とさでん交通「はりまや号」廃止直前乗車記(2017年9月乗車分)

夜行バス,高速バス乗車記,高速バス アーカイブス

1993年7月2日の運行開始以来、約24年間に渡って運行し続けてきた福岡・北九州~高知間夜行高速バス「はりまや号」

とさでん交通「はりまや号」 ・207

前々回の記事で、夜行高速バス「はりまや号」の廃止について取り上げましたが、今般、九州方面への所用の帰路の足として「はりまや号」を選択。
廃止が迫っている「はりまや号」の雄姿を見て来ました。
今回はその時の模様をご紹介しましょう。

前々回の記事「夜行高速バス「はりまや号」廃止へ・・・」は、以下のリンクにてご確認願います。


九州~四国間を最初に結んだ夜行バス「はりまや号」

ここで、改めて夜行高速バス「はりまや号」の歴史について簡単におさらいしておきましょう。
福岡・北九州~高知線「はりまや号」は、1993年7月2日に西日本鉄道(以下:西鉄)、土佐電気鉄道、高知県交通の3社共同で運行を開始しました。
西鉄「はりまや号」 4474
福岡~高知間を結ぶ夜行高速バスの誕生は、運行区間の珍しさもさることながら、九州と四国の間を結ぶ最初の夜行高速バスとして注目を集めました。
車両は、3社とも既存車両を流用していましたが、西鉄は「ムーンライトカラー」の車両を当時の夜行高速用テスト塗装に衣替えし、「はりやま号」専用車として充てていた他、当時の土佐電気鉄道、高知県交通の2社は、東京新宿線「ブルーメッツ号」と同仕様の車両を投入するなど、「はりまや号」に対してはそれなりに力を入れていた記憶があります。
しかしながら、利用状況は当時より思わしくなく、1999年5月末日をもって西鉄は運行から撤退、運行支援業務に専念することになります。
その後、運行経路の変更(坂出経由に変更)、三島川之江インター停留所の追加、さらには事前購入割引運賃の導入など、利便性向上の施策を打ちますが、残念ながら2017年10月5日をもって廃止されることになりました。

「はりまや号」が世に知られることになったのは、あの北海道地区のローカルバラエティ番組「水曜どうでしょう」の初期の企画「サイコロの旅2」で、「はりまや号」が登場したことではないでしょうか。
この時は、確か当時の土佐電気鉄道担当便に乗車していましたが、あのお二方(鈴井貴之・大泉洋)の壇ノ浦パーキングエリア下車休憩時のやられっぷりは、通称「壇ノ浦レポート」として有名になりました。
「水曜どうでしょう」をきっかけに「はりまや号」を知った方も多い筈。
「はりまや号」の廃止のニュースは、ネットニュースサイト「ねとらぼ」にも取り上げられ、「水曜どうでしょう」のファンを中心にSNSなどで拡散。
廃止を惜しむ声が今でもSNSなどで書き込まれています。

新塗装に衣替えした車両で一路高知へ・・・

やって来たのは、福岡天神の中心に位置する西鉄天神高速バスターミナル。
いうまでもなく、日本有数の高速バス専用バスターミナルであります。
西鉄天神高速バスターミナル
2015年春に大規模リニューアルを敢行。
ホテルのロビーを彷彿させる落ち着いた雰囲気のバスターミナルに生まれ変わりました。

夜行高速バス「はりまや号」は、西鉄天神高速バスターミナル6番のりばから発車します。
のりば入口のデジタルサイネージには、「はりまや号」廃止のお知らせも映し出されていました。
西鉄天神高速バスターミナル 「はりまや号」廃止のお知らせ

今回乗車した車両はこちら↓。
とさでん交通「はりまや号」 ・209

とさでん交通「はりまや号」 ・209 リア
かつて高知県交通に在籍していた2012年式の日野セレガHD(LKG-RU1ESBA)です。
最近になってとさでん交通高速用新塗装に衣替えしました。

車内はこの様になっておりまして、
とさでん交通「はりまや号」 ・209 車内

とさでん交通「はりまや号」 ・209 シート

とさでん交通「はりまや号」 ・209 飲み物セルフサービス

とさでん交通「はりまや号」 ・209 トイレ
3列独立シート29人乗りの標準的な夜行高速仕様を採用していますが、通路が赤色の絨毯敷きになっているあたり、同社の昔からのこだわりを感じます。
残念ながら通路カーテンは装備されていませんが、各座席には腰をホールドするクッションを備えている他、携帯電話・スマートフォン充電用の座席コンセントが後付けされています。
更に、車内中央部にはトイレとセルフサービスコーナーを完備。
セルフサービスコーナーでは、コーヒー・お茶・冷水が提供されます。

