南海バス「サザンクロス」鶴岡・酒田線 乗車記

夜行バス,高速バス乗車記

山形県の北西部に位置し、出羽山地、鳥海山(ちょうかいさん)、日本海と、山と海に囲まれた広大な平野が広がる自然豊かな山形県庄内地方。
この庄内地方と関西を結ぶ夜行高速バス「大阪・京都~鶴岡・酒田線」が、2017年4月28日に運行を開始しました。

南海バス「サザンクロス」酒田線 車内ポスター

パートナーとして手を組んだのは、大阪府堺市に本社を置く南海バスと、山形県鶴岡市に本社を置く庄内交通。
両者とも高速路線バスの運行に関しては実績のある事業者であります。
そして、南海バスにとっては初の東北方面への夜行高速路線の開設となったと同時に、庄内交通にとっても初の関西方面への夜行高速路線開設となりました。
今回、何故にこの2社が関西~庄内間の夜行高速バスを開設することになったのか・・・。
そこには、庄内地方にとっての予てからの念願が背景にあったのです。

念願だった「関西直通交通機関の復活」

関西と山形県庄内地方を結ぶ直通交通機関といえば、2012年春で廃止されたJR寝台特急「日本海」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
JR寝台特急「日本海」
大阪発の場合、酒田到着が早朝4時前と決して使いやすいダイヤではありませんでしたが、寝台特急「日本海」は、関西と山形県庄内地区を直通する交通機関として重宝されていました。
加えて、かつては大阪(伊丹)~庄内空港の航路も就航していましたが、これらはいずれも廃止され、以来、関西と山形県庄内地区を直通する交通機関はほぼ皆無の状態でした。
関西との関係が希薄になることに危機感を抱いた地元経済界などは、これまでにもJRなどへ関西~庄内間直通交通機関の復活のための陳情活動を行っていましたが、残念ながら実現することはありませんでした。
それだけに、夜行高速バス「大阪・京都~鶴岡・酒田線」の開設は、特に庄内地方にとって念願の「関西直通交通機関の復活」であるといえるでしょう。

聞くところによると、今回ご紹介する「大阪・京都~鶴岡・酒田線」は、南海バスと庄内交通にとっても長年の懸案路線であったそうで、実は10年近く前に一度南海バスから庄内交通へ路線開設の打診があったものの、諸事情により実現しなかったそうです。
で、今回は当時の経緯を知っていた庄内交通側から南海バスへ路線開設を打診し、めでたく運行が実現したといわれています。

地元紙でも取り上げられ、庄内地方にとって期待の夜行高速バス「大阪・京都~鶴岡・酒田線」。
久しぶりの総延長800kmオーバーの路線開設ということもあってか、この路線に興味を持った私は、開業2日目の便に乗車すべく、仕事を終えて秋田県酒田市へと向かうのでありました。

関西からの南十字星、酒田に現る

苫小牧から新日本海フェリー「らいらっく」、そしてJR特急「いなほ」などを乗り継いで山形県酒田市にやって来た私。(写真はイメージです。)
道南バス「新日本海フェリーアクセスバス」 ・997

新日本海フェリー「らいらっく」

JR東日本 E653系「特急いなほ」

JR酒田駅から徒歩数分で酒田庄交バスターミナルに到着します。
酒田庄交バスターミナル その1

酒田庄交バスターミナル その2

酒田庄交バスターミナル その3
酒田庄交バスターミナルは、庄内交通が有する基幹バスターミナルの一つ。
酒田市内や近郊を走る庄内交通の路線バスはもちろんのこと、酒田市福祉乗合バス「るんるんバス」、東京行き夜行高速バス「夕陽号」、そして夜行高速バス「大阪・京都~鶴岡・酒田線」もこちらから発車します。

18時45分、夜行高速バス「大阪・京都~鶴岡・酒田線」が入線します。
開業2日目の酒田発の便は、南海バスが運行を担当。
かつて東京駅・新宿~なんば・堺線で活躍していた日野セレガHD(QRG-RU1ESBA)が充てられていました。(写真はイメージです。)
南海バス「サザンクロス」酒田線 ・477

南海バスは夜行高速バスを「サザンクロス」の愛称で統一しており、南海の「N」が大きく配された目立つ車体デザインが特徴です。
1988年の「サザンクロス」東京~和歌山線運行開始以来、この車体デザインが踏襲されています。
南海バス「サザンクロス」酒田線 ・477 酒田庄交バスターミナルにて

