西日本鉄道「長丘高宮循環バス」を見てみる

一般路線バス

前回の記事の続きになります。
西日本鉄道(以下:西鉄)が福岡市内で取り組んでいる興味深い施策として、前回の記事で「渡辺通幹線バス」をご紹介しました。


2回目の今回は、西鉄高宮駅と高宮・長丘地区を結ぶ「長丘高宮循環バス」をご紹介します。

西日本鉄道 高宮循環バス 0376

西日本鉄道 高宮循環バス 0376 リア

「長丘高宮循環バス」が新設された理由

今回ご紹介する長丘地区と高宮地区、実は近隣の幹線道路に西鉄の路線バスが運行されています。
しかし、いざ住宅地となると、道幅が狭く坂が多いために、路線バスの新設は難しい地域とされてきました。
ところが、以前から地域住民からの路線バスの新設の要望が多くこれに応える形で沿線住民・自治協議会と話し合って新設されたのが「長丘高宮循環バス」です。

運行開始は2012年5月。
現在のところ、「試験運行」という形で運行していますが、運行開始以降、三度の試験運行期間の延長を重ね、現在に至っています。
「長丘高宮バス」の運行にあたって、西鉄は以下の施策を実施しています。

【実施された施策】
◆沿線住民・自治協議会と一体になった路線運営、改善
 ・運行ルートの見直し
 ・停留所の新設
 ・運行車両の見直し、座席の増設
 ・既存路線との乗り継ぎ停留所の追加新設
 など

この路線に関しては、西鉄の公式サイトやマスコミ報道などで知ってはいたのですが、「実際のところどうなの?」ということで、「渡辺通幹線バス」の実見の後に見てきました。

住宅が並ぶ狭隘区間をローザが快走

やってきたのは、西鉄天神大牟田線の高宮駅。
高架駅となっていて、改札を出た西側に「長丘高宮循環バス」の乗り場はあります。

使用されるのは、「スマートループ」塗装のマイクロバス「三菱ローザ」。
西日本鉄道 高宮循環バス 0376 その2
同路線専属車として充てられているようです。
運賃箱も設置されており、ICカード・SUNQパスも対応しています。
運行本数ですが、運行時間帯は7時~21時台となっており、平日が1時間に2本、土曜・日曜・祝日が1時間に1本設定されています。

バスは西鉄高宮駅を出発後、高宮地区の住宅地に入っていきます。
車がすれ違うのもやっとという狭い道ですが、バスは住宅地内のバス停で乗客を乗せながら、長丘地区へと進んでいきます。
西日本鉄道 高宮循環バス 0376 車内

この後、バスは西鉄バスの既存路線も停車する「寺塚」「長丘二丁目」に停車、既存路線からの乗り換え客と思われる乗客が乗車。
で、この先は、この路線の「売り」と思われる部分に差し掛かります。
こちらのPDFファイルの2ページ目に掲載されている路線図をご覧頂きたいのですが、長丘地区を反時計回りで回って、「長丘一丁目」から高宮地区に戻るというルート設定になっています。
実はこのルート、反時計部分の上の地区が高台に、下の地区が低地となっているのですが、坂を上らずにバス停へ移動できるように、高宮駅方面から乗車した方は高台の停留所で下車し、乗車するときは低地の停留所から乗車して貰おうという考えでこのルート設定になったそうです。
よく考えられていますね。

長丘地区回ってきたバスは、「長丘三丁目サニー前」「長丘一丁目」から再び高宮地区に入り、約40分程でバスは終点の西鉄高宮駅に戻ってきました。

沿線住民に配慮した路線設定

というわけで、西鉄の「長丘高宮循環バス」をご紹介しました。
僅かの時間ではありますが私が見て感じたのは、沿線住民に配慮した路線設定であるということでした。
特に長丘地区のルート設定は、地域の地形・状況が良く考慮されているという印象を受けました。
地元住民と思われる途中停留所からの乗降が頻繁に見受けられたというのも、「沿線住民・自治協議会と一体になった路線運営」を象徴している光景なのかなぁと思ったり。
個人的には、長丘地区のルート設定に感心した他、福岡市内でも「長丘高宮循環バス」の様な可能性のある路線がまだ残っているのだなぁと感じた次第です。
実はこの実見の2ヵ月後に、大分で開催された交通エコロジー・モビリティ財団主催の「地域バス交通活性化セミナー」というセミナーがあり、その時に西鉄のプレゼンを聞く機会があったのですが、そのプレゼンの中で、担当者(かなりお偉い方)の「福岡市内にはまだまだ路線バスが入っていけない地域があり、住民から路線開設の要望も多い。全部が全部応えられる訳ではないが、今後、沿線住民や自治会・自治体と話し合いながら、少しでも要望に応えられるよう努力していきたい。」という主旨の言葉が印象に残りました。
とかく西鉄というと、「はかた号」「Lions Express」をはじめとする高速バスや斬新なサービスばかりに目が行きがちですが、言葉は悪いですが、実は意外と泥臭い努力もしっかり行っていることに改めて驚いた次第です。
今後、西鉄が沿線地域にとってどの様な取り組み・サービスを提供していくのか・・・一バスファンではありますが、引き続き注目して見ていきたいと思います。


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