夜行高速バス「大山号」(福岡・北九州~米子・鳥取) 32年の歴史に幕

夜行バス

マスコミ報道やSNSなどの情報でご存知の方も多いでしょうし、前回のこちらの記事


でも取り上げましたが、福岡・北九州と米子・鳥取間を結ぶ夜行高速バス「大山号」が、2023年1月8日福岡発の便をもって廃止されることになりました。

日ノ丸自動車「大山号」 ・639
日ノ丸自動車「大山号」

「高速バス 鳥取~福岡線(大山号)の路線廃止のお知らせ」(日ノ丸自動車)

約32年間、九州と山陰鳥取の間を結んだ「大山号」。
いったい、どんな夜行バスなのでしょうか。
簡単にふり返ります。

当初は3社共同運行の人気路線だった!?

夜行高速バス「大山号」が運行を開始したのは、今から31年前の1991(平成3)年9月18日。
西日本鉄道(以下:西鉄)・日本交通・日ノ丸自動車の3社共同路線としてスタートしました。

西日本鉄道「大山号」初代専用車(三菱P-MS729S)
西日本鉄道「大山号」初代専用車(三菱P-MS729S)

日本交通「大山号」予備車
日本交通「大山号」予備車(三菱P-MS725S改)

当初は、九州と山陰鳥取県を乗り換えなしで結ぶ交通機関として重宝され、旅行や帰省のみならずスキーへの足としても利用されたことから、繁忙期には続行便が設定されるほどの人気路線でもありました。

ところが、バブル経済が崩壊した頃から次第に採算が悪化していきます。
この結果、西日本鉄道は1999(平成11)年5月末日をもって運行から撤退。
以降は日本交通と日ノ丸自動車が共同で運行を続けていきます。

運行経路の変更などで利便性は増すが・・・コロナ禍が大きく影響

2015年4月1日に実施したダイヤ改正では、停留所の追加(湖山・湖陵高校前停留所)と運行経路の変更を実施。
それまで中国自動車道〜米子自動車道経由で運行していたのを、山陽自動車道〜松江自動車道経由に変更します。

ですが、「大山号」もご多分に漏れず、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けることになります。
2020年、新型コロナウイルス感染拡大の影響が深刻になって来た頃から、「大山号」は長期の運休に入ります。
感染拡大の状況を見計らった上で、2021年と2022年の繁忙期には日ノ丸自動車単独で運行を再開しますが、利用客数は大幅に減少。
そこに追い打ちをかけて、乗務員不足が深刻化します。
新型コロナウイルスの感染収束が見通せず利用者数の回復が見込めないこともあり、この度の廃止決定に至ったというわけなのです。

最後に

私自身、「大山号」にはこれまで3度利用しました。
3度とも福岡から鳥取までの利用で、1度目は1997年に西鉄便に乗車、2度目は1998年に日本交通便に乗車、そして3度目は2011年秋に日ノ丸自動車便にそれぞれ乗車しています。
ここ10年は利用する機会がなかったのですが、同路線の動向は気にはしていました。
それだけに、この度の廃止決定は正直残念でならないのですが、逆に考えると、福岡〜鳥取間いう決してメジャーでない区間で、32年間も路線を維持し続けたことは、ある意味凄いことではないかとも思うのです。
これは、ひとえに事業者側の努力に尽きるのですが、まずは運行に携わった関係者に「32年間お疲れ様でした」という言葉を送りたいと思います。

今回の「大山号」廃止決定により、鳥取県を発着する既存系(≠旧ツアー系)夜行高速バスは、日本交通が運行する大阪〜鳥取・倉吉線(現在運休中)と大阪〜米子線のみとなってしまいました。
かつて”犬猿の中”といわれていた日本交通と日ノ丸自動車。
その”犬猿の中"の雪解けのきっかけを作ったのが、実は夜行高速バスであったのです。
今はなき夜行高速バス「キャメル号」(東京〜鳥取・米子)の運行にあたり先導役を担ったのが、これまで「大山号」の運行に携わっていた日ノ丸自動車であったといわれています。
その先導役の事業者が夜行高速バスの事業から完全に撤退するとは・・・事業環境の変化がもたらしたものであるとはいえ、やはり寂しいです。

同社に限らず、どの事業者においても夜行高速バスの事業はかつてない厳しい環境に置かれています。
ですが、今後何らかの機会で再び夜行高速バスの事業を行うようなことがあれば、陰ながら応援出来ればと思っています。

繰り返しになりますが、夜行高速バス「大山号」は、2023年1月8日をもって32年の歴史に幕を閉じます。

「32年間、本当にお疲れさまでした!」


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