南海バス「サザンクロス」酒田線 ・477 酒田庄交バスターミナル改札中 その1

南海バス「サザンクロス」酒田線 ・477 酒田庄交バスターミナル改札中 その2
南海高速バス「サザンクロス」の運行開始から来年秋で30周年を迎えますが、30年近く経過しても古臭さを感じないこの車体デザイン・・・「サザンクロス」の車体デザインを考えた人はセンスがあるなぁといつも思うのであります。

車内は3列独立シート28人乗りの夜行高速仕様となっています。
南海バス「サザンクロス」酒田線 ・477 車内

南海バス「サザンクロス」酒田線 ・477 シート

南海バス「サザンクロス」酒田線 ・477 座席コンセント
シートは西武バス「高岡・氷見線」新型車両やとさでん交通「ブルーメッツ号」新型車両などで採用されている天龍工業製の新型シートを採用。
リクライニング角度も深く、長時間の移動を快適に過ごすことが出来ます。
更に、各座席にはコンセントや通路カーテンを完備する他、フリーWi-fiサービスも提供しています。
元々同社は、在阪事業者の中でもサービスレベルの高さに定評がありましたが、このサービスレベルの高さはJRバス「グランドリーム号」に匹敵するのではと感じました。
因みに、共同運行の庄内交通「夕陽号」は、東京線で活躍している車両と同仕様の3列独立シート28人乗り後部トイレ仕様の三菱エアロエース(QTG-MS96VP)を投入しています。

19時00分、バスは定刻に酒田庄交バスターミナルを発車します。
イオン酒田南店、庄内町余目駅前、鶴岡エスモールバスターミナル、庄内観光物産館の各停留所で乗車扱いを行ったバスは、鶴岡西インターから日本海東北自動車道へと入ります。
庄内観光物産館を発車したところで、改めて交代乗務員による自己紹介と運行経路、車内設備などの案内が行われますが、酒田発車時からの丁寧な案内と気さくな対応には好感が持てます。
車内設備の案内は、車内モニターを用いて実施していました。
南海バス「サザンクロス」酒田線 ・477 車内設備案内

この便の乗客は私を含めて8名と少なかったのですが、それでも開業初便は上り便がほぼ満席で下り便も15名程が乗車していたとか。
加えて、ゴールデンウィーク期間中は予約が好調という話を聞きましたので、これからに期待といったところでしょうか。

日本海東北自動車道をあつみ温泉インターで降りたバスは、県道348号から国道7号へ。
そして20時50分、バスは消灯前の休憩場所である道の駅あつみに到着します。
こちらでは10分間の開放休憩が設定されていますが、駐車場に外灯が殆どないために、辺りは真っ暗。
乗務員からも、「外は照明がなく真っ暗ですので移動の際はお気を付け下さい。」と案内する程でした。

21時00分、乗客が全員揃ったところでバスは発車。
この先は国道7号~日本海東北自動車道~北陸自動車道~名神高速道路などを経由して、京都・大阪へ向けてひた走ります。
21時10分、消灯。
夜行バスにしては随分と早い消灯時間ですが、約13時間走破する路線だけに仕方がありません。
暫くは起きていましたが、22時過ぎには夢の中へ。

翌朝の4時45分頃、米原ジャンクションを過ぎたところで目が覚めました。
おおよそ6時間程寝ていたことになるでしょうか。
普段の睡眠時間がこれ位ですので、十分に眠れたといっていいでしょう。
外は夜が明けはじめ、次第に明るくなっていきます。

5時32分、バスは朝の休憩場所である名神高速道路草津パーキングエリアに到着します。
室内灯が付けられ、朝の案内の後に10分間の開放休憩が実施されます。
名神高速道路 草津パーキングエリア
草津パーキングエリアは、駐車場の敷地も広く、買い物施設も充実しています。
私を含め、半数以上の乗客がバスを降りてトイレや洗顔、買い物を済ませていました。

