北海道初の自動運転バス実証実験を見に上士幌町へ行ってきました

昼行高速バス,一般路線バス

ここ数年来で急速に開発が進められている自動運転技術。
バスも例外でなく、日本では後述するソフトバンクの子会社「SBドライブ」やDeNAといったIT関連企業などが無人自動運転バスの開発を手掛けています。
世界では無人自動運転バスの開発競争が始まっているともいわれていますが、運転手不足に悩む日本のバス業界にとって、自動運転は注目されている技術の一つであることには間違いないでしょう。

これまで、日本でも千葉市幕張や秋田県仙北市の田沢湖畔で走行実験を行ってきましたが、実は2017年10月14日~16日の3日間、道内初の自動運転バス実証実験が北海道十勝管内の上士幌町で実施されました。

上士幌 自動運転バス実証実験_12

主催したのは、上士幌町と、ふるさと納税のポータルサイトを運営するトラストバンク(東京都)などで構成する「ジャパン・イノベーション・チャレンジ(JIC)2017」実行委員会。
「ジャパン・イノベーション・チャレンジ(JIC)」とは、日本国内におけるロボット関連技術の発展や製品化の加速、競争力の強化を支援するために、遭難救助をテーマに実施の山を使用したしたロボットコンテストで、昨年2016年より開催されています。
今回の自動運転バス実証実験は、この「ジャパン・イノベーション・チャレンジ(JIC)2017」の開催に合わせて企画され、車両提供及び運行管理はソフトバンクの子会社「SBドライブ」が行いました。

私自身、自動運転バスにはこれまで一度も乗車したことがなく、実証実験の話を聞いた瞬間、「これは一度見てみないと・・・」ということで、実証実験の初日である2017年10月14日に上士幌町へ行ってきました。
その時の模様をご紹介しましょう。

既にスイスで実用化されているフランス「Navya」製電気バス

今回は現地での乗車時刻の関係から、札幌~上士幌間を旭川経由で移動。
札幌~旭川間はJR特急「ライラック」「カムイ」を、旭川~上士幌間は道北バスの都市間バス「ノースライナーみくに号」を利用しました。
JR北海道 789系「ライラック」

道北バス「ノースライナーみくに号」 1100_101

道北バス「ノースライナーみくに号」 1100_102

道北バス「ノースライナーみくに号」 1086_105

道北バス「ノースライナーみくに号」 1086_110

道北バス「ノースライナーみくに号」 1086_112

道北バス「ノースライナーみくに号」 1086_113
「ノースライナーみくに号」の車両から眺める、冬間近の大雪連山と三国峠からの風景は見応えがありますね。

上士幌に到着した私は、徒歩で会場の上士幌役場へ。
役場周辺の町道は封鎖されており、実証実験はこの封鎖された町道(1周約600m)を使用して行われました。

役場前の広場に展示してあった自動運転バスです。
上士幌 自動運転バス実証実験_02

上士幌 自動運転バス実証実験_03

上士幌 自動運転バス実証実験_07
ここで、実証実験で使用されたバスについて簡単に紹介しますと、今回SBドライブが持ち込んだのは、フランスのベンチャー企業Navya社製の「NAVYA ARMA」という自動運転シャトルバスです
約10年の開発期間をかけた同社のフラッグシップモデルとなります。
GPSなどで自車位置を測位し、レーザーレーダーやカメラなどで障害物を検知して、あらかじめ設定したルートを自律走行することが出来るそうで、自動走行車としては最高の「レベル5」に達しているそうです。
設計上の走行時間は最大13時間、最高速度は45km/h、乗車定員は15名となっています。
2016年からスイス・シオンの公共交通機関として導入されているほか、アメリカやオーストラリア、ニュージーランドなどで試験走行が実施されています。

私が乗車したのは、14時10分発の便。
所要時間は10分でした。
上士幌 自動運転バス実証実験_15

早速車内に乗車してみます。
上士幌 自動運転バス実証実験_17

上士幌 自動運転バス実証実験_16

上士幌 自動運転バス実証実験_18
まず気付くのは、ハンドルや運転席が一切ないことです。
そして、車内もコンパクトに纏められているなぁという印象を受けます。
実際の操作は、車載コンピュータを利用して行なう仕組みになっているそうです。
もちろん、緊急時を考慮して自動停止ボタンも設置。
車内のタッチパネルでは、運行ルートや各種操作が行えるようになっていますが、実際のドアの開け閉め操作は乗客が行えるようにもなっているとのことでした。
因みに、実際の運行管理は専用の管理センターが遠隔で行っているそうですが、今回はあくまで実証実験ということで、SBドライブのエンジニアと思わしき社員2名も同乗します。

バスは、約150m先の停止線にて停車後左折。
その後、約150m走行して左折したところにある1か所目の仮設停留所にてドアの開閉を実施した後、段差のある交差点を左折。
上士幌 自動運転バス実証実験_13

上士幌 自動運転バス実証実験_14
電気自動車ということもあってか、走行音は至って静かです。
2箇所目の仮設停留所に停車した後は、前後逆となり走行。
100m程走行して出発点に戻ります。
上士幌 自動運転バス実証実験_11
写真を見てもらえれば分かるかと思いますが、実は前後同一デザインを採用しています。
厳密には前後の区別があるそうですが、実際には前にも後ろにも進むことができます。

センサ類の精度向上と自動運転自体の信頼性向上が鍵か?

というわけで、10分間の自動運転バス乗車はあっという間でした。
先述の通り、今回の実証実験で用いられた車両が電気自動車ということもあり、走行音は至って静かでした。
乗り心地も、自動車用のラジアルタイヤを装着していたということもあってか、バスというよりは小型のワゴン車に近い乗り心地かなぁという印象を受けました。
あとはセンサ類の精度をどれだけ高められるかと、自動運転バス自体の信頼性をどこまで高められるかにかかっているのかなぁと思います。
今回の実証実験でも、私が乗車した回で1箇所のみではありますがセンサの誤作動により緊急停止した場面もありましたし、特に北海道では雪や寒さでのセンサ誤作動をどう防ぐかという課題もあります。
試乗した人からは「快適だったが運転手がいないというのは少し不安を感じた。」という意見もあったそうです。
もっとも、SUBARUの「アイサイト」で採用されている「ステレオカメラ」の併用などでセンサ類の精度も上げられるでしょうし(実際にステレオカメラが搭載出来るスペースはあるそうです)、万一の事態に備えた装備・システムの充実も今後図られていくでしょうから、本格的な実用化に向けて今後期待出来る分野であることには間違いないでしょう。

会場に来ていた十勝バスの野村社長もマスコミのインタビューで答えていましたが、将来は間違いなくこういう時代になっていくのかなぁと私も思います。
あくまで過度な期待は禁物ですが、人口減による利用客の減少、さらには乗務員不足が深刻化しているバス業界にとって、自動運転バスはこれまでの悪循環(人口減>利用客減>減便、下手をすれば廃止)を良い方向へ変えてくれる一手になりうるかもしれない・・・そんなことを感じた、上士幌町の自動運転バス実証実験でございました。

上士幌 自動運転バス実証実験_01


応援して頂けると嬉しいです。
↓  ↓  ↓  ↓

その他ランキング
にほんブログ村 その他趣味ブログ バス(車)へ
にほんブログ村