西日本鉄道・奈良交通「やまと号」(福岡~天理・奈良線)【アーカイブ】

夜行バス,高速バス アーカイブス

久しぶりのアーカイブネタになります。

以前、このブログで阪急バスと西日本鉄道が運行していた大阪梅田~筑豊・久留米・大牟田・荒尾線「ちくご号」をご紹介しました。


西日本鉄道「ちくご号」 3176

今回ご紹介する路線は、その続きとなります。

時はバブル経済が終焉を迎える直前の1989年後半から1990年前半。
バス業界は「第1次夜行高速バスブーム」を迎えており、各地で夜行高速路線バスが相次いで開業します。
福岡に本社を置く西日本鉄道(福岡市 以下:西鉄)も、福岡と京阪神方面を結ぶ夜行路線の強化策を打ち出し、路線数を増やしていきます。
今回ご紹介するこちらの路線↓も、「第1次夜行高速バスブーム」の真っ只中に開業しました。
西日本鉄道「やまと号」 4443

奈良交通「やまと号」福岡線 ・122
西鉄と奈良交通が共同運行していた福岡~天理・奈良線「やまと号」です。
現在では考えにくい路線設定ですが、開業当初はそれなりの利用があった路線でした。

夜行高速バス「やまと号」(福岡~天理・奈良線)とは?

夜行高速バス「やまと号」(福岡~天理・奈良線)は、1989年12月20日に西日本鉄道と奈良交通の2社共同運行路線として開業しました。
大阪~福岡線「ムーンライト号」を補完する目的で、主に奈良方面への観光客・ビジネス客と天理教関連の利用客を見込んで運行を開始したといわれています。

西鉄「やまと号」のパンフです。
西日本鉄道「やまと号」 パンフレット(表)  

こちらは、奈良交通のパンフです。
奈良交通「やまと号」 パンフレット(表)  奈良交通「やまと号」 パンフレット(裏)
小倉地区の運行経路が往復共「砂津→小倉駅前」の順になっていることに注目です。
当時は西鉄北九州市内線(路面電車)の砂津~黒崎駅前間が運行されていた時代で、小倉中心部の道路が一方通行であったことによるものですが、パンフレットを細かく見ていくことで、当時の取り巻く状況を窺い知ることが出来ますね。

こちら↓は西鉄「やまと号」ダイヤ改正後のパンフです。
小倉中心部の停車順序が変更されています。
西日本鉄道「やまと号」 2色刷りパンフレット

この「やまと号」福岡~奈良線、バブルが崩壊するまでは利用客も堅調に伸び、繁忙期には続行便が付くほどにまでの利用者数になりますが、残念ながらバブル崩壊という波には逆らうことが出来ず、その後の「やまと号」福岡~奈良線の利用者数は伸び悩みます。
更に、この路線については薬師寺や天理教関連行事の有無で乗客数の差が著しく、また西日本鉄道の夜行高速バス路線再編の影響もあって、2000年3月30日に廃止されました。

車内は3列シートの夜行高速仕様車が充てられていましたが、両社で大きく仕様が異なっていました。
西鉄は「ムーンライト」カラーに「YAMATO」のロゴが入った西工製専用車両(三菱P-MS729S 西工58MC SD-Ⅱ)を投入、その数年後にはモデルチェンジした西工ネオロイヤルSD-Ⅱ(三菱KC-MS822P)が投入されています。
何れも3列独立スリーピングシート28人乗り仕様となっており、プライベートカーテンを装備するなど、快適性を重視した車内が特徴でした。
一方の奈良交通は、3列独立シートと2+1配列混合の29人乗り日野グランデッカー(P-RU638BB)を投入、当時の奈良交通仕様を踏襲した車内の造りが特徴でした。
とある関係者から伺った話では、やはり西鉄便の方が客受けが良かったそうです。

私自身、「やまと号」福岡~奈良線には2度乗車したことがありますが、いずれも西鉄担当便で、乗車したのは2回ともこちらのタイプの車両↓でした。(写真は同型の車両が使用されていた福岡~大阪線「ムーンライト号」。)
西日本鉄道「ムーンライト号」 3134
福岡高速営業所所属(当時)の3133号車(三菱KC-MS822P 西工92MC SD-Ⅱ)が「やまと号」用として充てられていました。
杉本工業製スリーピングシートを搭載した3列独立シート28人乗りの夜行高速仕様車で、1996年春に「はかた号」続行用車両としてデビュー後、路線廃止まで「やまと号」専用車として活躍、「やまと号」廃止後は博多自動車営業所へ転属し、福岡~岡山線「ペガサス号」などで活躍した車両でもあります。

当時の記憶を思い起こすと、近鉄奈良駅を発車したバスは、天理駅、筒井駅、法隆寺バスセンターに停車後、法隆寺インターから西名阪自動車道~近畿道~中国道~山陽道~中国道~関門橋~九州自動車道を経由して、小倉・黒崎・福岡へ直行していました。
途中の休憩場所は、下り便が西名阪自動車道の香芝サービスエリアと関門橋手前の壇ノ浦パーキングエリア、上り便がめかりパーキングエリアと香芝サービスエリアであったと記憶しています。
因みに奈良交通便は、運行会社の都合で途中の開放休憩がありませんでした。
所要時間は約10時間と、「ムーンライト号」や「きょうと号」よりも若干長い程度でした。

というわけで、西鉄・奈良交通の夜行高速バス「やまと号」福岡~天理・奈良線を簡単にご紹介しました。
「ちくご号」や「きょうと号」などと同様、「ムーンライト号」ではカバーしきれない地区を上手くカバーしているという点で評価はしていたのですが、閑散期と週末・繁忙期との差(季節波動の差)がネックでした。
やはり、安定した利用者数がいないことにはどうしようもないということなのでしょうね。
運行期間が約10年と決して長くはありませんでしたが、奈良方面への観光や所用便利な路線だっただけに、もしかするとこのブログの読者の中で乗車されたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
恐らく路線が復活するということはまずありえないでしょうが、「過去にこの様なニッチ(?)な夜行路線があった」ということで今回紹介させていただきました。


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