日本最長夜行バス「ライオンズエクスプレス」運行休止直前乗車記(2015年4月乗車分)

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既にご存知の方も多いかとは思いますが、さいたま大宮・東京池袋・横浜~福岡間を結ぶ日本最長夜行高速バス「ライオンズエクスプレス」(西武観光バス・西鉄高速バス)が、2015年5月16日をもって運行が休止されることになりました。

西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8546 西鉄高速バス福岡支社にて(H27.04.17撮影)

西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8546 リア 西鉄高速バス福岡支社にて(H27.04.17撮影)

2011年12月8日の運行開始以来、約3年半弱の間に延べ45,000人の乗客を運んだ「ライオンズエクスプレス」。
元々はこの路線、旧高速ツアーバス対策の一環として開設されましたが、『日本最長距離夜行高速バス』としてマスコミ等の各媒体にも取り上げられ、主に若年層を中心とした旅行客や帰省客に親しまれて来ました。
しかしながら、当初より利用者数が伸び悩んだことに加え、昨今のLCC就航による周辺環境の変化、更には他路線の戦略変更(「はかた号」の早期割引運賃の導入)などの事情もあり、やむ無く運行休止を決断した様です。

私自身、「ライオンズエクスプレス」はこれまで4回乗車しました。
ですが、4回とも2012年の利用で、ここ最近は利用する機会がありませんでした。
特に、2013年7月以降のダイヤ改正で運行時間帯が大きく変更されたことから、以前からダイヤ改正後の「ライオンズエクスプレス」に乗車してみたいと考えてはいたのですが、今般の運行休止の知らせを聞き、「それならばお別れ乗車も兼ねて乗車するか・・・」ということになり、2015年の4月中旬のとある日に福岡発の西鉄高速バス担当便に乗車しましたので、今回はその時の模様をご紹介します。

4列シートながらも快適に移動出来る工夫が・・・

と、その前に、実は乗車前に「ライオンズエクスプレス」の福岡側の前線基地である、西鉄高速バス株式会社の本社へお伺いしました。
短い時間でしたが、「ライオンズエクスプレス」に関するお話を伺い、専用車両の雄姿を写真に収めることが出来ました。
(西鉄高速バス株式会社の担当課長及び社員の皆様におかれましては、この場を借りてお礼を申し上げます。色々とお世話になりました。)
西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8546 正面 西鉄高速バス福岡支社にて(H27.04.17撮影)

西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8546 側面 西鉄高速バス福岡支社にて(H27.04.17撮影)

話を戻しましょう。
やって来たのは、福岡市中央区天神にある西鉄天神高速バスターミナル。
以前は「西鉄天神バスセンター」と呼ばれていましたが、昨年から行われてきたリニューアル工事完了に伴い、2015年3月21日に「西鉄天神高速バスターミナル」として生まれ変わりました。
国際標準に合わせるべく名称を「バスセンター」から「バスターミナル」に変更(元々「バスセンター」という言葉自体が和製英語らしい)したそうですが、すっかりお洒落に、そしてより機能的に生まれ変わったバスターミナルに驚きつつも、飲食物の購入を済ませ「ライオンズエクスプレス」の入線を待ちます。
(尚、「西鉄天神高速バスターミナル」については、後日改めてご紹介しますのでお楽しみに。)
西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 西鉄天神高速バスターミナルにて その1

17時30分過ぎ、6番乗り場に横浜・東京池袋・さいたま大宮行き「ライオンズエクスプレス」が入線します。
今回乗車したのは、こちらの車両↓でした。
西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545

西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 リア
親会社の西日本鉄道が運行する「はかた号」(福岡・北九州~東京新宿線)の4列続行用として活躍し、2014年春に「ライオンズエクスプレス」の専用車に転用された8545号車(日野セレガSHD LKG-RU1ESBA)です。
同じ時期に導入された番号違いの8546号車(「ライオンズエクスプレス」専用車)には2度乗車しているのですが、8545号車に乗車するのは「はかた号」時代も含めて今回が初めて。
とはいっても、外観・車内共に8546号車とほぼ同じです。

乗務員の改札を受け、大きな荷物を預け入れたところで、車内に入ります。
西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 西鉄天神高速バスターミナルにて その2

