夜行高速バス「カルスト号」で山口から神戸へ・・・
ここで、夜行高速バス「カルスト号」について、簡単に振り返っておきます。
夜行高速バス「カルスト号」が運行を開始したのは、第1次高速バスブーム最中の1990(平成2)年8月2日のこと。
防長交通と近鉄バスが大阪あべの橋~徳山・山口・萩間で運行を開始しました。
運行開始当初は、中国自動車道鹿野インター・秋芳洞(萩行のみ)経由でしたが、後に山陽自動車道経由に変更。
これに合わせる形で、山口県側の停留所の増設や見直しが行われます。
一方で、2007(平成19)年には三宮バスターミナルへの乗り入れを開始する他、2011(平成23)年3月には京都駅八条口への延伸、2018(平成30)年4月にはユニバーサル・スタジオ・ジャパンへの乗り入れ再会、大阪あべの橋(あべのハルカス)への停車終了など、関西地区停車停留所の拡充・見直しも行っています。
2022年4月には、山口県長門市(長門市役所・長門市駅・センザキッチン)への延伸を実施する他、同年8月には広島市の広域公園前駅(修道大学前)停留所を新設しますが、2024年4月1日のダイヤ改正で、長門市までの延伸運行を取りやめ萩発着に変更された他、山口市内の運行経路変更と停留所改廃(山口西京橋・山口宮野各停留所の新設と山口米屋町停留所の廃止)を実施、現在に至ります。
こちらも元近鉄バスの夜行バス車両? 防長交通「カルスト号」の車両を見てみる
夜行高速バス「カルスト号」の山口湯田温泉発車時刻は19時20分。
「カルスト号」を含めた防長交通の高速バスは2番のりばから発車します。
19時15分頃、1台のバスがやって来ました。
神戸・大阪・京都行き夜行高速バス「カルスト号」防長交通担当便です。
早速乗車しましょう。
今回は、こちらのバスに乗車しました。
防長交通萩営業所所属1184号車(日野セレガHD PKG-RU1ESAA)です。
カラーリングこそ現行の防長交通高速用カラーを纏っていますが・・・実は、こちらの車両も近鉄バスで夜行高速用車両として活躍していた車両を譲り受けたものです。
もしかすると、近鉄バス時代にも「カルスト号」として山口に来ていたかもしれませんね。
車内は、3列独立シート27人乗りの夜行高速仕様。
シートカバーこそ交換されてはいますが、シートモケットなどは近鉄バス時代そのままの状態で、前事業者時代の面影を色濃く残しています。
トイレは、車内中央部の階段を下りた突き当たりに設置。
窓側座席には、座席と通路を仕切るカーテンも設置しています。
もちろん、各座席には足置き台(フットレスト)とレッグレストを完備。
各座席には充電用コンセントを設置しています。
ただし、窓側座席のコンセントは内壁下にあるため、足置き台(フットレスト)とレッグレストを操作している時に充電器を破損しない様、注意する必要があります。
シートポケットには、Wi-fiの設定方法や乗車前・乗車後のサービスが記載されたリーフレットが入っています。
持ち出し禁止なのでご注意を。
トランクに荷物を預けると、写真の引換証が渡されます。
到着時の荷物受け取りに必要ですので、無くさない様にしましょう。
と、「カルスト号」の外観と車内を簡単にご紹介しましたが、夜行バスとして必要な設備はひと通り揃っている印象を受けました。
とはいえ、12年前に乗車した時と比較すると、自社発注車両を用意出来ない事業者の懐事情を垣間見た気がします。
どこも厳しいですね・・・。
途中休憩は消灯前の1回のみ 乗務員の仮眠休憩も
19時20分、山口湯田温泉2番のりばを発車したバスは、山口市内の山口西京橋、山口宮野(防長交通山口営業所)にて乗車扱いを行った後、国道262号を防府市内へ。
20時15分、防府駅前で5、6名乗車し、防府市内からは国道2号を防府東インターまで走行、防府東インターからは山陽自動車道を徳山西インターまで走行します。
徳山西インターからは、再び国道2号を走行し、徳山中心部へ。
21時00分、徳山駅前で数名乗車したバスは、徳山東インターから山陽自動車道に戻ります。
21時30分過ぎ、熊毛インターバス停に到着。
