苫小牧~仙台~名古屋間で定期航路を運航しています。
充実した船室・設備等で利用客から高い評価を受けており、「フェリー・オブ・ザ・イヤー」を25年以上もの間連続受賞するなど、船旅を扱う雑誌などで常にトップクラスの評価を得ています。

太平洋フェリーについては、このブログで「いしかり」「きそ」の乗船記を数回紹介しました。
現在、同社では「いしかり」「きそ」「きたかみ」の3隻体制で運行しています。
太平洋フェリー「いしかり」

太平洋フェリー「きそ」

太平洋フェリー「きたかみ」(旧船)

現行の「きそ」は2代目で2005(平成17)年に就航、「いしかり」は3代目で2011(平成23)年に就航していますが、残る「きたかみ」の代替船がここ数年の注目の的でありました。

2017(平成29)年5月、同社は「きたかみ」の代替となる新船の投入を発表し、三菱重工業下関造船所に発注しました。
そして、今年2019(平成29)年1月25日、ついに2代目(新船)「きたかみ」が就航したのです。

就航初日は、苫小牧港を19時00分に出航し、翌26日10時00分に仙台港に到着。
同日19時40分仙台港発で翌27日11時00分に苫小牧港に到着しました。
営業就航の名古屋港初入港は、1月29日の10時30分。
同日19時00分名古屋港発で仙台を経由し、31日11時00分に苫小牧港に到着しました。

2代目(新船)「きたかみ」就航後、出来るだけ早いうちに乗船しようと考えていたところ、先日3日間程のお休みをいただくことに。
「それならばせっかくなので新「きたかみ」を見てみよう!」ということで、早速乗船して来ました。
今回はその時の模様をご紹介します。

太平洋フェリー 新「きたかみ」とは?

先述の通り、太平洋フェリーには「いしかり」「きそ」「きたかみ」の3隻が在籍していますが、今回乗船したのは、2代目「きたかみ」。
2019(平成31)年1月25日に就航したばかりの新船です。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 仙台港にて_01

先代「きたかみ」は、1989(平成元)年に「あるびれお」の代船として就航しました。
2005(平成17)年には「光の装い」をテーマとして船内のリニューアルを実施。
本船より後に就航した「いしかり」(2代目)の引退後も運航を続け、末期は苫小牧~仙台間を主に運行。
「きそ」「いしかり」のドック入り期間時には、仙台~名古屋間にも乗り入れていましたが、経年劣化による代替船の投入はここ数年の課題でもありました。

そんな中、2017(平成29)年5月29日、太平洋フェリーは「きたかみ」の代替となる新船の投入を発表。
三菱重工業下関造船所に発注したことも発表しました。

新船の名称も、先代の名称を引き継ぐ形で「きたかみ」を命名。
2018(平成30)年7月には進水式が執り行われ、その後の新造工事、試験航行、関係者向けお披露目などを経て、2019(平成31)年1月25日に新「きたかみ」は無事に就航しました。

新「きたかみ」のコンセプトは、『「SPACE TRAVEL」(スペーストラベル)=宇宙旅行』
これまでの「きそ」や「いしかり」の様な「豪華志向」とは異なるコンセプトらしいのですが・・・どの様な船内になっているのか、早速乗ってみましょう。

これまでの太平洋フェリーのコンセプトと異なる造りの新「きたかみ」

15:45 苫小牧フェリーターミナルに到着

いつもは札幌駅前ターミナルから北海道中央バス「高速とまこまい号」に乗車して苫小牧西港フェリーターミナルへ向かうのですが、今回は寒波襲来に伴う交通機関の遅れを考慮し、JR特急「スーパー北斗16号」で苫小牧へ移動した後、タクシーでフェリーターミナルへ移動します。

かなり早く着いたので、近くの公園までちょっとお散歩。
目の前には商船三井フェリー「さんふらわあ ふらの」が停泊していました。
「さんふらわあ」が新船になってからはまだ乗船していない私。
近いうちに乗船したいですねぇ。

商船三井フェリー「さんふらわあ ふらの」 苫小牧港にて

フェリーターミナルに戻り、1階受付カウンターにて乗船手続きを済ませます。
その後、2階売店で買い物を済ませたりネットチェックなどをしながら、乗船開始の時刻を待ちます。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 苫小牧港 カウンター