朝のパーキングエリアに停車する「サザンクロス」も、何処となく絵になりますね。
南海バス「サザンクロス」酒田線 ・477 草津パーキングエリアにて その1

南海バス「サザンクロス」酒田線 ・477 草津パーキングエリアにて その2

5時42分、乗客が全員揃ったところでバスは草津パーキングエリアを発車。
名神高速道路を京都南インターまで走行し、一般道から京都市内へと入ります。
6時14分、バスは最初の降車停留所である京都駅八条口(ホテル京阪前)に到着。
こちらでは3名が下車しました。
南海バスは、京都駅八条口のバス停をこちらとは別の場所に設置していましたが、昨年2016年12月にホテル京阪前へ移転しました。
同時に京阪バスの予約センターでも南海バス「サザンクロス」一部路線(京都経由の路線)の乗車券取扱い(予約・発券)を開始しています。
諸事情があるのでしょうが、京阪バスとの協力体制を敷くことで、京都地区での営業を強化しようという意図があるのかもしれません。

バスは上鳥羽ランプから第2京阪道路に入り、大阪へ向けてひた走ります。
南海バス「サザンクロス」酒田線 第2京阪道路 車窓

途中の高速京田辺は降車客がおらずに通過。
門真ジャンクションを通過したバスは、第2京阪道路から近畿自動車道~阪神高速東大阪線~阪神高速環状線へと入ります。
南海バス「サザンクロス」酒田線 まもなく大阪市内

7時09分、バスは定刻よりも30分以上早く大阪駅前(桜橋口・アルビ前)に到着。
こちらでは3名が下車していきました。
その後バスは、梅田ランプから再び阪神高速環状線へ。
10分程で湊町バスターミナル(なんばOCAT)に到着しますが、バスターミナル混雑と降車客が居なかったことから通過扱いとなりました。
そして7時27分、定刻よりも50分以上早くバスはなんば高速バスターミナルに到着しました。
南海バス「サザンクロス」酒田線 ・477 なんば高速バスターミナル到着
こちらで私を含めて残りの乗客全員が下車したため、バスは行先表示を「回送」に切り替えて、車庫のある大阪府堺市へと回送されていきました。
無事に大阪に到着した安堵感と充実感で清々しい気分の私は、ミッション達成のために次なる目的地へと向かうのでありました。

冬場の運行と庄内地区で開拓が課題

というわけで、南海バス「サザンクロス」鶴岡・酒田線の乗車記をお届けしました。
今回、久しぶりに総延長800kmオーバーの新規路線乗車となりましたが、長時間乗車にもかかわらず快適に過ごせたのは、車両設備の良さと乗務員の丁寧かつ気さくな対応のおかげだと感じました。
あと、この路線に関しては、日が高い夏場の下り便がお勧めだと思いました。
乗務員も仰っていましたが、夏場の下り便車内から眺める日本海の風景は一見の価値ありです。
次回乗車の際は、是非とも下り便を狙ってみたいですね。

一方で気になったのは、冬場の運行についてです。
今回は、特段渋滞に巻き込まれることもなくスムーズに運行出来たことから、結果として50分以上早着しましたが、冬の庄内地方は雪こそ多くはないものの風が強く、地吹雪になることも少なくないと聞きます。
そんな厳しい条件下で、果たしてスムーズな運行が確保出来るのか・・・心配なところではあります。
もっとも、南海バス・庄内交通ともに冬道の走行については慣れているかとは思いますが、場合によっては冬ダイヤの設定も必要になるのではと感じました。

そして、この路線については、庄内地区での知名度を如何に上げていくのかにかかっているのではとも感じました。
この辺については、南海バスが大阪での開業式典を実施せずに(花束贈呈のみ)、同社の上層部がわざわざ庄内地区での開業式に出席してスピーチするなど、庄内地区での需要喚起の重要性については十分に認識している様に見受けられます。
地元紙(荘内日報)で報道されていた「インバウンド客の周知・取り込み」も大事なのですが、「おらが街の関西直行便」といわれるように、地元の利用客を大切にして長いスパンで路線を育てていって欲しいです。

約5年ぶりに復活した関西~庄内間の直通交通機関。
以前は鉄道が果たしていた役割を、今後は夜行高速バス「大阪・京都~鶴岡・酒田線」が引き継ぐことになります。
関西と庄内地区を結ぶ懸け橋として、末永く運行を続けていくことを切に願いたいですね。

南海バス「サザンクロス」酒田線 ・477 酒田庄交バスターミナル改札中 その3


【乗車データ】 
  • 乗車日:2017/04/29
  • 乗車区間:
    酒田庄交バスターミナル→なんば高速バスターミナル
  • 運行会社:南海バス
  • 車両:日野/セレガHD(QRG-RU1ESBA)
  • 年式:2015年式
  • 所属:堺営業所
  • 社番:477

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