で、この車両、どこかで見覚えがあるなぁ・・・と思いきや、実は2012年の7月、高知県交通在籍時代に、神戸~高知線「ハーバーライナー」で乗車していました。
高知県交通「ハーバーライナー」 ・209

高知県交通「ハーバー?ライナー」 ・209 車内
改めて比較してみると、内装こそ当時とほぼ変わりませんが、外観が変わるとこうもイメージが大きく変わるのか・・・と驚かされます。

「はりまや号」の発車は21時50分。
発車の10分前にはのりばに入線し、乗車改札が行われます。
とさでん交通「はりまや号」 ・209 西鉄天神高速バスターミナル改札中 その1

とさでん交通「はりまや号」 ・209 西鉄天神高速バスターミナル改札中 その2

西鉄天神高速バスターミナルから乗車したのは、私を含めて6名。
博多バスターミナルで7名乗車し、総勢13名で福岡を後にします。
週末の日曜日で東京や名古屋、岡山、高松、松山方面行きの夜行バスが軒並み満席であったことを考慮すると、福岡発車時点で13名という乗客数はいささか寂しいですね。

博多バスターミナル発車後、交代乗務員による自己紹介と各種案内、車内設備案内DVDの放映、そして再び交代乗務員による補足説明が行われます。
とさでん交通「はりまや号」 ・209 車内設備案内DVD放映 その1

とさでん交通「はりまや号」 ・209 車内設備案内DVD放映 その2

とさでん交通「はりまや号」 ・209 車内設備案内DVD放映 その3
車内設備案内を自動放送案内や自動放送案内&モニター映写で実施する事業者は数多くありますが、DVD放映する事業者は数少ない気がします。
案内終了後に高知県のお土産を紹介するPR放送を流すあたり、とさでん交通らしさを感じます。
新会社へ移行してから接客にも力を入れているということもあってか、乗務員の案内も丁寧で好感が持てます。

バスは福岡都市高速道路から福岡インターへ。
22時25分、九州自動車道に流入します。
九州自動車道を30分程走行し、バスは九州自動車道から北九州都市高速道路へ。
黒崎インター引野口、砂津(チャチャタウン前)、小倉駅前にて乗車扱いを行った後、再度北九州都市高速道路に入り、23時44分に門司インターから再び九州自動車道に流入します。

23時53分、バスは関門橋の手前にあるめかりパーキングエリアに到着。
こちらで23時55分までの間、開放休憩となりました。
とさでん交通「はりまや号」 ・209 めかりPAにて

とさでん交通「はりまや号」 ・209 めかりPAにて その2
目の前にはライトアップされた関門橋が。
そして橋渡った対岸には、「水曜どうでしょう」の企画「サイコロ2」の「壇ノ浦レポート」の舞台となった『壇ノ浦パーキングエリア』があります。
下り便では、壇ノ浦パーキングエリアにて開放休憩が実施されるため、リアル「壇ノ浦レポート」が体験出来るかもしれません。(笑)

開放休憩を終えたバスは、0時05分にめかりパーキングエリアを発車。
すぐさま消灯となり、この先は翌朝の開放休憩まで一切下車することが出来ません。
この間、バスは山口県の山陽自動車道玖珂パーキングエリアと広島県の山陽自動車道福山サービスエリアにて乗務員交代を行います。
途中の乗務員交代で目を覚ましますが、腰をホールドするクッションの固さ具合が私には丁度良く、乗務員交代時以外はぐっすりと眠ることが出来ました。

翌朝4時52分、バスは瀬戸大橋に差し掛かります。
約5分かけて瀬戸大橋を走破したバスは、坂出ジャンクションから高松自動車道へ。
そして5時32分、バスは豊浜サービスエリアに到着します。
高松自動車道 豊浜サービスエリア

こちらでは5時45分までの間、朝の開放休憩となりました。
とさでん交通「はりまや号」 ・209 豊浜SAにて その1

とさでん交通「はりまや号」 ・209 豊浜SAにて その2

とさでん交通「はりまや号」 ・209 豊浜SAにて その3

とさでん交通「はりまや号」 ・209 豊浜SAにて その4

とさでん交通「はりまや号」 ・209 豊浜SAにて その6

隣には、東京渋谷・二子玉川から来た今治行き夜行高速バス「パイレーツ号」(瀬戸内運輸・東急トランセ)も停車しています。
とさでん交通「はりまや号」 ・209&「パイレーツ号」