乗車扱いの他に、乗務員の交代が行われます。
というのも、実はこの「カルスト号」、全区間交代制の完全ワンマン運行を実施しているからでして、JRバスの東京~大阪間「ドリーム号」「昼特急号」の道の駅もっくる新城(愛知県新城市)での乗務員交代をイメージしていただけると分かりやすいかと思います。
こちらでは、萩から乗務した防長交通萩営業所の乗務員から、同社周南営業所の乗務員に交代。
引継ぎ業務を行い、21時36分、定刻にバスは熊毛インターバス停を発車します。
熊毛インターバス停を発車したところで、交代した乗務員による補足説明が行われます。
その後、バスは玖珂インターで乗車扱いのために停車し、岩国インターで山陽自動車道を降ります。
岩国駅前と、広島県に入り大竹インター入口で乗車扱いを行い、大竹インターからは再度山陽自動車道を走行します。
五日市インター近くの広域公園前駅(広島市)では、10人近くの乗客が乗車。
広島市中心部からはかなり離れているものの、新交通システム「アストラムライン」で乗り換えなしでアクセス出来る他、「アストラムライン」の運賃を考慮しても、他社路線よりも安く関西へ移動出来ることから、最近利用客が増えている停留所でもあります。
広域公園前駅で予約済みの乗客が全員揃ったところで、23時07分、バスは広域公園前駅を発車。
山陽自動車道に戻り、ここから先は山陽自動車道~播但連絡道路~姫路バイパス~加古川バイパス~第二神明道路~阪神高速道路などを経由し、神戸・大阪・京都へ向かいます。
広域公園前駅を発車して約30分後の23時45分、バスは唯一の開放休憩場所である山陽自動車道小谷サービスエリアに到着。
こちらでは、00時00分までの15分間停車しました。
小谷サービスエリアは、広島市高屋町小谷にある山陽自動車道上のサービスエリア。
トイレ、自販機の他、売店、レストラン、コンビニ、シャワーステーション、コインランドリーなど、設備が充実しているサービスエリアとしても知られています。
駐車場も広く、昼夜問わず多くの車やトラック、バスが停車しています。
消灯前の開放休憩、そして唯一の開放休憩ということもあり、大半の乗客がバスを降りてトイレや洗顔、買い物などを済ませていました。
バスも、これから先の深夜走行に向けて、しばしのひと休みです。
00時00分、乗客が全員揃ったところで、バスは小谷パーキングエリアを発車。
発車後、乗務員から消灯前の案内があり、その10分後の00時10分、車内は消灯となりました。
消灯後、バスは数回の休憩停車を挟みながら、山陽自動車道から播但連絡道路、姫路バイパス、加古川バイパス、第二神明道路、阪神高速道路を経由し、関西へ向かいます。
しばらくは起きていましたが、シートを倒して目を瞑ると、いつしか夢の中へ。
翌朝まで目を覚ますことはありませんでした。
早朝の三宮バスターミナルに到着
翌朝5時前、目を覚ますと、バスは第二神明道路の明石サービスエリアに停車していました。
どうも夜中の3時過ぎには到着していた様で、乗務員はこちらで約2時間、車両床下の仮眠室で仮眠していた様です。
05時14分、バスは明石サービスエリアを発車。
第二神明道路から阪神高速道路を神戸三宮へ向けて走行します。
05時30分頃、車内灯が点灯され起床。
まもなくして、乗務員から起床及び神戸三宮到着の案内があります。
05時40分、京橋ランプを通過。
そして、05時46分、定刻より10分ほど早く、バスは神戸三宮の三宮バスターミナル(ミント神戸)に到着しました。
終着は京都駅八条口ですが、今回は行程の都合でこちらの三宮バスターミナルで下車。
大阪・京都へ向けて発車する「カルスト号」の姿を見届け、私は阪神電鉄の三宮駅へ向かうのでありました。
最後に
以上、防長交通の夜行高速バス「カルスト号」に山口から神戸三宮まで乗車した時の模様をご紹介しました。
約12年ぶりの乗車でしたが、12年も経てば運行形態も車両も変わるわけで、時の流れを感じるとともに、(肌感覚ではありますが)同路線の現状を知ることが出来ました。