ところで、「きたかみ」を語る上で忘れてならないのが、2011(平成23)年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震における緊急離岸・湾岸退避です。

地震発生当時、「きたかみ」は仙台港に着岸しており、大津波警報の発令を受け、「きたかみ」は仙台港を緊急離岸。
速やかに湾外退避を行なったため、津波による被害を免れたのです。
大津波を乗り越える瞬間の画像をネットやパネル展で見た時は、あまりもショックで言葉が出なかったのを今でも覚えています。

その敬意を表してかどうかは分かりませんが、「きたかみ」の船体ロゴは先代のものを踏襲しているそうです。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 苫小牧港にて_02 船体ロゴ

17:30 乗船開始

2階乗船口から乗船しますが、太平洋フェリーの乗船連絡橋はエスカレーター・エレベーター完備のバリアフリー対応になっていて、足が不自由な方でも楽に乗船することができます。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 乗船開始

17:45 船内散策

レストランの営業開始(18時30分)まで時間がありますので、早速船内を散策してみます。

まずは、新「きたかみ」の主要諸元から。

【太平洋フェリー 新「きたかみ」 主要諸元】

  • 就航年月:2019年1月(1989年10月)
  • 全長:192.5m(192.5m)
  • 全幅:27m(27m)
  • 総トン数:約1万4000GT(1万3937GT)
  • 最大速力:24.6ノット(24.9ノット)
  • 最大出力:8000kW×2(1万591kW×2)
  • 旅客定員:535名(701名)
  • トラック積載数:166台(165台)
  • 乗用車積載数:146台(147台)
  • エレベータ:2基(1基)
  • 個室数:189室(58室)
※カッコ内の数字は先代「きたかみ」の仕様。

船室は6デッキと7デッキの2階構造になっており、昨今の流行を踏襲して「個室重視」の客室構成になっています。

6デッキの案内所(インフォメーション)です。
船内のご案内、上等級への変更手続きはこちらで受け付けます。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 6デッキ案内所(インフォメーション)

エントランス部にあるフリースペースです。
夜間帯を除き、BSチェンネル(NHK)が放映されます。
新船就航をお祝いする花も飾られていました。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 6デッキ フリースペース

エントランス部の吹き抜け部分です。
残念ながら、「きそ」「いしかり」の様な開放感はありませんが、階段の壁と天井では毎晩プロジェクションマッピングによるショーが1日3回開催されるそうです。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 6デッキ エントランス

案内所横のショップコーナー(売店)です。
「きそ」「いしかり」と比べると、売り場面積が縮小されています。
品数も絞られており、必要最小限の飲食物とちょっとしたお土産位しか購入出来ないと考えた方が良いでしょう。
まとまった数の飲食物、お土産類の購入は、フェリーターミナル売店を利用した方が良いかもしれません。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 6デッキ ショップコーナー(売店)

大浴場は6デッキにあります。
他社船と違い、入港30分前まで自由に入浴出来るのが、太平洋フェリーの良さのひとつだったりします。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 6デッキ 大浴場

エントランス階段下には、キッズエリア(小さなお子様のための遊び場)があります。
この場所にキッズエリアを配したとは・・・意外でした。
限られた船内空間の有効活用なのでしょうが、この場所にキッズエリアを配したとは意外でした。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 6デッキ キッズエリア

6デッキの自販機コーナーです。
ビールなどの酒類、ソフトドリンク、アイスクリームが購入出来ます。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 6デッキ 自販機コーナー

自販機コーナーは7デッキにもあるのですが・・・なんと、これまた意外、7デッキにはカップラーメンの自販機も設置されていました。
太平洋フェリーといえば、これまで「カップラーメンは極力ご遠慮を・・・」というスタンスだった記憶があるのですが、新「きたかみ」でカップラーメンの自販機を設置するあたり、取り込もうとする利用客層が何となく見えて来ますね。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ 自販機コーナー

階段を上って7デッキには、展望プロムナードがあります。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ 展望プロムナード