朝の開放休憩を終えたバスは、川之江ジャンクションから進路を変え高知道を南下します。
左手には朝日が。
とさでん交通「はりまや号」 ・209 朝の車窓 その1

とさでん交通「はりまや号」 ・209 朝の車窓 その2
高知に近づいていることを実感します。

6時27分、バスは南国インターを流出し一般道へ。
暫く一般道を走行し、6時43分、最初の降車停留所である中野団地北口に到着します。
こちらでは1名が下車していきました。
その14分後の6時57分、一宮バスターミナルに到着し1名が下車。
そして7時08分、バスは定刻よりも15分早く高知駅バスターミナルに到着しました。
とさでん交通「はりまや号」 ・209 高知駅BT到着
こちらでは乗客の約半数が下車。
三々五々にそれぞれの目的地へと向かって行きました。
「はりまや号」の終点はとさでん交通の本社ある桟橋高知営業所ですが、今回は諸事情により高知駅バスターミナルで下車。
去り行く「はりまや号」の後姿をしばし眺めているのでありました。

「はりまや号」廃止後の福岡~高知間高速バスは?

というわけで、とさでん交通「はりまや号」の廃止直前乗車記をお届けしました。
前々回の記事でも書きましたが、「24年間も良くもったなあ・・・」これが私の正直な感想です。
普段の乗客数や、閑散期と繁忙期の乗車率の差の大きさ、更にはライバル路線の登場(琴平バス「コトバスエクスプレス」)などを考えると、本来であればもっと早く廃止されていてもおかしくなかった・・・のかもしれません。
更に、今回の廃止は採算性の悪化に加え、乗務員不足も理由の一つにあったともいわれています。
そう考えると、今日まで運行を続けてきた事業者の努力は評価したいですし、感謝もしたいですね。

一方で、「はりまや号」廃止の福岡~高知間高速バスはどうなるのか・・・。
当分の間は、現在宇多津乗り換えという形で福岡~高知間を運行している琴平バス「コトバスエクスプレス」が、「はりまや号」の代わりとして機能することになるでしょうが、既存事業者が指を加えて眺めているとは到底思えないのです。
他社が福岡~高知間の高速バスを新設することは現時点では無いでしょうが、現在西鉄高速バス・四国高速バスと徳島バスが提携して販売している「福岡~高松~徳島間乗り継ぎ割引きっぷ」の様な乗り継ぎきっぷを、西鉄高速バス・四国高速バスととさでん交通が提携して販売する・・・といった動きが今後出て来るのではないかと見ています。
トータルの所要時間がネックにはなりますが、格安で移動したい層の利用がある程度見込めると推測され、事業者間の調整及び予約システムの調整が出来れば実現可能ではないかと考えます。

【追記】
四国高速バスから、「はりまや号」廃止に伴う高知~高松線「黒潮エクスプレス」(四国高速バス・とさでん交通・ジェイアール四国バス)と高松~福岡線「さぬきエクスプレス福岡号」(四国高速バス・西鉄高速バス)の乗り継ぎサービスに関する公式リリースが出ました。


⇒ 『高知~福岡間 高松乗り換えのご案内』(四国高速バス公式サイト)

乗り継ぎ割引運賃の設定も予定されているそうですが、現在調整・準備中のため、詳しくは四国高速バス公式サイトなどでご確認をお願いいたします。

ともあれ、福岡~高知間を格安かつ乗り換えなしで移動出来る交通機関が無くなることは、特にイベント開催時や帰省などで利用していた若年層にとっては正直キツイのではないでしょうか。
今後、琴平バス「コトバスエクスプレス」が「はりまや号」が果たしていた役割を担っていくのか・・・それとも既存事業者が新たな手を打つのか・・・一利用者として、はたまた一バスウォッチャーとして今後の動向には注目して見ていきたいですね。
「はりまや号」に対しては、「24年間ご苦労様!そしてありがとう!」という言葉を贈りたいと思います。
2017年10月5日(福岡発)のラストランまであと僅か。
まだ乗車されていない方は、一刻も早く乗車されることをお勧めします。

とさでん交通「はりまや号」 ・209 豊浜SAにて その5


【乗車データ】 
  • 乗車日:2017/09/24
  • 乗車区間:
    西鉄天神高速バスターミナル→高知駅バスターミナル
  • 運行会社:とさでん交通
  • 車両:日野/セレガHD(LKG-RU1ESBA)
  • 年式:2012年式
  • 所属:桟橋(高知)営業所
  • 社番:209

応援して頂けると嬉しいです。
↓  ↓  ↓  ↓

その他ランキング
にほんブログ村 その他趣味ブログ バス(車)へ
にほんブログ村