今回乗車した限りにおいては、山陽新幹線の恩恵を受けにくい防府地区からの乗車と、郊外とはいえ広島市内にある広域公園前駅からの乗車が多かったのが印象に残りました。
12年前に乗車した時は、時期が異なっていたとはいえ各停留所ほぼ均等の降車客数でしたが、今回の乗車では、山口や徳山での乗車が少ない代わりに防府地区と広域公園前駅での乗車が多く、特に広域公園前駅での乗車の多さに注目した次第です。
聞くところによると、「カルスト号」しかり萩~東京線「萩エクスプレス」しかり、広域公園前駅での乗降が結構あるそうです。
具体的な数字を把握していないので何ともいえませんが、住宅が多い広島市北部から関西・東京方面への夜行移動ニーズを上手く掴んでいるのではと感じました。
加えて、「萩エクスプレス」については、広島~東京間の3列シート夜行バスが皆無に近いということ、そして、「カルスト号」については、広島駅へ出て夜行バスに乗り換えるよりも広域公園前駅から乗車した方が安くて楽ということもあるのかもしれません。
一方で、山口県内からの利用はどうなのか・・・。
こちらは正直心配になりました。
防府からの乗車数がそれなりにあったとはいえ、萩、山口地区、岩国地区からの乗車が少ないのはもとより、防長交通のお膝元である周南市(徳山駅前)からの乗車も少ないことを考えると、12年前よりも山口県内からの利用が減少傾向にあるのではないか、それゆえにある程度利用が見込めそうな広島市内北部(広域公園前駅)の停車を決断したのでは?とも推測出来るわけで、これに燃料費高騰や乗務員不足などを考えると、完全ワンマン運行でコスト削減を行っているとはいえ、路線を取り巻く環境はかなり厳しいのでは・・・と思う次第です。
今後どうするかは事業者側の判断となりますが、(あくまで素人目線ですが)防長交通の夜行路線に関してはかなり難しい判断になるのでは?と思います。
停車停留所を増やすことで乗車率を上げるのは、夜行バスの乗車率を上げる方法として王道のやり方ですが、遠方に行けば行くほど所要時間が増大するというデメリットもあるわけで、「カルスト号」の場合、京都から萩まで乗車するとなると、14時間近くも乗車しなければなりません。
所要時間14時間というのは、あの西鉄「はかた号」に匹敵する所要時間。
私の様なバス好きであれば「是非とも全区間乗ってみたい!」と思いますが、一般の利用者からすると、関西から本州西部まで14時間もバスに乗るというのは、かなり苦痛に感じる筈です。
かといって、萩地区は防長交通の主要エリアのひとつ。
観光客の利用が見込めるとのことで、「カルスト号」も「萩エクスプレス」も運行開始当初から山口側の起終点を萩にしたという経緯があります。
東京・関西~萩間を乗り換えなしで移動出来るというのは大変便利なのですが、採算性の問題や乗務員の拘束時間などを考慮すると、ひとつの方法として、運賃改定(値上げ)でお客様にご理解をお願いするとともに、いっそのこと山口止まりに変更(→新山口駅→湯田温泉→西京橋→山口宮野終点ろいう運行経路に変更)して新山口駅で高速バス「スーパーはぎ号」やり防長交通の一般路線バスに接続させるというやり方もあるのではと、今回の乗車で感じた次第です。
色々と書きましたが、利用客の動向やニーズを見て細かく変更するという印象の防長交通の夜行高速バス。
今後も今の形態を維持し続けるのか、それとも驚く様な変化を遂げるのか、いち利用者として同社の動向には引き続き注目したいと思います。
出来れば、近いうちに「カルスト号」全区間完全乗車をしてみたいですね。
【乗車データ】
- 乗車日:2024/04/25
- 乗車区間:
山口湯田温泉→三宮バスターミナル(ミント神戸) - 運行会社:防長交通
- 車両:日野/セレガHD(PKG-RU1ESAA)
- 年式:2008年式
- 所属:萩営業所(乗務員運用は萩営業所と周南営業所共管)
- 社番:1184
【お知らせ】
防長交通の夜行高速バス「カルスト号」のご予約・ご購入はこちらのサイトでも受け付けています。
【おまけ】動画にしてみました
宜しければご覧いただけると幸いです。



