宮崎交通「福岡~延岡・宮崎夜行線」430号車 乗車記(2018年春 乗車分)
一時期、旧高速ツアーバスとの競争などで苦難な時期を迎えたこともありましたが、現在も福岡~宮崎間の主要交通機関として、多くの方に利用されています。
福岡~宮崎間の高速バスといえば、「フェニックス号」をはじめとする昼行便をイメージされる方が多いかと思いますが、実は金曜日と土曜日限定で夜行便も運行されているのをご存知でしょうか。
それが、今回ご紹介する「福岡~延岡・宮崎夜行線」であります。
「福岡~延岡・宮崎夜行線」は、西鉄高速バスと宮崎交通の共同運行路線。
後述する「フェニックス号」夜行便時代は、西日本鉄道(以下:西鉄)本体と宮崎交通が共同で運行していましたが、2016年4月22日の再開時に福岡側の運行会社を変更しています。
私自身、「フェニックス号」夜行便時代は何度か利用させていただいたのですが、こと「福岡~延岡・宮崎夜行線」に関しては未乗車。
ですが、先日とある理由で乗車する機会があり、「折角だから・・・」ということで乗車してみました。
今回はその時の模様をご紹介しましょう。
利用が堅調な「フェニックス号」昼行便とは対照的な夜行便の遍歴
ここで、福岡~宮崎間の夜行高速バスの遍歴について簡単にご紹介しましょう。福岡~宮崎間の夜行高速バスは、過去に2度の運行休止を経ています。
同区間に最初の夜行高速バスが開設されたのは、1991年8月1日。
西鉄と宮崎交通が「フェニックス号」夜行便として運行を開始しました。(写真はイメージです。) 暫くは堅調に推移していましたが、次第に利用客の減少傾向が見られる様になります。
2004年4月には、北九州へ延伸。
その後、停留所の見直しなども実施されますが、思うような効果は見られず、2009年8月末日をもって「フェニックス号」夜行便は1度目の運行休止となります。
ところが、2011年3月に実施されたJR九州のダイヤ改正で、福岡~宮崎間の夜行列車「ドリームにちりん」が廃止されたことに伴い、再び利用が見込めるということで、試行運行として「フェニックス号」夜行便の運行を再開します。
しかしながら、想定したほど利用者数は多くありませんでした。
2012年5月には平日の運行を取りやめるなど効率化を図りますが、状況が改善することはなく、2013年3月末日をもって「フェニックス号」夜行便は2度目の運行休止となります。
これで今後、福岡~宮崎間夜行高速バスの運行はないと思われていましたが、約4年後の2016年4月22日、現在の「福岡~延岡・宮崎夜行線」の運行が開始されます。
契機となったのは、いうまでもなく東九州自動車道の開通。
福岡と延岡・宮崎間が高速道路で繋がったことから、夜行便の利用も見込めると事業者側は判断、3度目の福岡~宮崎間夜行高速バスの運行開始となりました。
運行に際しては、西鉄高速バスが単独で運行を行い、運行日は金・土・日・祝日とその前日限定となりました。
運行ルートも、それまでの九州自動車道~宮崎自動車道というルートから、鳥栖JCT~大分自動車道~東九州自動車道経由に変更。
途中の延岡や佐土原からの利用客をも見込んでいます。
その後、2017年3月31日は宮崎交通が運行に参入し、運行日も金曜日と土曜日に変更され、現在に至っています。
そして、来たる2018年4月27日にはダイヤ改正が予定されており、新たに日向インターバス停が新設されることになっています。
繁忙期やイベント時は満席になるものの・・・
やって来たのは、福岡市中央区天神の西鉄天神高速バスターミナル。ソラリアターミナルビルの3階に位置し、西鉄高速バスの一大拠点としても有名です。
ホテルのロビーを思わせるシックな造りが特長となっています。
夜行高速バス「福岡~延岡・宮崎夜行線」は、こちらが始発です。
今回乗車した車両はこちら↓。(写真はイメージです。)
西鉄高速バスからリースされた、宮崎交通430号車(三菱エアロクイーンⅠ PJ-MS86JP)です。
宮崎交通の高速用オリジナル用塗装をラッピングで施したという、変わり種の車両であります。
車内の様子はこちら↓。
3列独立シート28人の夜行高速仕様となっていますが、九州島内路線への運用を考慮してか、プライベートカーテンは撤去されています。
シートは、天龍工業製の夜行高速用シートを採用。
モケットは変更されておらず、西鉄時代の面影を色濃く残しています。
また、各座席にはコンセントと非常押ボタンを増設しており、特に座席コンセントは携帯電話やスマートホンの充電に便利なだけに、利用者にとってはありがたいですね。
「福岡~延岡・宮崎夜行線」の発車時刻は23時00分。
発車の10分前にはのりばに入線し、乗車改札が行われます。
23時00分、定刻に西鉄天神高速バスターミナルを発車したバスは、博多バスターミナルで乗車扱いを行い、空港通り~国道3号バイパスを経由して、太宰府インターへと向かいます。