西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 西鉄天神高速バスターミナルにて その3

車内は4列シート34名定員の夜行高速仕様。
後部にトイレと乗務員仮眠室が設置されています。(写真はイメージです。)
西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 車内

西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 シート
シートは、日野セレガ純正の「ハイグレードワイドタイプ」を採用していますが、シートピッチが広くリクライニングの角度がかなり深く設定されており、4列シートながらも快適に移動出来る様、工夫がなされています。

途中休憩は2回 目覚めると首都圏

17時35分、定刻にバスは西鉄天神高速バスターミナルを発車します。
ここから乗車したのは、私を含めて8名。
その後の博多バスターミナルで14名の乗客を乗せ、総勢22名分のシートが埋まった「ライオンズエクスプレス」は、呉服町ランプから福岡都市高速道路へと入ります。
西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 福岡都市高速道路からの車窓

博多バスターミナルを発車したところで、交代乗務員による自己紹介と運行経路・車内設備の説明がマイクを通して行われます。
過不足無い丁寧な案内は、最早にしてつグループの夜行高速バスでは定番となっていますが、乗務員教育が行き届いていることを改めて実感します。
案内が終わったところで、車内サービスの紙おしぼりと飲み物(冷たい八女茶)が配られます。
西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 車内サービス
おしぼり・飲み物を手渡しで提供する事業者も、最近は少なくなりましたね。

18時15分、バスは福岡インターから九州自動車道へ。
外はまだ明るいですが、手持ちのスマートホンでネットや音楽を楽しんでいる方や既に寝ている方など、それぞれのスタイルで車内での時間を過ごしています。
西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 車内 その2

19時07分、バスは関門橋通過。
この先は本州・・・となる訳ですが、「また来るよ!」と誓いながら、関門橋からの夜景を楽しみます。
関門橋から先、暫くはカーブが多い中国自動車道を走行し、19時53分に山口JCTから山陽道へと入ります。
そして20時30分、バスは消灯前の休憩地である山陽自動車道下松SAに到着します。
西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 下松SAにて
ここでは15分間の開放休憩が設定されていますが、外は土砂降り。
トイレや買い物など用事を手早く済ませてバスに乗客が多かったです。
その間、乗務員は業務連絡や消灯前の準備(カーテンのセットなど)を進めていきます。

20時45分、乗客が全員揃ったところでバスは発車。
この先は数回サービスエリアに停車しますが、乗客は翌朝の東名高速道路海老名サービスエリア到着まで下車することが出来ません。
そして、発車時に消灯時間が告げられるのですが、この日は21時30分に完全消灯するとのこと。
それまでに消灯前の準備を済ませておく必要があります。

21時30分、消灯。
もう寝るしかありません。
シートを深く倒し、毛布を掛け寝る体制に入ります。
暫くは起きていましたが、23時10分頃の山陽自動車道吉備サービスエリア停車を境に夢の中へ。
翌朝まで起きることはありませんでした。
その間、「ライオンズエクスプレス」は名神高速道路の桂川パーキングエリアと新東名高速道路の浜松サービスエリアで乗務員交代を行い、深夜の高速道路を首都圏へ向けてひた走ります。

翌朝5時47分、前方のカーテンが開けられ起床。
窓のカーテンを開けて見ると、バスは既に首都圏に入っていました。

5時55分、バスは最後の休憩場所である東名高速道路海老名サービスエリアに到着します。
ここでも15分間の開放休憩が設定されていますが、この日は若干早く到着したことから20分間の休憩となりました。
多くの乗客がバスを降りトイレや買い物を済ませますが、私はトイレを済ませた後、WEB用の写真撮影へ。
海老名サービスエリアといえば、主に旧高速ツアーバス組(乗合移行組)の休憩場所としても知られていますが、ウィラーやJAM JAM、OTBに囲まれて停車する「ライオンズエクスプレス」に違和感を感じてしまうのは私だけでしょうか・・・。
西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 海老名SAにて その1