こちらも、窓間を使ったプロジェクションマッピングを実施しています。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ 展望プロムナード 窓間プロジェクションマッピング

7デッキのロビーです。眠れないときなどはこちらで時間を過ごすことが出来ます。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ ロビー_01

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ 7デッキ ロビー_02

ひと通り船内を見て回りましたが、見て分かる通り、これまでの太平洋フェリーのコンセプト(豪華さ)とは少し異なるコンセプトで造られていることが分かります。
もともと苫小牧~仙台間向けに造られた船ということもあってか、全体的にコンパクトにまとめられている印象を受けました。

このことは、就航に先駆けて横浜港へお披露目入港した際の同社社長の挨拶でも述べられており、「新「きたかみ」が就航する仙台港~苫小牧港航路は、北海道と東北地方を結ぶ生活路線であり、年に複数回ご利用いただける、リピーターが多い区間。船内ではこれまでの当社船のイメージである“豪華さ”から少し離れ、船旅になれたお客さまの使いやすさを求めた。」と仰っています。

確かに、船内全体を見回してみると、"豪華さ"を売りにしている「きそ」「いしかり」とは違い、どちらかというと船旅になれたリピーター向けの船であるなぁ・・・と。
「きそ」「いしかり」と比べると、"豪華さ"はあまり感じられませんが、LED照明やプロジェクションマッピングの多用などで、「SPACE TRALVEL」のイメージは十分に演出しているなぁと感じました。

尚、新「きたかみ」では、カフェコーナーとシアターが廃止されています。
このため、太平洋フェリーお馴染みの船内ショーは、新「きたかみ」では催されません。
但し、不定期で船内ショーを開催することはあるのとのこと。
その際は、7デッキのロビーが船内ショーの会場になるそうです。


18:30 夕食

夕食の時間になったので、7デッキのレストラン「グリーンプラネット」へ。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ レストラン「グリーンプラネット」_01

食券は入口横の券売機で購入。
入場時に係員に食券を渡します。
太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ レストラン「グリーンプラネット」_02

今回私は、乗船券と食事券がセットになった「片道フルパック」を購入。
乗船手続きの際に渡された半券を係員に渡します。

レストランの内部です。(営業時間前に撮影しました。)

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ レストラン「グリーンプラネット」_03

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ レストラン「グリーンプラネット」_04

カジュアルな雰囲気が特長といったところでしょうか。
1人利用も考慮してか、カウンター席もそれなりの席数が設けられています。

太平洋フェリーの食事は、バイキングスタイル。
好きなものを好きなだけ食べられます。
アルコール類を除き、ドリンク類も飲み放題です。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ レストラン「グリーンプラネット」_05 夕食

いや~~、久しぶりに「これ以上食べられない!」という位に食べまくりました。

1時間近くレストランで食事をしていましたが、気が付くと新「きたかみ」は既に苫小牧港を出航していました。


19:30 ロビーでのんびり

お腹一杯になったところで、7デッキロビーにて外を見ながらのんびりとします。


21:00 寝床へ

この日の寝床は、写真のB寝台でした。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ B寝台_01

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ B寝台_02

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ B寝台_03

一見、昨今流行りのカプセル寝台なのですが・・・

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ B寝台_04

小型テーブルが設置されており、その小型テーブル側下部に凹みが設けられています。
この凹みが荷物置き場になっておりまして、写真の様に小型キャリーケースを置くことが出来るようになっています。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ B寝台_05

小型テーブルの脇には、読書灯と小型鏡、コンセントが設置されています。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ B寝台_06

限られたスペースの中、細かな点においてよく考えられているという印象を受けました。

因みに、新「きたかみ」の最安グレードとして、C寝台というグレードが設定されていますが、内容はB寝台の廉価版。
カーテンが普通のカーテンであることと、小型テーブルと鏡がないこと以外は、基本的にB寝台と同じです。
部屋数は少ないですが、運賃が「きそ」「いしかり」の2等運賃と同額であることから、コストパフォーマンスは高いといえるでしょう。


24:00 消灯・就寝

しばし寝床とくつろいでいるうちに、いつしか睡魔が。
消灯前にひとっ風呂入りに行こうかとも思いましたが、眠気には勝てずに、結局寝ることに。
風呂は翌朝起床後に楽しむことしました。