この日の乗客数は12名と、週末運行便にしては寂しい車内。
乗務員に聞いてみたところ、「福岡でイベントが開催されるときなどは満席になることもあるが、普段はこんなもんですよ。」とのこと。
この路線に限りませんが、どうも宮崎発着の夜行高速バスは恵まれていないというか、利用状況が必ずしも良くない印象を受けます。
週末は必ずといっていい程に満席となる「桜島号」夜行便と比較すると、もう少し利用があっても良いのではと思うのですが・・・。
地理的な問題と並行交通機関から生じる違いなのでしょうか。
23時44分、太宰府インターを通過。
23時52分、最後の乗車停留所である高速基山に停車するものの、乗客はおらずにすぐに発車します。
ここからは、九州自動車道~大分自動車道~東九州自動車道を経由して、延岡・宮崎へ向けてひた走ります。
この「福岡~延岡・宮崎線」では、九州島内夜行路線では珍しく開放休憩が2回実施されます。
1回目の休憩は、大分自動車道の山田サービスエリアにて実施。
定刻では0時10分頃に到着し、15分間停車します。
山田サービス発車後、バス車内は消灯。
途中、車両点検及び乗務員の仮眠休憩のために数か所停車しますが、乗客は下車することができません。
シートを倒して目を瞑ると、いつしか夢の中へ。
目を覚ますと、バスは延岡を過ぎ、川南パーキングエリアに停車していました。
6時05分、川南パーキングエリアにて朝の開放休憩が実施されます。
こちらでの停車時間は10分。
多くの乗客がバスを降りて、トイレや洗顔、飲み物類の購入を済ませていました。
6時15分、乗客が全員揃ったところでバスは発車。
西都インターで東九州自動車道とはお別れし、ここからは一般道を宮崎市内へ向けて走行します。
6時45分、佐土原駅前に到着。
こちらでは1名が下車していきました。
そして佐土原駅前から走ること30分の7時15分、バスは宮崎駅に到着しました。 私を含めて9名の乗客を降ろしたバスは、終点の宮交シティへ向けて出発していきました。
「桜島号」夜行便と同様に宿代わりとして使えるのですが・・・
というわけで、宮崎交通「福岡~延岡・宮崎夜行線」430号車の乗車記をお届けしました。この路線に乗車したのは今回が初めてだったのですが、運行時間帯、車内設備、更には「SUNQパス全九州版」(3日間用、4日間用)が使用可能な点を含め、このブログで何度も取り上げている「桜島号」夜行便と同様に「宿代わり」として使える夜行バスであることを実感しました。
特にこの路線については、「桜島号」夜行便では実施されない開放休憩が実施されますが、休憩時間が決して長くないだけに、休憩時間に行うことをあらかじめ決めておくなど、時間を有効に使いたいものです。
個人的には、開放休憩で気分転換が出来たのと、消灯中においてほぼ爆睡出来たということもあって、今後も機会が有れば利用したいとは思っているのですが、一方で延岡の到着時間が5時過ぎと早く、その時間帯だけ一時的に車内灯が点灯されるため、到着ギリギリまで寝ていたいという方には少々きついかもしれません。
一方で気になったのは、やはり「利用客の少なさ」でしょうか。
週末とはいえ、10名程度の利用状況というのは、運行事業者としては少々頭が痛いのではと思います。
本音をいえば、「もう少し利用があれば・・・」といったところではないでしょうか。
福岡~鹿児島間程までに夜行需要がないというのもあるのでしょうが、もう少し奮起を期待したいところです。
来たる2018年4月27日のダイヤ改正で日向地区にも停車するようになりますが、場合によっては今後の課題として、西都インター(もしくは西都市街地)停車というのも検討しても良いのかもしれません。
色々と書きましたが、福岡~延岡・宮崎間を宿代を気にせずに移動出来るというメリットは高く評価して良いと思います。
「フェニックス号」「ごかせ号」の回数券利用者が差額を支払うことで利用出来る点や、2018年4月の「SUNQパス」価格改訂で「SUNQパス全九州版」(3日間用、4日間用)でそのまま乗車出来るようになった点も、利用者としては見逃せないポイントだと思います。
同路線の運行開始から間もなく3年目に突入しますが、今度こそ利用がしっかりと定着し、末永く運行が続けられることを切に願いたいものです。
機会があれば、また利用したいですね。
【乗車データ】
- 乗車日:2018/03/03、2018/04/14
- 乗車区間:
西鉄天神高速バスターミナル→宮崎駅 - 運行会社:宮崎交通
- 車両:三菱/エアロクイーンⅠ(PJ-MS86JP)
- 年式:2006年式
- 所属:宮崎中央営業所(貸切・高速担当)
- 社番:430
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