宗谷バス「天北宗谷岬線」ダイヤ改正で2便減便へ・・・

一般路線バス

宗谷バス「天北宗谷岬線」 音威子府にて

宗谷バス(本社:稚内市)は、2018(平成30)年10月1日に、旧JR天北線代替路線の「天北宗谷岬線」(稚内~鬼志別~浜頓別~音威子府)のダイヤ改正を実施しました。

「天北宗谷岬線」については、これまで系統分割やJR北海道のダイヤ改正に合わせての小規模なダイヤ改正を行ってきました。
今回のダイヤ改正では、鬼志別を朝に発車する音威子府行き1便と音威子府を夜に発車する浜頓別行き(最終便)の2便を廃止する一方で、それ以外の便のダイヤについては現状維持となっています。
しかしながら、今回のダイヤ改正は、もしかすると同路線の今後の運命を大きく左右しかねない、大きな意味を持つダイヤ改正だといわれています。
いったい、どういうことなのでしょうか。

補助金で何とか維持している「天北宗谷岬線」

ここで、宗谷バス「天北宗谷岬線」について簡単にふり返っておきましょう。
同路線は、稚内~鬼志別~浜頓別~音威子府を結ぶ、旧JR天北線代替路線として運行されていますが、稚内~音威子府間の直通系統はなく、以下の系統から成ります。(2018年9月30日時点)

  • 稚内駅前ターミナル~浜頓別高校 3往復
  • 稚内駅前ターミナル~鬼志別ターミナル 4往復
  • 鬼志別ターミナル~音威子府 鬼志別発4便/音威子府発3便
  • 音威子府→浜頓別ターミナル 1便
  • 鬼志別ターミナル→浜頓別ターミナル 1便
地元紙によると、2017年度の利用者数は14万8千人とこの20年間でほぼ半減。
運行開始当初から赤字路線で、国・北海道からの補助金と沿線自治体4市町村でつくる「天北地域生活交通確保対策協議会」がバス転換交付金を原資に積み立てた基金を取り崩して赤字を補てんしているというのが現状です。
同協議会によると、2017年度の運行経費は約2億1千万円。
これに対し、運賃収入は6千万円程度にとどまっており、国の補助金9200万円と沿線4市町の5900万円の支出で収支を合わせているといった状況です。

地域間幹線補助の対象外に・・・

で、ここからが本題。
「天北宗谷線」に関係する補助金ですが、実は系統によって異なっています。
国と北海道から補助を受けるいわゆる地域間幹線系統は、稚内~浜頓別、稚内~鬼志別、鬼志別~音威子府の3系統で、運行回数3回未満で国庫補助の要件を満たさない浜頓別~音威子府、鬼志別~浜頓別の2系統は、宗谷バスが市町村単独補助を受けて維持しています。

地域間幹線系統の主な補助要件は、

  • 複数市町村にまたがる系統であること
    (平成13年3月31日時点で判定)
  • 1日当たりの計画運行回数が3回以上のもの
  • 輸送量(★)が15人~150人/日と見込まれること
    ★輸送量=計画平均乗車密度(※)×計画運行回数
    ※平均乗車密度:起点から終点まで平均して常時バスに乗車している旅客数
となっており、これまでは見込み数を認めていましたが、来年10月からは実績数に変更することになっています。
これにより、これまで地域間幹線系統として国や北海道から補助を受けていた稚内~浜頓別、稚内~鬼志別、鬼志別~音威子府の3系統が、補助基準を満たせない(=地域間幹線系統の対象から外れる)見通しとなり、経費節減の一環として今回のダイヤ改正による2便減便に踏み切りました。

今回減便されたのは、鬼志別ターミナル5時58分発音威子府行きと、音威子府21時55分発浜頓別行きの計2便。
減便により、音威子府で以下の列車に接続出来なくなりました。

【音威子府で接続出来なくなった列車】
鬼志別ターミナル5時58分発音威子府行き
・音威子府8時38分発 旭川行き 特急「サロベツ2号」
・音威子府9時08分発 稚内行き 普通列車

音威子府21時55分発浜頓別行き
・音威子府19時45分着 札幌行き 特急「宗谷」
・音威子府21時48分着 稚内行き 特急「サロベツ3号」

鬼志別・浜頓別から旭川・札幌方面へ出張や帰省などで利用する方にとっては、出先での滞在時間が大幅に削られる(下手をすれば日帰りが出来ない)という点で、この減便は非常に痛いといえるでしょう。
恐らくですが、宗谷バスが運行する鬼志別・浜頓別・音威子府~旭川間都市間バス「特急天北号」への利用者転移が考えられます。

宗谷バス「特急天北号」
宗谷バス「特急天北号」

将来的にはバス廃止→乗合タクシー化もありうる?

「天北宗谷線」に限ったことではありませんが、一部の市町村・事業者において、国庫補助要件を満たすために、補塡を受けた事業者が回数券などを発券していなかったり、市町村が発券を受けた回数券などを(住民に)配布していないことが会計検査院の検査で明らかになり、会計検査院は国土交通省に対して改善の処置を要求しています。

【参考リンク】
『税金無駄遣い 過疎地バスで利用者「水増し」』(毎日新聞 2017年11月8日)
『(2) 地域間幹線系統確保事業において、運送収入に計上 … – 会計検査院』
『218 (国土交通大臣宛て)地域間幹線系統確保事業における輸送量の算定について』

結果として国に補助させるために輸送量(利用者)のかさ上げをしていたわけで、改善処置の要求に至ったのはある意味仕方がないといえるでしょう。
因みに、会計検査院からの指摘により地域間幹線系統対象外となった結果、路線が廃止になったケースも、我が地元北海道では網走バスの「網走~斜里線」の廃止など実際に出て来ています。

今回の減便による経費節減効果は400万円にとどまるともいわれています。
対策協議会では、今後1年かけて宗谷バスとダイヤの効率化や経費削減策などを検討する方針ですが、果たしてどうなることやら・・・。

先述の通り、来年度は国の補助要件を満たさない見通しになりましたが、国の補助要件を満たさないということは、国と協調で補助をしていた北海道からの補助金も受けられなくなります。
仮にそうなると、稚内~浜頓別をはじめとする3系統も沿線市町村が単独補助をしなければならず、仮に補助が僅かしか出来ない、もしくは補助が出来ないということになると、

  • 減便する
  • 路線を廃止する
  • 乗合タクシーなど新たな交通機関に作り替える
以上の3つの選択肢のいずれかを選ぶしかありません。

数年前に音威子府~中頓別間の乗合タクシー化が検討されましたが、「天北宗谷線」の存続自体が危ぶまれる状況下に置かれた昨今、一部区間(もしくは全区間)の乗合タクシー化の議論が再燃するのかを含めて、同路線の動向には注目していきたいですね。

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【追記】

宗谷バス「天北宗谷線」について。
国庫補助は無くなりましたが、「広域生活交通路線」として北海道及び沿線市町村からの補助は受けている様です。(2022年5月1日追記)

【リンク】
「天北宗谷岬線」新たな交通体系について(中頓別町公式サイト、2022/03/10)
補助金等の交付に係る内容の公表について(北海道公式サイト、2021/12/03)

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宗谷バス「天北宗谷岬線」 744

※一部内容を修正しました。(ご指摘いただいた方、ありがとうございます。)


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