西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 海老名SAにて その2

西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 海老名SAにて その3

西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 海老名SAにて その4

6時15分、乗客が全員揃ったところで、バスは横浜・東京・大宮へ向けてラストスパートです。
6時25分、横浜町田インターを降り、保土ヶ谷バイパスへ。
週の初めの月曜日ということもあり、この時間帯から渋滞していますが、渋滞自体はさほど酷いものではなく、6時55分、ほぼ定刻にバスは横浜駅東口(YCAT)に到着します。
ここでは6名が下車しました。
YCATは成田空港へのリムジンバスが頻発しており、「ライオンズエクスプレス」を成田空港・ひいては海外もしくは北海道方面へ向かうLCCへのアクセスとしても利用するのに便利だっただけに、「ライオンズエクスプレス」の運行休止は正直残念ではあります。

7時06分、東神奈川ランプから首都高速道路へ。
この先は首都高速羽田線~都市環状線を経由し、東京池袋へと向かいます。
西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 首都高速からの車窓 その1

西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 首都高速からの車窓 その2

週初めであるにもかかわらず、これといった渋滞に巻き込まれることはなく、バスは7時52分に池袋駅東口の西武高速バスのりばに到着します。
ここでは12名が下車しました。
その後はサンシャインシティまで一般道を走行し、サンシャインシティビル傍の東池袋ランプから再度首都高速道路へ。
5号線から大宮線を新都心西ランプまでひた走ります。

8時17分、荒川を通過。
いよいよ埼玉県へ入ります。
西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 首都高速からの車窓 その3

8時27分、新都心西ランプ流出。
さいたま大宮はもうすぐそこです。
大宮駅周辺での朝の渋滞に巻き込まれ、8時38分、定刻よりも若干遅れてバスは大宮駅西口到着します。
ここでは2名が下車しました。
そして、福岡天神を出発して15時間13分経過した8時48分、バスは終点の西武バス大宮営業所到着しました。
西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545<br />
西武バス大宮営業所到着 その1

多少の疲労感を残しつつも、言葉では言い尽くせない感情がこみ上げてきたのは、「日本最長距離の路線バスを乗り切った」という達成感と、「もうすぐで路線が休止される」一抹の寂しさからなのでしょうね。
乗客を降ろし、給油を済ませ、向かいの西武観光バスの駐車スペースまで移動する「ライオンズエクスプレス」の姿を、私は暫くの間見続けているのでありました。
西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545 西武バス大宮営業所到着 その3

「ライオンズエクスプレス」にも大きく影響を与えた周辺環境の変化

というわけで、西鉄高速バスの日本最長夜行バス「ライオンズエクスプレス」の運行休止直前乗車記をお届けしました。
今回の「ライオンズエクスプレス」の運行休止ですが、正直な話、やはり「寂しい」です。
ここ最近のLCC就航をはじめとする周辺環境の変化が、「ライオンズエクスプレス」にも大きく影響を与えたようです。
運行を継続する方策は無かったのか・・・とも思いますが、こればかりは事業者サイドが判断したこと。
我々利用者側は、事業者の判断を受け入れるしかありません。
今後、「ライオンズエクスプレス」で活躍した車両は、「はかた号」の繁忙期続行便を中心に引き続き活躍するかとは思いますが、「ライオンズエクスプレス」という短いながらも日本最長距離路線として君臨した証として、そして何よりも「西鉄ライオンズ」というプロ野球球団が過去に存在した証として、出来れば「西鉄ライオンズ」カラーのまま走り続けて欲しい・・・。
そんなことを車体を見ながら思った次第です。
TVのバラエティ番組で有名になった「はかた号」と比較すると、「ライオンズエクスプレス」は決して目立った存在ではなかったかもしれません。
しかしながら、約3年半弱の期間、日本最長距離路線として立派に走り続けたと思います。
まずは「ライオンズエクスプレス」に対して、「お疲れ様でした。」という言葉を送りたいと思います。
と同時に、5月16日の運行最終日まで、事故無く無事に運行を続けることを切に願いたいですね。

西鉄高速バス「ライオンズエクスプレス」 8545<br />
 西武バス大宮営業所到着 その2


【乗車データ】 
  • 乗車日:2015/04/19
  • 乗車区間:
    西鉄天神高速バスターミナル→西武バス大宮営業所
  • 運行会社:西鉄高速バス
  • 車両:日野/セレガSHD(LKG-RU1ESBA)
  • 年式:2011年式
  • 所属:福岡支社
  • 社番:8545

※現在は運行を終了しています。


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