05:30 起床・入浴

普段よりも早く起床します。

前日の夜に入ることが出来なかった大浴場へ。
朝の身支度も兼ねて、1時間近く大浴場でのんびり過ごしました。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 6デッキ 大浴場

07:15 朝食

朝食は通常7時30分からですが、この日はレストランの混雑が予想されることと、仙台港の入港時間が湾内混雑回避のため20分早くなることから、通常より15分早くレストランがオープンしました。
朝風呂を終えてすぐにレストラン入口へ向かったのですが、入口には既に20人近く並んでおり、朝食営業開始時には、その列が50人位にまで増えていました。

朝食もバイキング。
夕食と同様に食べまくりました。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ レストラン「グリーンプラネット」_06 朝食

09:40 仙台港入港

朝食を終えて、甲板に出てみます。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ 甲板_01

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ 甲板_02

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ 甲板_03

外は生憎の空模様で、しかも寒い。
冬はむやみに甲板に出るものではありませんね。

ロビーにてテレビを見ながらのんびりしているうちに、仙台港入港時刻が近づいて来ます。
朝食後の洗顔と最終的な身支度・荷物の整理を済ませ、再びロビーへ。
週末に加え、某旅行会社の団体客で、エントランスとロビーは混雑していました。

9時40分、新「きたかみ」は無事に仙台港へ入港。
あっという間の14時間40分の船旅でした。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 7デッキ 甲板_03

苫小牧~仙台間の運航に特化したリピーター向けの客船!? これはこれでアリかも?

というわけで、太平洋フェリー 新「きたかみ」苫小牧→仙台間の乗船記をお届けしました。

国内トップクラスの評価を誇るカーフェリー会社の約8年ぶりの新船。
期待半分不安半分で乗船したのですが、先述の通り、もともと苫小牧~仙台間向けに造られた船ということもあってか、全体的にはコンパクトにまとめられているなぁという印象を受けました。

公式サイトにも書かれていますが、宇宙を彷彿させる技巧的な光の演出や、自然光のような優しい光が降り注ぐレストランなど、「光」というものを駆使している点と、個室重視の客室構成、バリアフリー対応、そして使いやすさを重視した各種設備が、新「きたかみ」の特徴なのかなぁと思いました。

一方で、これまでの太平洋フェリーのコンセプトである"豪華さ"のイメージのまま、もっというと、「きそ」「いしかり」のイメージのまま新「きたかみ」に乗船すると、少なからず面を食らうのかなぁとも思いました。
同社社長のコメントにもある通り、「船旅になれたお客さまの使いやすさを求めた」のが、新「きたかみ」のコンセプト。
「きそ」「いしかり」との明確な差別化を図ったと思われますが、これまでの太平洋フェリーのコンセプトとは全く異なる客船であると心得て乗船した方が良いかもしれません。

そう考えると、苫小牧~仙台間での乗船であれば、これはこれで十分にアリだと私は思いますが、苫小牧~名古屋間の乗船となると、シアターやカフェが廃止されているという点で、物足りなさを感じるかもしれません。
もっとも、新「きたかみ」が苫小牧~名古屋間で就航するのは、「きそ」「いしかり」がドック入りする期間の年数回しかありませんので、逆に貴重といえば貴重なのですが・・・。

注目を集めてデビューした太平洋フェリーの新「きたかみ」ですが、少人数でリーズナブルに移動したい方にとっては最適な旅客船なのではないでしょうか。
苫小牧~仙台間の利用であれば、また使ってみたいと思いました。
揺れが少なく、音が静かなのも、個人的には気に入りました。(さすが三菱重工製の旅客船だなぁとも思いましたが。)
今後、仙台港と苫小牧港では船内見学会も実施されるそうです。
(仙台港では3/23(土)に、苫小牧港では3/24(日)に実施。事前申込制で応募者多数は抽選。⇒ http://www.taiheiyo-ferry.co.jp/news/20181122.html

機会があれば、是非一度船内を見学、そして乗船されてみてはいかがでしょうか。

太平洋フェリー 新「きたかみ」 苫小牧港にて_01


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